がんの宣告を受けたら誰もがショックを受けるでしょう。
それでも不安でつらい気持ちと向き合い、日常生活を送りながらがんと闘っていかなければなりません。
では、どのような働きかけをしたら、がんを受け入れられるのでしょうか? この記事では、「がんを受け入れるための」4つの考え方を説明していきます。
この記事を読めば、不安な気持ちが解放され、がんと向き合えるための考え方を知ることが できます。
目次
あなたはがんについてどれほど知っていますか?
「がん」という言葉は誰もが知っている病名ですが、自分自身や家族など身近な人ががんにならなければ詳しく知ろうとは思わないでしょう。
しかし、日本が長寿国になった今、がんは誰もが罹患する可能性があるのです。
がんは死亡原因のトップ
がんは昭和56年以降、日本人の死亡原因のトップです。
それまでは脳血管疾患が1位でした が、現在までがんのトップが続いています。がんは高齢になるほど罹患しやすく、40代以 降の死因はがんが1位になっています。
人生の中でがんを発病するリスクは、男性=2人のうち1人、女性=3人のうち1人と予測されています。
がんは全身のどこにでも発生する可能性がある
がんは、胃や肺、肝臓などの内臓などはもちろん、血液や骨、皮膚など全身のあらゆる場所 に発生する可能性があります。
一般的に、「胃がん」「肺がん」「乳がん」など、最初にできた身体の部位からがんの名前 がつきますが、がんが脳にできる「脳腫瘍」や血液のがんである「白血病」など、「がん」 とつかないものもあります。
出展:
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/24.html
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g4/cat450/sb4502/p024
http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/
がんと告知されたら
がんの告知について
がんと告知された方は、職場や自治体で受ける健康診断のがん検診や人間ドック、体調不良 で病院を受診した際に異常が発見され、精密検査を受けてがんと診断された場合がほとんど でしょう。
かつてがんは死に直結する助からない病気というイメージでしたが、早期発見にともなう早 期治療で完治できるため、ほぼ患者さんに告知することが多いようです。
また現在の医療現場では、医師が患者さんに病状や治療方針をきちんと説明し、患者さん自 身が内容をしっかり理解した上で治療を進めていくインフォームドコンセントが一般的に なってきています。
告知された人の心情
がんと告知された時、まず心に大きな衝撃を受けるでしょう。全く思いもよらない青天の霹靂であった場合、「そんなはずはない」と医師の告知を信じようとしない人もいるのではないでしょうか?
ずっと体調が悪く「もしかしてがんかもしれない」と思っていた人は、本当にがんだったことにショックを受けるでしょう。そして「家族になんて言おう…」と、心配させてしまうのではないかと気になるものです。
数日経ち、がんである実感が少しずつわいてくると、「なぜ自分ばかりこんな目にあうんだ」「仕事のストレスのせいだ」などと怒りの気持ちがわく場合もあれば、「これまでの食生活 が悪かったのか」「何か悪い行いをしたのか」と自分を責める人もいます。
その後しばらくの間は、「自分は死ぬのだろうか」と落ち込む日々が続き、夜も眠れず食欲 も減退するでしょう。
がんを宣告されてからすべき4つのこと
しかし、がん根治には、まず受け入れることが重要です。
では、どうしたらがんを受け入れられるのでしょうか? ここでは、その方法を4つのポイントから解説していきます。
不安な気持ちを受け入れる
がんを宣告された多くの人は、心理的に強いストレスに直面し、しばらくは気持ちが落ち込 み、不安な状態になるでしょう。
そんな時は無理に明るく振る舞ったりせずに、まず「いま私は落ち込んでいる」と自分の気 持ちを素直に受け入れましょう。
人はとことん落ち込んだ後は、そこから抜け出そうとします。 がんに対する心構えを持つには、まず自分の現在の気持ちとしっかり向き合い現状を認識することです。
仕事に没頭するなどして本当の気持ちから目を背けたままでいると、なかなか次の段階に進むことができません。
一人で抱えこまずに家族や友人へ気持ちを伝える
落ち込んだ気持ちを少しでも軽くするには、家族や親しい友人、また信頼できる医師に、がんになってつらい気持ちを伝えましょう。
人に話すことで、様々な感情が整理され心が落着 いてきます。無理に平常心を装う必要はありません。
また、自分と同じような経験を受けた人と話すことで、悩みを分かち合うことができます。
時間が経つにつれ、「なんとか治療を頑張っていくしかない」と前向きな気持ちに変わって いきます。
正確な情報を集める
がんに向き合うための心構えができたら、次は治療に向けた行動を始めましょう。まず自分 の病気について、現在の病状や体調、治療法などについての情報を収集することが大事で す。
国立がんセンター がん対策情報センター「がん情報サービス」では、がんについて情報を 探すためのヒントとなる10ヵ条を公表しています。
1.情報は“力”。あなたの療養を左右することがあります。活用しましょう。
