緩和ケアとは

ここでは、自分や家族ががんにならなければなかなか知る機会のない緩和ケアについて詳しく紹介します。

 

目次

緩和ケアとは

「緩和ケア」のイメージは?

テレビや新聞などで「緩和ケア」という言葉を目にする機会が増えてきましたが、末期のがんになった患者がモルヒネのような医療用麻薬で痛みを軽減するホスピスと混同されることもあり、最期を痛みなく迎えるというイメージがよく持たれています。

 

「緩和ケア」とは?

この言葉を聞いたとき、多くの人は「がんの終末期」や「看取りの医療」を連想するようです。

 

がん患者やがん患者を持つ家族には、主治医から緩和ケアを勧められた時、「もう他に治療法はないのか」と途方に暮れ、見捨てられたような絶望感に襲われる人も多いでしょう。

 

これまで緩和ケアは治療が有効ではなくなった人を中心に提供されてきたため、がんの治療を受けたことのない一般の方はこのようなイメージがあるでしょう。

 

WHOは「生命を脅かす疾患に関連する問題に直面している患者とその家族の苦痛、身体的、心理社会的、スピリチュアルな問題を早い段階で特定し、それらを適切に評価・治療することによって苦痛を防ぎ解放することを通して、患者と家族のQOLを改善するアプローチ」と定義しています。

 

緩和ケアは終末期ではなく「痛み」を感じた時からいつでも始めることができる

2007年に施行されたがん対策基本法の中で、生活の維持・向上のために、治療の早期から緩和ケアが適切に導入されることの重要性が述べられています。

 

具体的に、緩和ケアが必要な時期というのは患者や家族に何らかの苦痛や心配があり、解決が必要になったときであり、そのときが緩和ケアの開始時期なのです。

 

緩和ケアを施行するかどうかは、患者の状態が「終末期」であるから、がん治療中であるから、という状態によって決まるのではなく、患者が苦痛を感じるかどうかという点が重要です。

 

 

がんの治療の過程では様々な困難が患者を襲います。

 

がんと診断されたときの精神面における絶望感、孤独感、治療による副作用で痛みや吐き気、食欲不振、だるさ、便秘、眠れないなど体の症状、手術後の痛み、再発や転移による痛み、医療費の問題、転居、自宅療養についての不安、生きる意味についての悩みなどが出てきます。

緩和ケアはがんが進行した患者に対するケアではありません。

 

しかしそのような先入観が強いため、「まだ受ける必要はない、末期になってから受けるもの」と思われていますが、がんと診断されたときから開始します。

 

それにより患者が前向きに治療に取り組んでいき、生きる活力を取り戻していけるようになるのが利点です。

 

緩和ケアとホスピス、ターミナルケアの違い

緩和ケアはホスピスと同じ?と思われる方も多いと思いますが、緩和ケア専門の病棟と同じような意味で用いられている言葉がホスピスです。

 

緩和ケアは“がん治療が始まってからの症状コントロール”、ホスピスは“終末期のケア”の意味合いがそれぞれ強くなります。

 

ターミナルケアというのは緩和ケアの一部のことで、身体的・精神的な苦痛のケアに焦点が当てられます。緩和ケアはより総合的な範囲になります。

 

がんによる身体的・精神的な苦痛の除去をはじめ、患者とその家族が出来る限りの最高のQOL(人生の質)を実現するためのケアを意味します。

 

日本における緩和ケアの現状

なぜ緩和ケアががん医療で重視をされ始めているかというと、がんにより発生する痛みや精神的悩みなどの苦痛に対する緩和が不十分で、患者や家族の希望する場所で安心して生活することが難しいと考えられているためです。

 

日本では緩和ケア専門機関を利用しているがん患者は10%以下に過ぎず、先進国のイギリスやアメリカに遅れています。

 

がん患者の痛みがまだあまり和らげられていないのは、医療制度によるサポートが不足して浸透していないのと、「緩和ケアは末期に受けるもの」というイメージが根深くほとんど払拭できていないのが原因かもしれません。

