大腸がんは早期発見のきっかけになるような検診も広く利用されています。しかしながら日本においては罹患率の高いがんであり、その原因の中には食生活や高齢化があることがわかってきました。
患者数は依然増え続けていますが、様々な治療法が開発され、その効果も上がっていますので、死亡率は近年横ばいになっております。
そして、なかには再発する場合もあります。
大腸がんの再発について、詳しくご紹介します。
目次
大腸がんとは
大腸は盲腸・結腸・直腸・肛門で構成されています。これらの部位にできるがんの総称が大腸がんです。早期では自覚症状が無く、また便秘と下痢のくりかえしや血便といった痔などと似た症状になることから症状を軽視してしまい、発見が遅くなる事も少なくありません。
大腸がんは、がんが大腸組織のどの深さまで発育しているのか、リンパ節への転移の有無、他の臓器への転移の有無で病期をステージ分類しており、それぞれの進行度に合わせて治療法を選択します。
大腸がん情報サイトhttp://www.daichougan.info/discover/stage.html
大腸がんの再発
手術でがんをすべて切除できたと判断しても、肉眼的には把握できない微小ながんが体内に残っていることがあります。手術の前にX線検査やCT検査などの画像診断で検査しますが、微小ながんは診断できません。
体内にがんが残っていると、手術後、体内に潜んでいた微小ながんが大きくなって、時間が経ってから目に見えるような大きさになることがあります。これを「がんの再発」といいます。
つまり、初回の手術で取りきれなかったがん、または微細な為、気がつかなったがんが大きく成長してきたものが、再発がんなのです。
再発の約80%は手術後3年以内に,95%以上は5年以内に見つかります。再発の多い部位は,肝臓,肺,局所(がんがあった場所の周辺で,直腸がんで多い),リンパ節,腹膜で、吻合部に発生することもあります。ステージIIの再発率は約13%,ステージIIIは約30%です。
再発大腸がんの治療法
大腸癌研究会http://www.jsccr.jp/forcitizen/comment03.html
大腸がんでは、転移したがんをすべて取り除くことができれば、約40%の人はがんが完治するといわれています。化学療法や局所療法では、めざましい効果は期待出来ないこともあり、手術で切除できるかどうかが、予後に関係してきます。
切除不可能な広範囲もしくは多臓器への転移でも、全身療法である化学療法を用い、がん細胞を小さくし、手術療法を行う場合もあります。
肝臓への転移
大腸がんは肝臓への転移が多いです。大腸がんと診断された人の約11%に肝転移がみられ、大腸がんの手術を受けた人の約7%に肝臓での再発がみられます。
大腸癌研究会 http://www.jsccr.jp/forcitizen/comment03.html
肝臓に転移が見つかった場合は、切除可能かどうか、患者様が手術に耐えられるかどうかなどを精査してから、切除を行います。大腸がんでは、転移したがんを全て取り除くことができれば、生存期間の延長が望めるためです。
肝動注療法
肝動注療法とは肝がんに対して化学療法の奏効性を上げるため、肝動脈にカテーテルの先端を置き、そこから肝臓に向けて薬が流れるようにした治療法です。通常の化学療法よりも高濃度の薬剤ががん細胞に届くので、最小限の量を使用することができるため、通常の化学療法よりも副作用は少ないとされています。
熱凝固療法
エコーで観察しながら、腫瘍の中に直径1.5ミリの電極針を挿入し、ラジオ波電流を流すことにより、電極周囲に発生させた熱によって病変を固めてしまう治療法です。固まった細胞は、細胞の機能が失われているために、間もなく死んでしまいます。肝臓がんの治療法として確立されて抗がん剤療法(化学療法)
手術でがんを取り除けない場合や、肝臓や腎臓の機能が一定の基準を満たしている、転移・再発がX線検査やCT・MRI検査などで確認できる、といった条件を満たす人には、腫瘍の増大を遅らせて延命と症状のコントロールを目的に、抗がん剤治療を行うことがあります。
抗がん剤には、副作用があり、その副作用を軽減する治療法も日々進化しています。