公的支援や保険の適用の有無などを知ることで、いのち、生活の質、費用などに違いが 生じることもあります。
2.あなたにとって、いま必要な情報は何か、考えてみましょう。
今いちばん知りたいこと、解決したいこと、悩みはなんでしょうか? メモに書き出して みましょう。
3.あなたの情報を一番多く持つのは主治医。よく話してみましょう。
名医がいる病院や大病院を探す前に、まず告知を受けた病院の主治医としっかり話しましょう。自分の現在の病状やがんの詳細など、疑問点や不安なことをメモに書き出し、 質問します。たくさんある場合は、何度かに分けてじっくり相談するとよいでしょう。
4.別の医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」を活用しましょう。
海外ではセカンドオピニオンは一般的なことです。「治療法の選択権は患者さんにある」とインフォームドコンセントを理解している医師は、セカンドオピニオンへの意識 も高いです。 がんには様々な治療法があるので、患者さんも別の選択肢があることや、今の治療法に納得できることもあります。
5.医師以外の医療スタッフにも相談してみましょう。
これからの療養生活や食事内容、薬のことなど、主治医に聞きにくい細かいことは、看護師やソーシャルワーカー、薬剤師などに相談しましょう。
6.がん拠点病院の相談支援センターなど、質問できる窓口を利用しましょう。
どのように情報を探してよいかわからない場合や、経済的に不安なことはがん拠点病院の支援窓口や患者団体などの窓口に相談しましょう。
7.インターネットを活用しましょう。
現在インターネット上ではさまざまな情報を入手することができます。自分のがんはどんな種類でどんな治療法があるのか、また医師の説明内容を確認することもできます。 使い方がわからない時は、家族や友人など周囲の人にお願いしましょう。
8.手に入れた情報が本当に正しいかどうか、考えてみましょう。
インターネット上の情報には、特定の治療法に誘導する偏ったサイトや、商品の売り込 みのものも多く、個人的な体験談や感想など主観的で医学的に不正確なものも含まれています。
医学研究の結果に基づくもので信頼できる情報かどうかは複数のサイトを確認するか、 主治医に聞いてみましょう。
9.健康食品や補完代替医療は、利用する前によく考えましょう。
健康食品や補完代替医療でがんへの効果が証明されたものは、ほぼ皆無といえます。有害なものもあるので注意が必要です。
10.得られた情報をもとに行動する前に、周囲の意見を聞きましょう。
収集した情報が自分の症状に当てはまらないこともあります。自分一人の判断で行動を 起こさずに、主治医や家族、患者仲間などに相談してください。
客観的に判断する助けになるだけでなく、漠然とした不安が消え、自分ができること、すべきことを把握できるようになります。
出展:
http://ganjoho.jp/public/qa_links/card/10.html
周囲の人にがんを公表しサポート体制を作る
がんに立ち向かい行動を開始する決意ができたら、家族や友人、職場の上司や同僚にこれか らの治療について説明し、サポートしてもらう体制を作ります。
がんの治療をしながらも生活をしていかなければなりません。職場での仕事の割り振りや、 家庭では食事や睡眠時間、お金の管理などを協力してもらう必要があります。がんに関する 情報収集も欠かせなく、自分一人でできることではありません。
これからの治療中に再び落ち込むことは度々あるでしょう。
その時でも精神的に支えてもらうためには、信頼できる周囲の人たちを巻き込んだあなたの「がん対策チーム」を作りましょう。
がんの治療法を選択する上での注意点
いかがでしょうか? これらの4箇条で、がんを受け入れられたら、次にすべきことがありま す。
それは、3-3章「正確な情報を集める」でお伝えしたとおり、どのように治療を進めていく か? が重要になってきます。
そこで4章〜6章では、これから安心して治療を進めていくための具体的な方法をお伝えしていきます。
まず4章では、「治療をする」と決断した後の心構えについてお伝えします。
急かされても決断を焦らない
まず、医師に治療を急かされても焦らないということが重要です。
がんの場合、ステージ別に関連する医学会で標準治療法が定められています。主治医はプロ トコルといって基準となる治療方針に基づき治療計画を作成するため、手順に沿って治療を 進めようとします。
その治療法で良いのか、使用する抗がん剤は大丈夫なのかなど心配なことがあるでしょう。
医師としては早く治療に入りたいと考えており、また大病院であるほど患者さんに決断を急 かす傾向があるようです。
しかし、治療を受けるのもその決断をするのも自分自身です。納得できないまま治療を開始 しても、途中で不安になり、治療に対して前向きに取り組むことができなくなります。
決断を焦らず、治療法について医師に再度詳しい説明を求めてみましょう。
それと合わせて自分なりに調べるなどし て、きちんと納得した上で決断してください。
決断したらすみやかに行動する
治療の決断をしたら、できるだけ早く行動を開始してください。
がんは早い段階であれば増殖も少なく、腫瘍も小さいため、治癒の効果や延命の期待も大きくなります。また、早く治療を開始するほど時間もお金も少なくて済みます。
がん治療の種類は?
