骨軟部腫瘍とその治療法について

骨軟部腫瘍とその治療法について解説します。まず、骨軟部腫瘍の概要を説明して、検査方法や治療方法を紹介します。治療経過についても触れています。最近注目されている免疫療法についても紹介しています。早期発見がカギを握ります。

 

 

目次

骨軟部腫瘍とは

骨組織や筋肉、脂肪などの軟部組織に生じた腫瘍を総称して骨軟部腫瘍と呼びます。また、骨組織と軟部組織に生じた腫瘍を分けて、それぞれ骨腫瘍、軟部腫瘍と呼びます。

 

骨腫瘍と軟部腫瘍は、それぞれ良性と悪性に分類することができます。悪性の骨軟部腫瘍のなかには、発生した箇所が骨や軟部組織ではなく、他の臓器からがんが転移してきて腫瘍を形成するケースがあります。

 

このような骨や軟部の悪性腫瘍を「転移性骨・軟部腫瘍」と呼び、逆に骨軟部組織に最初から発生したものを「原発性骨・軟部腫瘍」と呼びます。転移性骨腫瘍の場合は、頻度的には内臓がんの転移が圧倒的に多いです。

 

 

 

良性と悪性のちがい

骨軟部腫瘍には、良性と悪性の2種類があります。

 

良性腫瘍

まず、良性腫瘍についてですが、発生した部位から離れた部位へ転移することがほとんどない腫瘍のことを言います。また、手術で腫瘍内にメスが入ったとしても腫瘍が散らばることはほとんどありません。

 

悪性腫瘍

次に、悪性腫瘍についてですが、転移を起こし得る腫瘍のことを言います。手術で誤ってメスを腫瘍に切り込むと容易に腫瘍が散らばり、その後の治療が困難になる[h1] という特徴があります。また、腫瘍は周囲の組織に深く浸潤する傾向があるため、より大きく切除する必要があります。

 

悪性腫瘍には、

・肉腫

・がん

があります

 

実際の現場では、悪性のなかでも悪性度の高いものから悪性度の低いものまで幅広くあって、良性でも悪性かのような浸潤性を示す腫瘍があります。そのため、一部の腫瘍は悪性か良性かの判断は非常に困難で、治療で手術をする際は、経験豊富な治療医と病理医による正確な判断が必要となってきます。

 

 

症状と自己判断法

通常は患者も医師もあまり悪性腫瘍であることを考慮することなく、腫瘤を放置してしまっていることが多いようです。そのことにより、診断の遅れや良性と判断を間違って行なった治療が症状を悪化させていることもあるのが現実です。そこで、次のような症状があったら、一度がん検査を受診することをおすすめします。

 

骨腫瘍の症状

骨腫瘍の症状としては以下が考えられます

・手足の一部が腫れており、押さえても痛みはないが触ると熱を持っている

・手足の関節が曲がらなくなる

・些細な外傷で骨折が起こる

・他の病院で骨腫瘍の疑いが指摘された

 

以上の症状があれば、病院に行って症状を伝えましょう。その際、ネットで調べると骨肉腫の症状と合致したため気になっている旨を合わせて伝えるとスムーズに診断されると思います。

 

軟部腫瘍の症状

軟部腫瘍の症状としては以下が考えられます。

・手足の筋肉にくるみ大以上の無痛性腫瘤を触れる

・腫瘍部は腫れて、触ると熱を持っているが通常押さえても痛みがない

・大きくなると表面が光沢をもち、静脈が浮き出てくる

・腫瘍は触るとよく動くが基底の骨や筋肉に浸潤すると動きにくくなる

 

以上の症状があれば、軟部腫瘍を疑って良いでしょう。病院に行って症状を伝えましょう。その際、ネットで調べると軟部腫瘍の症状と合致したため気になっている旨を合わせて伝えるとスムーズに診断されると思います。

 

検査方法と目的

診察手段は骨腫瘍と軟部腫瘍のケースで多少異なります。それでは検査方法と目的を8つご紹介します。

 

レントゲン検査

骨の変化だけではなく筋肉や脂肪の変化から腫瘍の状態を診断します。このレントゲン検査で骨腫瘍の9割の良性あるいは悪性の診断が可能です。情報量が多いCTやMRIがありますが、それでもなおレントゲン検査は全体像を把握するために不可欠な検査方法です。

