前立腺がんは罹患率が高いのに生存率が高い?

罹患率の高い前立腺がんですが、一方で生存率は高いがんです。日本において前立腺がんの罹患率は、男性人口10万人あたり117.9人で、胃がん、肺がん、大腸に次いで第4位でが、死亡率は男性人口10万人あたり18.9人です。肺がん86.0人、胃がん51.6人、大腸がん42.9人に比べると死亡率の低いがんであることが分かります。

 

生存率は高いと言われる前立腺がんですが、なるべく早期発見するために、どのような初期症状を見逃さないようにすればよいのでしょうか。ここでは参考になる情報をご紹介します。

目次

前立腺がんとは

前立腺とは膀胱の下にあり、尿道を取り囲んでいる男性だけが持つ臓器です。

前立腺がんは50歳代から急速に増えていき、発生の平均年齢が70歳といわれるくらい高齢の男性にみられるがんです。

多くの場合、前立腺がんは尿道や膀胱から離れた場所に発生するので初期では自覚症状がないことがほとんどです。

 

 前立腺がんの進行に伴う症状

 

早期がん

無症状です。前立腺がんの約7割は前立腺の外腺部に発生します。そのため、早期には全く症状が現れません。しかし、移行域(内腺部)に発生すると早期より症状を発症する前立腺肥大症という病気が、時に合併して発生します。その場合は次のような症状がみられます。

 

・局所進行がん

この進行がんは、前立腺肥大症と同様な症状が見られます。というのも、前立腺が尿道を圧迫するため、尿の回数が多い(特に夜間の)、尿が出づらい、尿線が細く排尿に時間がかかる、尿がタラタラ垂れる等の症状が起こります。また、がんが尿道を始め射精管、勃起神経に広がると血尿や血精液(精液が赤い)、勃起障害などの症状も出てきます。

 

進行転移がん

前立腺がんはリンパ節と骨(一般的に脊柱と骨盤骨が多い)に転移しやすいがんです。

骨に転移すると痛みや下半身の麻痺が、リンパ節に転移すると下肢のむくみが生じることがあります。

 

前立腺がんの原因

前立腺がんの直接的な原因はまだ明らかにされていませんが、リスク要因として前立腺がんを家族の誰かが患っていたか、高年齢などが挙げられています。

他の病気にも言えることですが、肉類や高脂肪食など生活習慣の欧米化、肥満、食品(特に言われているのがカルシウムの過剰摂取など)、喫煙なども調査されていますがまだ明確ではありません。

 

 前立腺がんの一般的な治療法

治療法は、患者様の状態や年齢、患者様の希望なども含め検討し、担当医とともに決めていきます。患者様の年齢や性別、生活環境、どのくらいQOLを保ちたいかなどが考慮されます。状況によって2つ以上の治療を組み合わせる(集学的治療)場合もあります。

 

前立腺がんの主な治療法には下記のようなものがあります。

監視療法:監視療法とは、前立腺生検で発見されたがんの経過観察のための治療法です。治療を開始すべきかそうでないか、また、余命に影響があるかどうかを調べます。通常3~6ヶ月を診断の目安とし、病状が悪化しがんの兆候が見られたら、治療に進むことを検討します。

 

フォーカルセラピー(Focal therapy): 監視療法と手術・放射線治療など3大療法の中間にある治療です。それほど大きい処置が必要でないがんを早めに取り去り、正常な機能を残していきます。病巣を特定して集中的に病巣を治療する方法と、治療の必要性が低い部分を温存するという2つの方法があります。まだ十分な根拠が認められた治療法ではないため、勧められた際は十分に下調べをしましょう。

 

手術:前立腺がんの手術には4種類あります

ⅰ) 開腹手術(恥骨後式前立腺全摘除術)

ⅱ) 腹腔鏡手術(腹腔鏡下前立腺全摘除術):腹腔鏡手術は、小さな穴を開けて、炭酸ガスで腹部を膨らませた後、専用のカメラや器具で手術を行います。

ⅲ) ロボット手術(ロボット支援前立腺全摘除術):拡大画面によって精密な手術ができ、微妙な手の動きを調節しながら手術ができます。ロボット手術は、開腹手術に比べ傷を小さくとどめておくことができます。腹腔鏡手術と比較しても合併症からの回復が早いのが利点です。

 

放射線治療:病巣に放射線を当てていく治療です。手術と同様に、がんのみを治療する局所療法の一つで、がん細胞の遺伝子に傷をつけ、がん細胞を消滅させることができます。

手術に比べると肉体的な負担が少なく、腫瘍の形状を温存しながら治療をします。また通院しながら治療をすることができるのも、患者様や患者様の家族にも負担が少ない点で最大のメリットです。