では実際、がんの治療法にはどのようなものがあるのでしょうか?
がん治療はがんができた部位や進行度によりさまざまで、三大療法として、「外科療法」 「化学療法」「放射線療法」があり、第四の治療法として比較的新しい「免疫療法」があり ます。
標準的ながん治療では、これらの治療法を組み合わせた集学的治療を行います。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
外科療法
外科手術により腫瘍を切除する方法です。
放射線療法
放射線を病巣に当てて腫瘍を死滅させて小さくします。がんによる痛みを軽減させる、手 術をしやすいように小さくする目的もあります。
化学療法
抗がん剤などの薬剤を内服や注射によって全身に行き渡らせ、がん細胞を死滅させます。手 術前に腫瘍を小さくする、手術後に全てのがんを根治させる目的もあります。
免疫療法
人間の免疫力を高めてがんを死滅させることを目的とした治療法で、別名を免疫細胞療法と言われています。
化学療法と違う部分は、正常細胞にはダメージを与えないという点です。がんを攻撃する細 胞を体外で活性化させ、再び体内に戻し、がん細胞にダメージを与えます。
病院を探すには
がんの告知を受けた病院が、設備や治療法の面で自分の病状に対応できないことや、主治医の意見に納得できず病院を変えたい場合もあるかもしれません。
自分で病院を探す場合、何を基準に選べばよいのでしょうか?
がん診療連携拠点病院・地域がん診療連携拠点病院から
厚生労働省が、がん治療の地域格差を縮小し、地方に住む住民でもレベルの高いがん治療を受けることを可能にするために指定した「がん診療連携拠点病院」と「地域がん診療連携拠点 病院」が全国にあります。
これらの病院は地域の医療機関と連携し、研修を推進して、地域住民に対し情報提供をする ことなどが求められています。
特に施設や高度な医療機器などの面で充実していることが指定の条件であるので、信頼性が 高く、どの病院でも質の高いがん治療が受けられるといえます。
国立がんセンターが提供しているサイトでお近くの病院を検索することができます。
http://hospdb.ganjoho.jp/kyoten/
病院の治療実績を参考にする
次に、病院が申告している治療実績(手術数、治療数)などを参考にすることも一般的で す。
手術数と治療数が多いということは、担当医の経験が豊富で、その病院の信頼度も高いという目安になります。
また、読売新聞社が出版している「病院の実力」という書籍は、5大がんである肺がん・胃 がん・乳がん・肝臓がん・大腸がんの治療や手術実績のデータを全国の病院ごとに一覧表に まとめています。
7000件近くの病院データが掲載されており、最新医療記事も紹介しています。
よい病院・名医の基準とは?
最後に、自分に合った病院やドクターをつけることは、とても重要です。
これから外科手術を受ける人にとって、治療成績や手術症例数は役に立つでしょう。その病院は経験が豊富であり、技術もあると考えられているためです。
しかしこうした情報には限界があり、外科手術以外の選択をしたい場合に、手術症例数の多い病院を頼りにしてもあまり意味がありません。
また、テレビや雑誌で紹介されるような「スーパードクター」や手術件数の多い医師が、自分にとっての「名医」とは限りません。
自分がこれからの治療に何を求めるか、何を優先するかにより良い病院、名医は異なります。
色々な視点から判断し、自分にとって最適な治療を提示してくれる病院を選択しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
がんと宣告された時は、不安と焦りで、これからどう生きていこうか向き合えないこともあるでしょう。
しかし、病を根治するためには、まずはじめに事実を見つめなければなりません。
そのためには、この4つの考え方をお伝えしましたね。
1.不安な気持ちを受け入れる
2.一人で抱えこまずに家族や友人へ気持ちを伝える
3.正確な情報を集める
4.周囲の人にがんを公表しサポート体制を作る
現在がんの治療法は進化し、がん=不治の病ではなくなりました。根治も十分可能であり、 治療をしながら生活し、仕事や人生を続けていくことができる時代になっています。
受け入れることは痛みを伴いますが、まずはこの4つを試してみることからはじめてみては いかがでしょうか。
これから生きることと向き合い、がんと闘っていこうとしている方々にとって役立つ情報で あれば幸いです。

医療ライター。健康・医療分野を中心に執筆するライターです。
特に医療記事については、担当者へのインタビューや文献から正確な情報を収集し、且つ一般の方にとってわかりやすい文章表現を心がけています。