甲状腺癌は、特徴や症状によって4つに分けられています。
ほとんどが良性の腫瘍であるといわれますが、やはり癌になる可能性は捨てられません。
今回は、そんな甲状腺癌についてステージを中心に説明しています。
目次
甲状腺癌について
甲状腺は私たちの体において、新陳代謝を良くして成長を促進するホルモンを分泌している小さな臓器です。
甲状腺はホルモンが過剰に分泌されることで病気を発症しますが、そのほとんどが良性のものとされています。
男女比で言えば甲状腺の病気は、女性の方が発症しやすいです。
しかし、腫瘍が大きくなり、癌に見られる悪性の性質が現れることも否定できません。甲状腺癌である場合は、しこりができて、声がかすれることが主な症状です。
さらにくわしく甲状腺癌について説明します。
甲状腺癌は4つの種類に分けられる
細分化された4種類の甲状腺がご紹介します。
乳頭癌
甲状腺癌を発症する約9割が乳頭癌です。
癌の進行が非常にゆっくりであること、治療を必要としない場合もあることから、予後が良いとされています。
しかし、確率は低くてもの乳頭癌が未分化癌に進行していく場合もあります。
未分化癌はすでに転移なども考えられる癌ですが、進行が遅いため乳頭癌から未分化癌になるまでは、時間がかかります。
そのため、乳頭癌は、女性で40歳から50歳の人に多く発症するとされていますが、未分化癌になる可能性が高い乳頭癌においては、高齢者が発症する場合が多いとされています。
濾胞(ろほう)癌
乳頭癌の次に多いのが、濾胞癌で約5割です。
乳頭癌と同じように比較的、予後が良いとされていますが乳頭癌より悪性度が高くなります。また、濾胞癌は他の癌細胞のような歪な形をしていないため、良性の濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)との違いが分かりにくいのも特徴の一つです。
髄様(ずいよう)癌
髄様癌は、甲状腺癌の中では発症が少ない癌です。
ホルモンを作り出す甲状腺の中で、カルシウムの代謝に関わる傍濾胞細胞(ぼうろうほさいぼう)が癌化することで髄様癌となります。
また、髄様癌は遺伝によるケースが発症の約半数を占めています。発症した本人以外に家族も治療を受ける場合があります。
未分化癌
甲状腺癌の中で最も悪性度が高いのが未分化癌です。
進行が非常にゆっくりである甲状腺癌において、未分化癌は進行が早くすでに転移していることも考えられます。ほとんどのケースでは、発症してから約半年から1年以内に死亡するとされています。
悪性リンパ腫について
上記の4つの種類に、悪性リンパ腫を加えて分類される場合があります。これは、甲状腺の病気である「橋本病」を起因としていることが多いからです。
1ヶ月で甲状腺が大きく腫れ上がり呼吸困難になることもあれば、1年または2年程度かけて大きくなることもあります。
ステージについて
癌の進行状態を表すのがステージです。
甲状腺癌は、4種類ごとにステージが分けられています。
乳頭癌と濾胞癌(45歳未満・45歳以上)
乳頭癌と濾胞癌では、45歳を基準にステージが分けられています。
45歳未満は、癌の転移の有無のみで決められるのが特徴です。
内閣府認証 特定非営利活動法人統合医療と健康を考える会:http://www.tougouiryou.jp/cancer/shurui/026.php
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髄様癌
髄様癌は、癌の大きさ・転移の有無を基準にステージが分けられます。
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未分化癌
未分化癌の場合は、すでに転移していることを前提に検査・診断される場合が多いので、転移があるとする基準でステージに分けられます。
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治療について
甲状腺癌の治療は、標準3大治療を軸に治療されますが、「放射性ヨード」や内分泌療法も取り入れています。
それぞれの癌で目安となる治療法をご紹介します。
赤坂AAクリニック腫瘍内科:http://www.tougouiryo.com/cancer/thyroid.html
手術について
甲状腺癌ではほとんど場合、手術が適応となります。
● 葉切除術・・・甲状腺の片方の葉を切除する
● 甲状腺亜全摘術・・・甲状腺の約2/3を切除する
● 甲状腺準全摘術・・・甲状腺組織を少しだけ残す
● 甲状腺全摘術・・・甲状腺をすべて摘出
患者の全身状態や癌の大きさ広がりによって手術範囲が決められます。
また、癌のステージ別による適応手術としては、
● ステージⅠ期・Ⅱ期・・・葉切除術
● ステージⅢ期・・・甲状腺全摘術
すでに転移があれば、その部位を切除することが考えられます。
放射線療法について
放射線療法は甲状腺癌の場合、
● 体の外から照射する「外部照射」
● 体の中から照射する「内部照射」
この2つの方法があります。
外部照射が適応となるのは、ステージⅢ期・Ⅳ期と未分化癌、それ以外が内部照射となります。
甲状腺癌の放射線療法で特徴的なのは、「放射性ヨード」です。
これは、甲状腺がヨードを取り込む性質があることを利用しています。術後、残っている癌が放射性ヨードを取り込んで放射線を放出することを狙いとし、甲状腺を傷つけることなく癌を攻撃することができます。
化学療法(抗癌剤治療)
甲状腺癌で化学療法が適応になるのは、
● 髄様癌
● 未分化癌
● ステージⅣ期の乳頭癌
手術できるケースが多いので、化学療法は治療困難な場合に選ばれます。
内分泌療法について
