癌のリンパ行性転移とその治療法

癌が増殖していくと、周辺臓器や遠隔の臓器に転移を起こします。ここでは、リンパ行性転移を中心にリンパの役割、そして転移癌の治療法についてご紹介していきます。

 

目次

リンパについて

ヒトの体内には血管とは別にリンパ管が全身に張り巡らされています。全身の組織中の細胞と細胞との間の組織液は、毛細血管を経て血液中に戻りますが、一部(約10%)は毛細リンパ管に入り、静脈に送られます。この循環をリンパ系といい、その中を通る液をリンパといいます。

 

毛細リンパ管が集まり太くなったものをリンパ管と呼び、多くの弁を持ち、とくに太いものでは弁のところがふくらみ、数珠(じゅず)状につながって見えます。

 

リンパ管にはところどころリンパ節(腺)というソラマメ状の丸いふくらみがついています。

 

リンパ節は新しいリンパ球や免疫抗体を産生し、細菌や異物を処理しています。リンパ管は、リンパ節を経由しながら、最後はリンパ本幹となって静脈に注ぎます。

 

 

リンパの役割

全身に張り巡らされているリンパの役割は、老廃物や毒素を運び排出する事や、ウイルスや細菌、異物を処理という二つの役割があります。血液でも同じような事が行われていますが、血液は心臓によって循環しており、リンパは筋肉の収縮と弛緩(しかん)運動によって循環されています。

 

リンパ節には白血球、とくにリンパ球が集中していて、リンパと共に運ばれてくる体に不要な病原体などを細網繊維の網に引っ掛け捕えます。それをリンパ球などが、身体に不要なものとみなして処理します。そして処理しきれなかった異物や病原体・癌細胞などを一時的に溜め込みます。

 

癌の転移

特定の臓器に出来た癌は、増殖・浸潤を始め、やがて初めに出来た癌(原発巣)ではない部分に定着し、そこでも増殖・浸潤を始める事があります。それを転移と呼びます。

 

癌の転移には、3つのタイプがあり、血行性転移・リンパ行性転移・播種性転移があります。

それぞれについて、説明して行きます。

 

血行性転移

血行性転移は、癌細胞が静脈の流れに乗って離れた臓器に転移する事です。原発巣で大きくなった癌細胞は、近くにある静脈の壁を壊して血管内に侵入し、血流に乗ったあと、別の場所で血管の壁を壊してその場所で浸潤・増殖します。肝臓は血液を代謝する役割を持つので、全身から大量の血液が流れ込むため、血行性転移しやすい場所といえます。他には肺や脳などもあげられます。

 

血行性転移は抗癌剤がよく効くことでも知られています。多くの抗癌剤は水溶性(水に溶ける性質)のため、血流に流す事が出来るからです。

 

 

リンパ行性転移

リンパ節は、リンパ管のところどころに配置され、体中を流れているリンパ液に含まれる老廃物をろ過するフィルターのような働きをしています。

 

癌細胞が血液に侵入するのを防ぎ、死滅させる役割もリンパ節が担っています。 リンパ節で癌細胞を全滅させることができず、生き残った癌細胞がリンパ液の流れに乗って広がった状態を”リンパ節転移”と言います。リンパ節転移は、複雑な範囲・領域に広がっている場合、化学療法が適応になるのが一般的ですが、限局したリンパ節転移や再発の場合、放射線治療が有効です。

 

癌の原発巣から癌細胞が最初に入り込むリンパ節をセンチネルリンパ節と言い、癌の転移を調べる為に原発巣と同時に切除して、検査を実施する事があります。

 

乳癌の際には、センチネルリンパ節の転移を調べ、転移が認められる場合は腋窩(えきか)リンパ節の廓清(かくせい)も同時に行われることが多いです。

 

胃や腸などの上皮に癌細胞ができ細胞分裂を繰り返すことで大きくなり、上皮から他の組織へ浸潤していきます。浸潤していく過程で血管やリンパ管にも癌細胞が侵入します。リンパ管に侵入した癌細胞は、リンパ液に乗って全身を巡り、転移していきます。

 

癌細胞は血液やリンパ液の流れに乗ることで、離れた場所に遠隔転移します。リンパ液に癌細胞が侵入しても、リンパ球によって死滅する事が出来たり、細胞が自滅するようであれば問題ないのですが、臓器に着床し増殖することで、癌を発症します。この状態を転移や転移再発と呼びます。

 

 

播種性転移(はしゅせいてんい)

播種性転移とは、種をまいたように点々と癌細胞が転移すること。 胸腔や腹腔などに面した臓器が原発となり、剥がれ落ちた癌細胞が隣接する胸腔や腹腔へばらまかれた様に増殖していくのです。

