甲状腺がん

甲状腺は目立った働きをしない器官ですが、分泌されるホルモンバランスが崩れると日常生活に大きな支障をきたしてきます。まず甲状腺がどのような機能や役割をしているか知っていき、甲状腺がんについての理解を深めていきましょう。

甲状腺のがんの症状・特徴や発生リスク

甲状腺とは?

甲状腺は首の中心にあり、のどぼとけのすぐ下にあります。羽を広げた蝶に似た形をしています。人体最大の内分泌腺で、内分泌腺とはホルモンを分泌する臓器のことです。 他には膵臓、副腎、脳下垂体、卵巣、精巣などがあります。
甲状腺の役割は甲状腺ホルモンという物質を作り、貯え、血液の中へ分泌することです。甲状腺ホルモンには、こどもの頃には成長などに影響し、成人になると体の新陳代謝の調整をしてくれます。要するに、体を元気にする機能で、性別や年齢に関係なく一定量分泌がされています。ホルモン分泌量を調整するために、脳下垂体から甲状腺刺激ホルモンが出ているのですが、甲状腺ホルモンが足りなくなってくると脳下垂体からの甲状腺刺激ホルモン分泌量が増えてきます。甲状腺にもっとホルモンを作って出すように命じるのです。逆に甲状腺ホルモンが多すぎるときは、甲状腺刺激ホルモンの分泌は減ります。

 

甲状腺の病気の病気にかかるとどうなるか

甲状腺の病気にかかると、体がコントロールできないほどホルモンの分泌量が異常になってきます。 例えば、ホルモンの分泌が多すぎると汗が出過ぎたり、動悸がしたり、たくさん食べているのに体重が減少するということが起こります。逆に分泌量が少なくなると、寒気や無気力、慢性的な眠気が有ったり、あまり食べていないのに体重が増えたりします。

甲状腺がんとは

がん全体の死亡者数は2012年約36万1000人です。肺がんの死亡者が最も多く、がん死亡者全体の約2割の約7万人というデータがあります。これに対して甲状腺がんで死亡した人は約1700人と他の種類と比べると少なくなっています。また、特徴として男性より女性の方がかかりやすく、死亡率も女性の方が高いがんです。
甲状腺がんが疑われる症状として、首の付近、甲状腺周辺の腫れやしこりなどがあります。甲状腺がんでは初期症状が認められずとても厄介ながんと見なされています。 頸部のしこり、呼吸がしづらい、呼吸困難、嚥下困難、嚥下困難などの症状があれば医師に相談して下さい。

甲状腺がんの種類・特徴(進行など)と検診

ここでは甲状腺がんの種類と診断について紹介します。

  特徴 診断
乳頭がん

・甲状腺ホルモンを作る濾胞細胞からできるがんです。

・日本のようなヨード摂取充足地域(海藻類などをよく食べる国々)では甲状腺がんの90%以上を乳頭がんが占めます。

・女性に多く10歳台から80歳台まで幅広い年代にみられます。女性10万人あたり年間8人が乳頭がんに罹るといわれています(男性はその5~8分のい程度)

・リンパ節への転移は予後をあまり左右しませんが、高齢でかかると予後が悪くなります。

・リンパ節転移を起こしやすいですが、比較的成長の遅い腫瘍のため治る確率が9割以上と言われています。

・触診、超音波検査、細胞診によって行われ,正診率は98%以上です。

・その他には血液検査で甲状腺機能などを確認します。

・腫瘍が大きい場合は、腫瘍の広がりを確認したり、内視鏡で声帯の動きをチェックしたりします。

 濾胞がん

・甲状腺ホルモンをつくる濾胞細胞からできるがんです。

・甲状腺がんの約5%を占めています。幅広い年代に起こり、男女比は1対2,3程度で女性が多くなっています。

・乳頭がんに比べると転移があまりありません。

・良性腫瘍と区別が難しい場合があります。

・遠隔転移を生じない症例の予後は良好で、甲状腺切除手術によって治ります。

・超音波検査、細胞診、血液検査によって診断されますが、左記にもあるように良性腫瘍と判断しにくい場合があるため手術を試みないといけない場合があります。

・乳頭がんより高齢者がかかる傾向がやや高く、転移しやすい特徴があります。

・血行性転移と言って血液の流れによって遠くの部位に転移する場合は予後が悪いとされています。

 髄様がん

カルシトニン(32種類のアミノ酸を有するペプチドホルモン)という物質を分泌する細胞から発生します。

・甲状腺がんの1~2%です。

・髄様がんは遺伝でなる場合と、そうでない場合に突発的に起こる場合(散発型髄様がん)と両方があります。

・遺伝性の場合副腎、副甲状腺にも病気を併発する場合があります。

・リンパ節に転移がある場合は予後が良くないと言われています。

・超音波、細胞診、血液検査でカルシトニン上昇することでわかります。

・遺伝子検査(PET遺伝子など)も同時に行うことも推奨されています。遺伝性が疑われる場合、副腎や副甲状腺などの検査も行われます。

・遺伝性の強い腫瘍のため家族にも検査が勧められる場合があります。

 

