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がんと診断されたら
がんと診断された時「まさか自分ががんと診断されるとは」と思うのは無理もありません。
主治医の話を落ち着いて聞くこともままならないでしょう。
頭が真っ白になり不安と絶望や「診断が間違っているかもしれない」という否認をしたい気持ちにもなるでしょう。
がんの状態や治療の内容などにもよりますが、通常診断を受けてから治療が始まるまで、検査や入院待ちなどの時間があります。もし少しでも心細く感じたら家族や友人に付き添ってもらって主治医の話を一緒に聞いてもらうのも良いでしょう。
それでは、診断直後から治療に進む過程で行うべきことを7つ挙げてみます。
まず主治医に確認すること
自分の治療をスタートする際必要な情報を聞き漏らさないために、主治医にまず確認することには下記のような項目があります。
1.自分のがんの診断名は何という名前か/疑われているか確定しているか
2.がんのできている位置
3.ステージ
4.転移の可能性/広がりの範囲
5.主治医の勧める最も効果的な治療法とその理由
6.治療法の選択肢におけるそれぞれのメリット・デメリット(副作用や費用など)
その治療を選んだときの期待できる効果(生存期間や生活の質、苦痛の軽減など)
7.今後どんな症状が起こる可能性があるか
家族にがんのことを伝える ― がんを家族に伝えるのは勇気がいること
がんになった時、特に患者が伝えるべきか悩んでしまうケースがあります。
まず一つ目は高齢の両親に伝えなければいけない場合です。「ここまで一生懸命育ててもらったのに心配をかけるなんて」、「悲しい思いをさせるのではないか」と患者は心配になります。実際両親にがんのことを話せなかったという患者も多くいます。ですが、もし自分ががん患者の両親だったら、がんと診断された子供が独りで苦しみ、相談されないということはとても辛いことだと思いませんか?
2つ目は子供に伝える時です。
米国の研究では、親ががんになった子どもは不安や気分の落ち込みを感じる率が高いことが分かっています。子供はがんという病気に対する知識がほぼ無い状態のため、どうしても悲観的になりがちです。また、がん患者の子どもの29%は、親が病気になった1年目に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を経験しているという報告もあります。
2つのケースに当てはまる場合、正確に伝えるのはとても勇気がいることかもしれません。家族に絶望感というショックを与えるのは患者にとっても避けたいことです。
ですが、がん患者は家族の理解という大きなサポートがあって初めて治療に前向きになれると言っても過言ではありません。
がんになった自分を必要以上に責めるのは止めて、まず患者自身が家族の力を借りて少しでも不安や悲しさを軽減することが必要です。
「高齢の両親や子供にどう伝えればいいか」など、言葉の選び方や安心させる伝え方も分からないかもしれませんが、そういったがん患者の家族とのコミュニケーションの方法までどなたでも無料で相談可能な「がん相談支援センター」がありますので、一人で悩まずに活用してみましょう。
がん相談支援センターの窓口を利用して情報収集を - がん相談支援センターとは?