 

播種性転移は、主に胃癌や肺癌で見られる転移です。胃癌が胃壁を壊して腹膜に広く播種性転移を起こすことを「腹膜播種」と言い、肺癌が胸膜を壊して胸膜表面に播種性転移を起こすことを「胸膜播種」と言います。

 

播種性転移は治療が難しいとされる種類の転移。一般的には抗癌剤での治療が行われますが、現状では根治を目的とした治療は難しいとされています。

 

転移癌の治療

転移癌は、非常に治療が難しい癌になりますが、治らないという事は治療が出来ないという事ではないのです。根治や治癒を望めない時でも、現状よりも癌を増やさない方法や、患者様のQOL(Quality of Life生活の質)を保つための処置など、取り組める事があります。

 

癌の三大療法

癌の三大療法は手術療法・放射線療法・薬物療法です。初期の癌では、これらの治療法を組み合わせて治療して行きますが、転移癌については、主に全身療法が選択されます。この中で全身療法は薬物療法になります。転移癌は、すでに全身に癌が回っている状態なので、全身療法での治療は欠かせません。

 

その他、患者様のQOL(Quality of Life生活の質)を保つ為に、手術療法や放射線療法も行われます。

 

免疫療法

薬物療法と同様に、全身療法である免疫療法は、身体への負担が少なく副作用も少ない為、非常に患者様に優しい治療法です。

 

免疫療法は、体内にある免疫細胞を取り出し、活性化してまた体内に戻す方法や、体内の免疫細胞を活性化する薬物を投与する事で、自身の免疫細胞によって癌を死滅させたり、増殖を抑えたりする事が出来る治療法です。

 

具体的には、NK細胞療法や樹状細胞ワクチン療法、ガンマ・デルタT細胞療法、CTL療法などの種類がありますが、一般的には採血と点滴といった、患者様への負担は少ない方法です

しかし、現在は認可されている治療法ではない為、保険適応外になっている場合が多いです。

 

こちらの療法は、薬物療法との併用でも非常に効果を上げており、今後は癌の三大治療法と同様に重用されていく事が予想されます。

 

代替医療

代替医療自体では治療効果は無くても、副作用の緩和や体力回復などの効果で、主要な治療の効果を高める治療の補助として役立つものも多く、上手く利用していけば、患者様のQOL(Quality of Life生活の質)の向上に役立ちます。

 

・漢方薬 

三大治療法の副作用の予防・体力回復・治癒効果の増強などに用いられます。

 

・針灸 

癌性疼痛の緩和に効果があります。痛みどめの薬を減らすことが出来ます。

 

・アロマテラピー・マッサージ 

主にストレスの緩和やリラックス効果があります。

 

・健康食品・サプリメント

プロポリス・アガリスクなどが代表的です。

薬効が認められないものもありますが、補助的な栄養補給にはなりますので、治療中の体力回復などに利用すると良いでしょう。病状によっては、採ってはいけないものもありますので、必ず、主治医と相談の上利用してください。

 

 

まとめ

転移や再発した癌やある程度進行した癌でも根治できることもありますが、ほとんどの場合は困難で、癌による症状を和らげることや、癌の進行を抑えることが治療の目標になります。

癌の治癒や寛解が望めないという事はとてもつらいことです。しかし、そのような状態でも治療は続けることが出来るのです。

 

様々な治療法に代替医療も合わせて、つらい症状を緩和し、患者様のQOL(Quality of Life生活の質)を保つことで、日々、気持ちよく過ごして頂けるように、医師を始め医療スタッフは取り組んでいます。

 

どのような治療があり、どれを選択するかは、「これ」といった正解があるわけではありません。患者様が、これからの生活でどのようなことを望んでいるかによって、変わってきます。出来る限り仕事を続けたい、家族との時間を大切にしたいなど、人それぞれやりたい事は違っています。「こうしたい」という希望は、必ず担当医師や医療スタッフにお知らせしましょう。

そして、癌の治療について知る事は、必ず患者様、患者様のご家族に力となるはずです。

 

転移性の癌は、生存率などの数字を見るとかなり低く、気分的に落ち込む事もあると思いますが、それらは全て過去のデータに過ぎません。

 

癌の治療は日々進化しており、現在は認可されてない方法でも、実は成果を上げているものも少なくありません。

あらゆる治療法を知る事で、生きる力に繋げて行きましょう。

 

 

国立がん研究センター がん情報サービス

https://ganjoho.jp/public/index.html 

 

がんの転移が心配な時に読むサイト

http://www.gan-metastasis.net/

 

健康と医療の情報局

http://kenkou-jouhou.com/byourigaku/syuyou5.html

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