近年開発された分子標的薬は、大腸がんの治療にも用いられています。
従来の抗がん剤はがんの増殖に直接作用するのに対して、分子標的薬はがんの増殖などにかかわる特定の分子だけを狙い撃ちにして、その働きを抑えるのが特徴で、ほかの抗がん剤と併用することで効果が高まることが期待できます。副作用も従来の抗がん剤にように髪の毛や赤血球や白血球などの血球を作る骨髄などへの影響が少なく、また食欲不振、吐き気、味覚障害なども起こりにくいとされています。しかし、通常の抗がん剤とは違った副作用が出ることもあります。
肺への転移
肺への転移は肝臓の次に起こりやすいとされています。大腸がんと診断された人の約2%に肺転移がみられ、大腸がんの手術を受けた人の約5%に肺での再発がみられます。肝転移と同様に、転移が肺だけ、もしくは肝臓と肺だけで、転移がすべて切除できた場合には、約40%の患者様は治る可能性があります。
肺に転移が見られた場合にも肝臓同様に、切除可能かどうか、患者様が手術に耐えられるかどうかなどを精査してから、できるかぎり切除を行います。
手術で取りきれない場合は、抗がん剤療法を行います。
再発がんへの免疫療法
再発がんは、多臓器への転移、病巣の数が複数といったケースが多く見られ、全身にがんが回っている状態であることが多いです。
全身のがんに対しては、手術の適応が難しい場合もあり、抗がん剤療法を行うことが多いです。全身療法としてのがんの治療は、長い間抗がん剤治療しかない状態でした。しかし、近年新しく免疫療法が出てきました。
免疫療法は、体内の免疫機構を効果的に利用しがん細胞と戦う力を増強させる治療法です。抗がん剤と違い、正常な細胞への攻撃が少ないため、副作用も少ない、患者様に優しい治療法であると言われています。
しかしながら、現在は認可されている治療法が少ない為、多くの治療法は保険適応外です。
最近では、免疫細胞の中でも特にがんへの攻撃力が強いNK細胞や樹状細胞を使った治療法が開発され、一定の効果を上げています。
そもそもがん細胞は、細胞が増殖するときに上手く合成されずに生まれるもので、正常な人でも1日4000個ほど生まれていると言われています。免疫機構が正常に働いていれば、すぐにがん細胞は攻撃され、死滅するのですが、何らかの原因で免疫機構が働かない場合、がん細胞が増殖してしまいます。このようながん発生のメカニズムが解明されてきたことにより、免疫療法も生まれてきました。今後、さらに衆目が集まる治療法のひとつだといえるでしょう。
まとめ
大腸がんは日本において患者数の多いがんです。原発巣を切除しても、目に見えない小さながんが血行を介して他臓器に転移している場合もあり、特に肝臓や肺への転移が多く見受けられます。大腸がん同様、転移したがんも、全て取り除くことが治癒への近道ですが、取り除くことが難しい場合でも、新しい抗がん剤の開発や、免疫療法といった効果的な治療法が次々出てきています。どのようながんにおいても、治療法がないことはないのです。知識を蓄え、是非ともお役立てください。
岩崎どど(イワサキ・ドド)
医療ライター・臨床検査技師。
総合病院の臨床検査科勤務時代には、病棟を回り心電図検査や採血などをしておりました。
患者様との会話の中から、病気の苦しみや様々な悩みなどを見聞きした経験を生かし、
がんに関する記事を寄稿しております。また、がん患者を持つ家族としての立場から、
「今」知りたい最新のがん治療について特にお伝えしていきます。
HP 「どどの家」https://dodoiwasaki.com/
国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/index.html
大腸がん研究会
http://www.jsccr.jp/forcitizen/comment03.html
大腸がんを生きるガイド
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/cancernavi/daicho/
独立行政法人 国立病院機構九州医療センター
http://www.kyumed.jp/guide/subcenter/kanzo.html?small=59&id=110