 

超音波検査

外来で行なう簡便な検査方法で、主に軟部腫瘍に対して行ないます。レントゲン検査では判らない腫瘍の発見や腫瘍の性格を予測することを目的としています。また、手術後の再発チェックの役割を果たします。

 

針生検

局所麻酔を行ない、腫瘍に直接針を刺して、その一部を採取する検査方法です。針生検で得られた材料で細胞診断と病理診断を行ないます。病理診断では、形態のみでは判断が難しい細胞の性格を判断することができますが、診断結果が出るには数日必要になります。

 

CT

からだを断面像として描出するX線検査方法です。レントゲン検査よりもさらに詳細に腫瘍の部位や構造、骨破壊の様子が明かに判ります。また、悪性腫瘍では、肺に転移を生じることが多いためCTで肺の検査をすることは必要です。

 

MRI

からだに強力な磁場をかけ、からだの内部の水素原子から発生する電磁信号を感知して、コンピュター処理で撮像する検査方法です。腫瘍の内部構造を最も明瞭にあらわすので、診断や手術計画、治療効果の判定には不可欠です。

 

核医学検査

骨シンチは、テクネシウム燐酸化合物を静脈注射し、2~3時間後に画像を撮影する検査方法です。がんの骨転移や多発性の骨病巣の広がりを知るために有効です。また、骨病巣が活動性か否かの判定することもできます。

 

動脈造影

動脈に造影剤を注入して腫瘍部の血管量や大きな血管との関係を知るために応用されます。化学療法が有効なときは腫瘍部の血管が減少するので、腫瘍の治療への反応を知るためや、手術計画を立てるときに実施します。

 

遺伝子検査

最近の研究で一部の肉腫では、「キメラ遺伝子」と呼ばれる特異的な遺伝子の異常を示すことが判ってきました。これまでの病理組織検査だけでは診断の判断が困難な場合に有用な検査法です。

 

 

治療方法

治療方法は大きく分けて3つあります。

・手術(外科治療)

・化学療法(抗がん剤)

・放射線治療

です。

 

手術(外科治療)や放射線治療は局所の治療方法で、化学療法(抗がん剤)は全身的な治療方法です。転移がある場合、転移が疑われる場合、悪性度の高い腫瘍の場合では、全身的な治療が必要になってきます。

 

手術(外科治療)

腫瘍が発生した局所に留まっている場合、その局所の腫瘍を除去することができるのは手術(外科治療)です。なるべく再発の可能性を低くするために手術を行なうためには、腫瘍の性質をよく理解してから手術を行なうことが重要です。

 

正しい切除の方法とは、反応層の外側で周囲の正常組織を含めて大きく切除することです。

 

以前であれば切断するしか方法がなかった患者さんでも、手足を残して機能を保てることができるようになってきました。患肢温存術と言います。現在、国立がん研究センターにおける患肢温存率は90%以上です。

 

化学療法(抗がん剤)

抗がん剤を用いて腫瘍細胞を死滅させる方法のことを、化学療法といいます。静脈を通して点滴で投与された抗がん剤は、血液の流れで運ばれて全身に行き渡って腫瘍細胞を死滅させます。

 

また、腫瘍に血液を送っている動脈に直接抗がん剤を注入し、局所の腫瘍細胞を死滅させる方法もあります

 

放射線治療

腫瘍細胞を死滅させ、腫瘍を小さくするために行ないます。しかし、放射線治療が比較的効きにくいものが多く、放射線治療を第一選択することはあまりありません。

 

手術ができない場合や、手術前に放射線治療を行なって腫瘍をできるだけ小さくしてから手術で切除しやすくする場合や、手術後に腫瘍の取り残しが考えられる場合などに行ないます。

 

 

 

ステージ別治療方法

ステージ別治療方法を紹介します。大きく分けて、転移がない場合と転移がある場合が考えられます。

 

転移がない場合

原発腫瘍が所属リンパ節と一緒に広範切除という手術方法で完全に切除されます。病理学的にも微小残存腫瘍細胞がないときは、局所補助療法は行ないません。

 

腫瘍細胞が残っていると考えられる場合は、放射線治療が行なわれます。仮に、腫瘍が目で確認され、生検して腫瘍細胞があると判断された場合には、外科的再切除が検討されます。