がん相談支援センターは、全国各地のがん診療連携拠点病院などにあり、がんに関する情報を提供したり、相談に乗ってくれるところです。がん専門相談員としての研修を受けたスタッフが信頼できる情報に基づき、がんの治療や療養生活全般の質問や相談を受けています。病院によっては、相談の内容に応じて、専門医やがんに詳しい看護師(認定看護師、専門看護師)、薬剤師、栄養士などの専門家が対応できる連携体制を整えているところもあります。
また、地域の医療機関の情報のほか、介護福祉施設や緩和ケアなど療養支援施設に関する情報や、住まいの市区町村で行っている助成制度に関する情報を探すことができます。
心のケアのために専門家に相談する
心のケアはがんの治療を前向きに捉えて治療に取り組むための土台になるでしょう。
心療内科医や精神科医、心理士が専門家として当たり心の問題を専門に扱う看護師やソーシャルワーカーなどが窓口になります。不安や落ち込みはもちろん、睡眠の問題や対人関係のストレスなど、ストレス全般に関して相談することができます。
日本ではまだ少ないのですが精神腫瘍医と呼ばれる、がんに関連した心の問題のケアを専門にする医師も増えてきました。精神科医や心療内科医が相談を受けています。
自分のがんについての情報収集をしましょう
がんの部位や種類によっては、診療(治療)ガイドラインが発行されています。これはさまざまな病状に対して個々の現場が適切な治療決定を行うのを助けるために、診療に関する標準的推奨事項とその根拠がまとめられています。
また、インターネットを活用するとたくさんの情報を簡単に入手できます。中には、特定の治療を勧めるなどの偏ったものや不確かなものもありますので何を信じるかには注意が必要です。誰が書いているかはっきりしていない、良いことばかり書いてあるウェブサイトなどは避けましょう。
手に入れた情報の信頼性を精査する
自分の収集した情報が正しいかどうかは複数の情報を参考にしましょう。医学研究の結果に基づくものと、個人的な体験談や感想などといった主観的なものがあることにも注意しましょう。
がんの診断と治療法の選択
治療法を考える
がんと診断された後、主治医から提案された治療法についてどのように感じるかどうかをまずメモ書きにしてみましょう。
中にはひどい副作用を伴い普通の生活が困難になるケースもあります。費用が高額になる場合もあります。それらの情報を元に「自分が治療で目指したいQOLはどのようなものだろう」と考えてみます。
また、この時点でも情報が足りないと感じたら主治医に質問をしたり、がん相談センターに「これとこれの選択に悩んでいるが決断しきれずに困っている」と問い合わせをしたりすることも重要です。
また生活全般に支障が出る場合は家族のサポートも発生するので、家族ともきちんと話し合いをしましょう。
セカンドオピニオンを活用する
治療方針について別の医師の意見を聞きたければ、セカンドオピニオンも選択肢の一つです。
もうすでにこの言葉は浸透していますが、セカンドオピニオンとは、患者が納得のいく治療法選択のために治療の進行状況、次の治療選択などについて、現在診療を受けている主治医とは別に、第2の意見をもらうことです。
セカンドオピニオンを受ける際の注意点には下記のようなポイントがあります。
1.進行の度合いによってはなるべく早期に治療を開始しなければならない場合があるため、現在の主治医に緊急度合いとその詳細についてしっかり確認しましょう。
2.最初の主治医の意見を判断の基本とする
最初の主治医がどのような説明をしたか、しっかり理解を深めましょう。
ファーストオピニオンで「自分の病状、進行度、なぜその治療法を勧めるのか」などについて理解しないまま、セカンドオピニオンを受けても逆に混乱してしまうこともあります。
複数の医師の意見を聞いて、どの医師の意見を選んでよいかわからなくなってしまうことのないようにします。
3.セカンドオピニオンを受ける医師や病院の選び方
最近がんを扱う病院では「セカンドオピニオン外来」を設置しているところが増えてきました。セカンドオピニオンをどこで受けるか迷う場合には、がん治療と連携している病院のがん相談支援センターに問い合わせると、その地域周辺のセカンドオピニオン外来を行っている病院や専門の医療機関などの情報を得ることができます。
がんと診断されたら検討すべき他の2つのこと
主治医からの治療法への提案や指示、家族との対話、自分で調べた情報を元に患者が治療法を決断したとします。
その際是非がんを診断された早い時期から検討してほしい療法が2つあります。