 

抗がん剤療法(ホルモン療法):前立腺がんは、精巣や副腎から分泌される男性ホルモンのアンドロゲンが活性化することで進行することがあります。内分泌療法は、アンドロゲンの分泌を妨げる薬により進行を抑制します。内分泌療法は手術や放射線治療を行うことが難しい場合、また、放射線治療の前かその後にがんが他の臓器に転移した場合などに行われています。ホルモン療法は有効な治療法であるものの、アンドロゲンが抑制されることで、骨密度が低くなる恐れがあります。それにより骨折などにつながるリスクもあります。主治医の説明にきちんと納得した上で治療を決めましょう。

 

前立腺がんが骨転移した場合

前立腺がんは骨転移する可能性があります。骨転移は、がん細胞から様々な伝達物質が出て破骨細胞が骨を壊すという状況です。骨の回転や骨を壊していく状況を、それぞれ特殊な薬剤を使用して抑制していきます。

 

 

前立腺がん治療は手術、放射線療法、また複数の薬剤を組み合わせた薬物療法である集学的治療が可能です。骨転移の場合他の部位に転移があるかどうかなどを踏まえそれぞれの部位に合わせて治療を組み合わせます。それによって生存期間を延ばせる治療が可能になり、転移があったり、ホルモン療法が効かない状況になっても諦める必要はありません。

 

 

 免疫療法を検討しましょう

免疫療法という言葉を聞いたことがありますか?免疫療法は人間の体に本来備わっている病気を防ぐ力を最大限に引き出していく治療法です。前立腺がんの術後患者様の5年、10年生存率はほぼ100%という数値があるほどがんの中では生存率がかなり高い方です。これは術後に他の病気にかからなければ長生きできるということです。そのため術後からQOLをいかに良い状態で保っていくかが重要です。

 

前立腺がんは術後の合併症に尿失禁があることが多いということを念頭に入れておきましょう。(手術の際に、尿の排出を調節する筋肉に傷が入ることにより尿道の締りの機能が落ちることで、例えば咳をしたり重いものを持ったりくしゃみをした時に尿が漏れることがあります。)

 

 前立腺がんの発症を抑えるための食事

特に、何か一つのものを食べればいいというものはありません。大豆(イソフラボン)がいいという傾向はありますが、世界中で評価されているわけではありません。

 

例えば、現在30代の方が数十年後の前立腺がんの発症を抑えるために、リコピンやイソフラボンを摂取すれば効果があるかもしれませんが、前立腺がんと診断されてから食生活を良くしようとしても、手遅れであることが実際のところです。

 

前立腺がんはホルモン療法となることが多いため肝機能障害や脂肪肝などを併発することで、新しいホルモン療法や抗がん剤が使えなくなると致命的です。そのようなことがないように食事はバランスよく正しく摂取し、体調管理をすることが大切です。

前立腺がんの原因の一つに食事の欧米化が挙げられるので、肉中心で野菜をあまり食べないなど偏った食生活の方は予防のためにも和食中心にするなどの工夫をしていきましょう。

 

早期発見、予防のためにPSA検査

前立腺がんは気がつくと骨転移していたということが多く非常に発見しにくいがんですが40~50歳以上になった時に定期的に検診を受けることで発症を防ぐことのできるがんです。なぜなら前立腺がんの検査に使用されるPSAという検査はかなり高精度になってきており発見がしやすいからです。

 

前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA検査は泌尿器科だけでなく、かかりつけ医、人間ドック、検診でも受けることができる簡便な血液検査です。欧米の研究では、この検査実施によって死亡率の低下が報告されており、日本泌尿器科学会でも50歳以上の男性に対するPSA検査を推奨しています。

 

しかし、日本でのPSA検査の受診率は極めて少ないのが現状で、受診率の向上が望まれます。前立腺がんにかかってしまうと膀胱機能に支障が出るような合併症も起こりやすく、また子供を望んでいる男性の方には障害となってしまうリスクもあります。

 

もし少しでも気になる症状がある男性は、早めに医療機関を受診して定期的に検診を欠かさないようにしていきましょう。

 

医療ライター  吉田あや

医薬系会社にて医療事務に従事する傍らで、

美容系サイトにて痩身美容(脂肪吸引など)ついて執筆するフリーライター。

主に得意分野は、がんや免疫療法、経営者インタビュー記事作成など。

 

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