甲状腺は、新陳代謝や成長を促進するために「甲状腺ホルモン」を分泌しています。ホルモンバランスが崩れると疲れやすくなり体調を崩しがちです。
甲状腺癌の治療によって、甲状腺本来の働きができないとそれを補おうと「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」が分泌されます。しかし、補うだけに止まらず癌細胞を増殖させてしまいます。
そのために行われるのが内分泌療法です。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を抑えて、再発を予防します。
この治療法は、乳頭癌・濾胞癌に有効とされています。
ステージ別の生存率について
甲状腺癌は、自覚症状がほとんどないといわれています。
● 首にしこり
● 飲み込み時の違和感や痛み
癌が進行することで下記の症状が現れます。
● 声のかすれ
● 甲状腺の肥大
● 呼吸困難
症状のない初期の段階での発見は、難しいのですが、甲状腺癌は可能な限り手術ができるので、高い生存率を誇ります。
甲状腺癌ステージ別の5年生存率
ステージⅠ期 |
100% |
ステージⅡ期 |
100% |
ステージⅢ期 |
98.9% |
ステージⅣ期 |
71.2% |
生存率、予後が良いとされる甲状腺癌においては、乳頭癌だと20年生存率も92%と高く、遠隔転移の状態でも5年生存率は86%となっています。
ただし、未分化癌においては、1年後の生存率は16%と低くなっています。
免疫療法について
免疫療法は、癌の標準3大治療に加えて、第4の治療法として評価を上げています。
しかし、実際にどのようにして治療を取り入れているのか分からないことが多くあります。癌と診断された後、私たちは状況を受け入れられないことが多々あります。今後の不安を少しでも解消させるには、正しい情報を知り、理解して治療に取り組むことです。
今回は、免疫療法の取り入れ方についてご説明します。
標準3大治療との併用について
免疫療法は、癌治療の標準3大治療との併用を可能としています。
併用することで、その治療の効果を高め、再発の予防に役立つとされています。
手術との併用
癌の治療において手術ができれば、癌細胞を取り除くことができるので予後にも期待が寄せられます。
しかし、手術ができても残念ながら癌の場合は根治とはなりません。手術で取り除ける癌細胞は、目に見えているものだけだからです。
癌細胞は、私たちの肉眼では確認できないほどの小さな細胞もあります。このまま放置しておくと癌は再発して転移してしまいます。
ここで取り入れるべき免疫療法は、予防型ワクチンです。
免疫療法は進行していく癌細胞に攻撃するだけでなく、術後に再発をしないように予防する治療法があります。
定期検査を続けているだけでは、再発の早期発見を可能とするだけで再発予防とは言い切れません。手術を終えた後も免疫療法で再発予防の治療を続けることで、再発のリスクを下げることができます。
放射線治療と化学療法(抗癌剤療法)との併用
癌が大きくなる、または遠隔転移して手術ができない場合に取り組む治療です。
どちらも治療を継続することが必要とされますが、患者自身への体力的な負担が大きく継続が困難となる場合があります。
ここでも免疫療法と併用することで、治療を継続することができ成果にも期待が持てるようになります。
取り入れる免疫療法は、治療型ワクチンです。
免疫細胞は本来、体内に入ったウィルスや異物を攻撃するのですが、癌細胞は上手に隠れ、免疫細胞に異物だと認識させないようにして増殖していきます。そのため、免疫細胞は弱ってしまい本来の働きが十分にできないので、体力は低下して治療にも耐えることができなくなるのです。
治療型ワクチンでは最初に、体内の免疫細胞に癌細胞は異物であること、攻撃する必要があることを覚えさせます。その後、覚えた免疫細胞が直接攻撃をする免疫細胞に癌細胞を攻撃するように指示を出していきます。
こうすることで、放射線治療や化学療法の効果を上げ、患者自身の免疫力も高まっているので、体力を維持することができ継続して治療することができます。
患者のQOLを向上させる
癌は、発見時のステージによっては、治療を困難とし積極的な治療が行えないことがあります。
癌を治すことを諦めるのではなく、残された時間を穏やかに過ごしたいと考える患者もいます。
そんな患者のためにも免疫療法を取り入れることができます。
自己の免疫細胞を元気にして免疫力を高めることができるので、癌の進行を抑制して穏やかに過ごせる時間を延ばすとされています。
癌の状態によって治療法はそれぞれに異なりますが、免疫療法を取り入れることで治療や予後への期待が大きくなります。
ご自身の癌治療にも免疫療法が必要なのか、まずは医師に相談をして正しい情報を知り、可能であれば取り入れてみることを考えてみましょう。
まとめ
甲状腺癌は4種類からそれぞれの癌においてステージが分けられていることがわかりました。
自覚症状がなく発見が遅れがちですが、進行して転移がある場合でも生存率は高く予後に期待ができます。
甲状腺は、体内のホルモンバランスを整える役目があるので、癌や病気を回避して元気に過ごせるように体調を確認しながら過ごしていきましょう。
出典:
内閣府認証 特定非営利活動法人統合医療と健康を考える会:http://www.tougouiryou.jp/cancer/shurui/026.php
赤坂AAクリニック腫瘍内科:
http://www.tougouiryo.com/cancer/thyroid.html

総合病院・クリニック・調剤薬局にて医療事務員として10年以上勤務したのち、ライターへと転身。
現場で学んだ知識と経験を元に、医療に関する取材・執筆活動を行う。
興味のあるテーマは、がん医療・先進医療。