これら2つは「がん3大療法」を支える上で、見落とされがちであったり知られていなかったりするのですが、患者にとって非常に有効なケースが報告されています。
緩和ケア
「緩和ケア」と聞いて「ホスピス」や「終末療法」をイメージする人がほとんどでしょう。
がんを診断されてからすぐ、緩和ケアを提案されたら「もう末期で見捨てられるレベル」だとは決して捉えないで下さい。
がんの緩和ケアはWHOではこのように定義されています。
「生命を脅かす疾患に関連する問題に直面している患者とその家族の苦痛、身体的、心理社会的、スピリチュアルな問題を早い段階で特定し、それらを適切に評価・治療することによって苦痛を防ぎ解放することを通して、患者と家族のQOLを改善するアプローチ」と定義しています。
要するに、がんと診断されてから「精神的に辛い」や治療過程で「身体的に辛い」と感じたら早期のがんであろうが緩和ケアの対象になるということです。
緩和ケアは終末期ではなく「痛み」を感じた時からいつでも始めることができるのです。
アメリカの調査では、早期の段階で緩和ケアを受けた患者は、受けなかった患者と比べQOL(生活の質)がよく、サポートを受けた患者のほうが5.5ヶ月長生きしていたということが分かりました。
また、緩和ケアは患者だけでなく家族も受けることができます。
がんと知らされたときの精神的な絶望感、サポートをしているときの精神的・身体的な辛さについても緩和ケア専門の心療士が存在します。
もうひとつの「痛みの緩和」―免疫療法
上記で緩和ケアについて紹介しましたが、がん3大療法である手術・放射線治療・抗がん剤には身体的苦痛とそれによる精神的苦痛が引き起こされます。
緩和ケアが「精神的な負担の軽減」や「病院との連携によるサポート」という意味合いが強いですが、免疫療法は「身体的痛みの軽減」にフォーカスしています。
免疫療法は人間の体に本来備わっている病気を防ぐ力を最大限に引き出していく治療法のため副作用がほとんど起こりません。
がんの治療の過程では夜も眠れないほどの耐え難い副作用に襲われることもあり、それは精神的な苦痛をますます悪化させ「こんなに苦しい思いをしてまで生きないといけないのか」と感じる患者も多数います。
また、そのような患者に対して家族は、痛みの理解はできても助けることができない自分を責め、家族がうつ病になってしまうこともあります。
例えば化学療法の激しい副作用に対しては医療用麻薬である「オピオイド」が導入されており、一時的に副作用を抑えることができたとしても体に耐性がなくなっていきます。
その結果常に服用しなければならず服用量も増えていきます。
がんと闘うためには免疫力が基礎的な土台になるという認知はあまりされていないようです。
がんの治療と聞いて「がんを消滅させなければ」と考える患者が大多数の中、放射線治療や化学療法、オピオイドの服用は免疫力を確実に下げ、健康な細胞にまで傷をつけてしまいます。その結果免疫力が下がり、がんと闘う免疫がなくなる、もっと治療の強度を上げなければならないという悪循環を生み出します。
免疫療法は早期の段階から使用した方が再発防止や転移の防止にも貢献するという結果が出ています。がんと診断されたら免疫療法についての情報も収集してみましょう。
さいごに
がんと診断された時、まず絶望感や不安、「信じたくない」という負の感情と「治療を頑張ってみよう」という前向きな気持ちを行ったり来たりするそうです。
自分が後悔しない判断と選択のためにはまずそのような不安定になる心を落ち着かせることが必要です。
またがんと闘うには家族のサポートも必要です。そのために家族とも精神的辛さを共有し合いサポートされているという実感を得ることも、それを得られるのとそうでない場合では大きな差があります。
日本人という国民性から「他人に迷惑をかけてはいけない」という信条が根底にあるため、
がんのような重篤な病気にかかっても家族や身近な人に話せないということが多くあるそうです。
そのような場合は身近な主治医や看護師、がんの相談窓口などに「家族に伝えられないことが辛い」と話してみることから始まります。
がんを扱ってきた専門家は「家族とのコミュニケーションの計り方」にもたくさんの知見を持っているので、何らか参考になるアドバイスを得てほしいと思います。

医療ライター。
医薬系会社にて医療事務に従事する傍らで、美容系サイトにて痩身美容(脂肪吸引など)ついて執筆するフリーライター。
主に得意分野は、がんや免疫療法、経営者インタビュー記事作成など。