 

 

緩和ケアのサービスとは

緩和ケアチームの役割

上記で挙げたようにがんの診断から治療、治療後まで様々な問題が心と体に起こってきます。

 

そのような問題が起こったときにまず一番身近にいる主治医、看護師に相談をしましょう。

 

その訴えを受けた後、医師と看護師は緩和ケアチームに相談します。

緩和ケアチームとは緩和ケアを専門的に行う医療チームのことです。

 

精神科医、看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士、管理栄養士、理学療法士など、さまざまな職種により構成されています。主治医や病棟看護師から相談を受けた内容をチームで話し合い、最も状況合い、必要とされるスタッフを中心にして、間接的あるいは直接的にサポートを行います。

 

・薬剤師:薬物療法に関するアドバイスを患者だけでなく家族にも説明します。

 

・ソーシャルワーカー:療養についての助成制度や経済問題、仕事や家族などの社会生活についての相談を受けます

 

・臨床心理士:気持ちの問題などについてカウンセリングをし、心理検査を行います

家族のケアも担当します

 

・管理栄養士:飲食、食事内容の食材や調理法についてのアドバイスをします

 

・理学療法師:患者の自立を助け、日常生活維持のためのアドバイスと治療を行います

 

緩和ケアを受ける場所

緩和ケアは以下4つの手段で受けることが可能です。

 

入院(緩和ケア病棟への入院)

ここでは、一般病棟や在宅ケアでは対応困難な心身の苦痛がある患者への緩和ケアの知識を持った医師が対応します。

 

病棟入院の基準は

1.患者本人にがん告知がされていること

2.患者ご本人及びご家族が緩和ケアの意義を十分理解し、緩和ケア病棟へ入院を希望している3.痛みが緩和されたら退院すること

4.入院中は積極的がん治療(化学療法治療、手術療法など)を行わないことに納得していることが挙げられる。

 

 

緩和ケアチームによる診療

2-1.で紹介したそれぞれの緩和ケアチームの専門家によって患者の必要に応じて行われます。

 

緩和ケア外来(自宅から通院してケアを受ける)

緩和ケア外来は、通院中の患者に対して、病院内の緩和ケアチームが行う外来です。

 

自宅での緩和ケア

緩和ケアに関連する治療の多くは、自宅でも入院している時と同じように行うことができます。

 

通院が難しい患者でも自宅にいながら、訪問医療、訪問看護、訪問介護、訪問リハビリテーションを受けることができます。

 

また、理学療法士や作業療法士などのリハビリを受ける際は1回約3,000円です。

 

緩和ケア病棟の探し方―緩和ケア病棟を探すには 

主治医、看護師、病院のソーシャルワーカーに相談することで近場の緩和ケアの病院や自分に合ったケアが受けられる病院を紹介してもらいましょう。

 

また、がん診療を連携している病院の「がん相談支援センター」などの部門では緩和ケア病棟の情報を探すことができます。

 

家族と緩和ケア

家族の誰かががんと診断された時、ショックははかりしれないでしょう。

 

がんなど重大な疾患にかかってしまったとき患者だけでなく家族はトータルペインという苦痛を背負います。

 

国立がん研究センター がん情報サービスの資料において、トータルペインは下記の4つに分類されます。

 

・身体的苦痛(痛み、息苦しさ、眠れない、食べられないなど)

・社会的苦痛、経済的問題(手術費、治療費、薬剤費など)

・精神的苦痛(恐れ、不安、怒り、孤独感など)

・スピリチュアルペイン(死への恐怖、人生の意味、死生観など)

 

 

上記の苦痛を和らげるために患者同様家族も知識を持っておく必要があります。

 

例えば緩和ケアのこと「末期がんになったら受けるもの」「がんだから痛いのは仕方ない」と誤解していると、患者は緩和ケアを受けるチャンスがなく苦しい時間を過ごさなければなりません。

 