 未分化がん

・甲状腺がんの種類は女性に比較的多く発症しますが、未分化がんは60歳以上に多く、男女比は1対1です。

・甲状腺がんの種類の中で最も悪性度が高いと言われています。

・全甲状腺がんの1~2%程度とまれですが、急速に進行する予後の悪いがんです。

・もともとあった乳頭がんや濾胞がんなどの甲状腺がんが長い経過の中で未分化転化して起こると考えられています。

・治療は手術、放射線の外照射治療、抗がん剤による化学療法の3つを組み合わせることが多いですが、延命は困難なケースが多いです。

・細胞診、CT、MRIなどの画像診断で診断しますが、悪性リンパ腫と区別するために生検が行われることもあります。

・血行性の遠隔転移を伴うこともあるため、転移のチェックも行われます。

 悪性リンパ腫

・血液、リンパの悪性リンパ腫が甲状腺にできたものです。

・高齢者に多く、発生率は1~2%です。

・橋本病(慢性甲状腺炎)のある人が患いやすい傾向にあります。

・未分化がん同様急速に成長します。

・細胞診だけでなく組織生検が必要なことが多いです。

参考: http://koujyousengan.jp/about/type.html
          http://www.ganchiryo.com/type/index03.php

発生リスク

甲状腺がんの危険因子としては大きく分けて①甲状腺のヨウ素による被曝、②遺伝的要因、が挙げられます。

① ヨウ素の被曝: 広島・長崎の原爆投下された付近の地域に甲状腺がん患者が急増しました。また、チェルノブイリ原発事故でも大量の甲状腺がん患者が増えました。日本でも、ここ数年の福島原発事故によって将来的に甲状腺がんが増えることが懸念されています。その他では子供のころにレントゲンやCTを受け過ぎてしまうとリスクが高まると言われています。

②遺伝的要因: 甲状腺がんの中で、遺伝的の要因の強いのは髄様がんという種類です。家族の中に一人でも甲状腺髄様がんにかかっている方がいると、そのうち40%の確率で血族も髄様がんを患うことが分かってきました。家族性の場合は甲状腺内に多数の腫瘍が現れるという特徴があります。家族に甲状腺がんを患ったことのある方がいたら早めに甲状腺の診断をしておくと良いでしょう。

甲状腺がんの治療法・合併症・再発

甲状腺がんに適用される治療法

一般的にがん患者には3大療法(手術、化学療法、放射線療法)のうち1つのみが選択されたり、複数組み合わせられることが多いです。甲状腺がんの場合、化学療法の有効性が低く治療としてあまり選択されていません。主に手術が行われ、補助的な役割として放射線療法があるのが特徴です。

甲状腺がんの治療では遺伝子治療や免疫細胞療法の効果が期待できると言われています。遺伝子治療は、がん細胞にある遺伝子に働きかけて いく治療法で、甲状腺がんでは特にリンパ節などに転移してしまった甲状腺がんに有効です。転移してしまったがん細胞の縮小や消失に期待ができ、放射線治療との併用によって治療効果が上がってきます。
免疫療法は身体の免疫力を高め、がんの細胞に打ち勝つことのできる状態にします。採取した血液から培養し、増殖させた免疫細胞を点滴などで投与し、人間が本来持っている防御システムの機能を高めます。投与された免疫細胞は全身で効果を発揮します。どこに存在しているかもわからない極小の転移や、手術で取り残してしまった極めて小さいがんを攻撃してくれるため、再発防止にも効果があります。

これら2つの療法は苦痛を伴わず、副作用がほとんど無いのも利点です。治療中のQOL(生活の質)に大いに貢献します。まだ保険が適用されていない新しい治療法になるため自己負担となりますが、一部では保険適用され始めているものもあるようです。

合併症 

甲状腺がんには術後に合併症を伴う場合があります。大きく3つの合併症が挙げられます。
① 甲状腺の機能低下:甲状腺の機能は半分から1/3残れば正常に機能しますが全摘を行った場合は甲状腺機能低下が起こる可能性があり、甲状腺ホルモン剤が必要になってきます。服用は1日1回、一生に渡って必要となってきます。薬を服用せずこの機能低下を放置すると、新陳代謝の悪化、体調不良となるだけでなく甲状腺がんの経過にとってもあまり良くありません。
② 甲状腺全摘手術の場合など、副甲状腺がすべて失われる場合: 副甲状腺ホルモンが不足し、血液中のカルシウムの濃度が落ち込み、手足の痺れなどの症状が出ます。その場合にはカルシウム製剤とその吸収を促進するビタミンDの薬が処方されますが生涯にわたって服用しなければいけないのは全体の1割にとどまっています。
③ 声質の変化:これは反回神経麻痺によって起こる変化です。反回神経は声帯の運動をつかさどる神経で左右1本ずつあります。甲状腺の後ろと声帯は関連しているため手術の際に切断しなければいけないケースもあります。ただでさえこの神経はデリケートなため、甲状腺手術の際に 少し刺激があるだけで麻痺することもあります。左右2つのうち片方だけでも麻痺すると声が嗄れてしまいます。

再発の診断と治療

甲状腺がんの術後の経過観察はどのようになされるのでしょうか。甲状腺がんでは術後の経過観察は非常に重要とされています。なぜなら10%以下の確率で再発が見られるためです。経過観察の受診の頻度や検査の内容は症状に応じて決まります。触診、血液検査のほか、頸部超音波検査、胸部レントゲンまたは肺CTなどを行います。 甲状腺ホルモン療法中は、心臓や骨への影響も定期的にチェックしておく必要があります。 退院後は定期的に受診し、術後は少なくとも10年間、できれば一生涯経過観察した方がよいでしょう。

 

さいごに

冒頭で「甲状腺がんは進行が遅く、命に関わる確率は他のがんと比べて低い」とお伝えしましたが、福島県の原発の事故以降小児の甲状腺がんは増加しています。症状が現れるまで5~10年かかると言われている甲状腺がんですので、何か違和感があると感じられたら未然にがんを避けるためにも診察を受けることをお勧めします。

医療ライター。
医薬系会社にて医療事務に従事する傍らで、美容系サイトにて痩身美容(脂肪吸引など)ついて執筆するフリーライター。
主に得意分野は、がんや免疫療法、経営者インタビュー記事作成など。

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