 

転移がある場合

血行性転移を認める場合は、どの種類の腫瘍でも予後はよくありません。原発の局所病巣に対しては、手術で広範切除します。

 

そのあと、転移巣や患者さんの状況に合わせて化学療法を行ないます。化学療法の効果が認められ、手術が可能になれば転移病巣を切除することもあります。

 

 

 

治療経過

手術後の治療経過についてみていきます。

 

術後のフォローアップ

治療が終わった後は、外来通院となります。一般的に最初の1年間は1ヶ月に1回、局所再発、肺転移の有無、人工関節をチェックします。検査は局所の触診と単純レントゲン撮影で、必要に応じてMRI, CT,骨シンチグラムを行ないます。2年目以降は間隔をあけて、治療終了後5年間は観察が必要です。

 

骨軟部腫瘍の予防と検診

現在まで骨軟部腫瘍に関連する予防はほとんど知られていません。また、病気の数が他のがんに比べて少ないため検診は行なわれていません。症状が現れたときに早めに受診することが大切です。

 

免疫療法について

最近、「第4のがん治療」として注目されているのが免疫療法です。私たちのからだは免疫によって発生したがん細胞を排除しています。しかし、免疫が弱かったり、がん細胞が免疫にブレーキをかけたりすることにより、私たちのからだががん細胞を異物として排除しきれないことがあります。

 

免疫はいつも同じ状態ではなく、異物を排除するために強まったり、強まりすぎたときには弱まったりしています。免疫療法とは本来の力を回復させてがんを治療する方法です。最近、注目されていて、研究が進められています。

 

私たちのからだは、体内で発生しているがん細胞を免疫により異物として判断して、排除しています。しかし、免疫が弱まった状態であり、がん細胞が免疫から逃れる術を身につけていることがん細胞を異物として排除しきれないことがあります。免疫療法は、私たちのからだの免疫を強めることにより、がん細胞を排除する治療法です[s3] 。

 

がんに対する免疫力を高める免疫療法は、具体的には以下のような種類の療法があります。

・免疫細胞療法

・ワクチン療法

・サイトカイン療法

・BRM療法

・抗体療法

 

3大がん治療方法(手術・化学療法・放射線治療)が外部からの力を借りてがんを治療するのに対して、免疫療法は主として本来からだが持っている免疫力を活かしてがんと闘います。

 

免疫療法は、他の治療のように即効性はない場合もありますが、効果が長期間持続することが特徴としてあげられます。これが免疫療法の最大の良い点です。免疫療法は、自分が持つ免疫力を活用した治療なので、体力があって免疫の働きも衰えていない病気の初期段階で活用すると、より高い効果をあげることも知られています。

 

 

まとめ

骨軟部腫瘍とその治療法について解説しました。

 

検査方法は、

(1)レントゲン検査

(2)超音波検査

(3)針生検

(4)CT

(5)MRI

(6)核医学検査

(7)動脈造影

(8)遺伝子検査

の8つでした。

 

そして、主な治療方法は、

・手術(外科治療)

・化学療法(抗がん剤)

・放射線治療

の3つでした。

 

また、「第4のがん治療」として注目されているのが免疫療法についてもご紹介しました。免疫とは、からだのなかに侵入した異物を排除するために、誰もが生まれながらに備えている能力で、この能力を高めてがんの治療を目的とした免疫療法を特に「がん免疫療法」と言いましたね。

 

免疫療法は、自分自身の持つ免疫力を使った治療なので、体力があって免疫の働きも衰えていない病気の初期段階で活用すると、より高い効果をあげることも知られており、今後の研究にも期待ができます。

 

骨軟部腫瘍の治療には家族のサポートも必要になります。患者さんは精神的にも疲弊してしまう可能性があるため心のサポートも必要になります。家族みなさんで骨軟部腫瘍を乗り越えましょう。

 

参考文献:

・小児がんの解説(国立がん研究センター小児がん情報サービス)

https://ganjoho.jp/child/cancer/soft_tissue_sarcoma/treatment.html

・がん対策推進総合研究事業(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kenkyujigyou/hojokin-koubo-h26/gaiyo2/07.html

 

 

 

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