緩和ケアは患者だけでなく、家族も受けることができます。患者をどう支えていったらいいのか、医療費はどうすればいいのか、社会復帰はできるのかなどと悩みいろいろな問題が生じます。

 

緩和ケアについて主治医や看護師に相談し、家族である患者がどうすればQOLを保ちながら治療を受けられるかを考え、サポートしていくことができます。

 

また、がん相談支援センターは「がんサロン」というがん患者と家族が参加できる場を作っています。

 

がん相談支援センターはこのサロンを、さまざまな専門的な支援の入り口としてのがんに関することで、誰でも参加できる交流の場として定義しています。

 

がんの治療を乗り越えてきた患者が相談役になることもあり、患者同士、患者の家族同士、患者と家族に互助・連帯の雰囲気が生まれ、たとえ問題は解決しなくても、孤立感が和らぎ、安心したり、希望が持てる場となっています。

 

緩和ケアと一緒に免疫療法を ― 身体的痛み、精神的辛さを取り除く免疫療法

ここまで総合的な痛みをケアする緩和ケアについて説明しました。

 

身体的辛さを最も引き起こすといわれている術後、放射線治療の副作用、化学療法の副作用について、もう一つ効果を発揮する療法をご紹介します。

 

がんの免疫療法は副作用の少ない治療法で、手術、放射線療法、化学療法のどれと組み合わせても自分の免疫の力で「がんと闘う基礎代謝」を上げてくれます。

 

がん三大療法と呼ばれるその3つの中でも最もひどい副作用がある化学療法を例に取ってみます。

 

中でも化学療法に多く見受けられる深刻な副作用は激しい吐き気と嘔吐です。

 

化学療法はがんの細胞だけでなく他の元気な細胞も傷つけてしまうため、がんの治療に最も大切な免疫力を下げてしまいます。すると更に強い化学療法を用いなければがんに対抗できなくなるほど体の免疫力が下がってしまいます。

 

免疫が下がっているのなら免疫を元気にして、根本的な治療をしていこうというのが免疫療法です。

 

免疫療法とは人間の体に本来備わっている病気を防ぐ力を最大限に引き出していく治療法です。

 

化学療法などの辛い副作用に対して免疫療法は副作用をやわらげます。

また、本来持っている免疫を活用するので痛み止めのオピオイドのような更なる副作用に襲われないという利点があります。

 

最も副作用の辛い化学療法を例に取りましたが、放射線療法の副作用、術後の痛みに対しても効果を発揮し治療に耐えうる体力を得られるようになります。

 

痛みがなくなればストレスも減り生活の質、自分らしさが取り戻せるようになり、より良い緩和ケアをサポートすることができます。

 

緩和ケアについての概念を変えましょう

診断直後から緩和ケアを受けた患者はそうでなかった患者に比べより長生きである、治療の早い段階からケアをすることによって効果があるということが科学的に解明されてきました。

 

米国では早い段階で緩和ケアを提供するENABLEと呼ばれる取り組みがあります。このサポートを受けた患者は、受けなかった患者に比べ生活の質(QOL)が上がり、抑うつ状態になる確率も低かったそうです。

 

さらにサポートを受けた患者は5.5カ月長生きしていたことも明確になりました。

 

また、進行がんの診断を受けた後すぐに緩和ケアを開始した患者と診断から数ヶ月後に開始した患者を比べたところ、すぐ開始した患者の方が生存期間が長く、看病している家族のうつ状態や看病への負担も少なく、QOLが向上した傾向もあったそうです。

 

患者や家族は、緩和ケアは療養中の生活を改善するだけでなく、生存期間を延長する可能性があることもメリットとして知り、がんと診断されたときからサポートを受けるようにしたいものです。

 

このように、緩和ケアにはがん治療においてメリットがあり、がんと診断されてから検討すべきケアです。

 

がんの治療を専門にしている多くの医師や看護師は、緩和ケアの必要性を十分に理解していますので、痛みの治療や心の不安などのことで、緩和ケアについて積極的に相談していきましょう。

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