肝臓がんの5年生存率は?ステージ別の治療方法や症状について解説

 

肝臓は「沈黙の臓器」といわれています。

その理由は、肝臓は痛みを感じる神経がなく、自己修復機能がある臓器のため、がんを発症してもある程度病状が進行しないと症状が現れないためです。

よって、肝臓がんは40~50代の中高年での発症率が高く、また男性の罹患率が女性よりも圧倒的に高いという統計があります。

 

がんと闘っていくためには、まず自分のがんについて詳しく知り、様々な治療法の中から最善の方法を探っていかなければなりません。

 

 

肝臓がんのステージと肝障害度分類について

肝臓がんは、がんの進行度を示すステージのほかに「肝機能がどれだけ保たれているか」という「肝予備能」「肝障害度」も治療方針を決める上で重要な情報です。

 

肝臓がんのステージ

肝臓がんのステージ(病期)は、がんの個数・大きさ・広がりにより、下記のように分類されます。

 

1 腫瘍が一つに限られる

2 腫瘍の大きさが2cm以下

3 脈管(門脈、静脈、胆管)に広がっていない

 

Ⅰ期:上記の3項目が全て合致

Ⅱ期:2項目が合致

Ⅲ期:1項目が合致

Ⅳ A期:3項目全てに合致しない。

リンパ節転移はない/またはリンパ節転移はあるか遠隔転移はない。

Ⅳ  B期:3項目全てに合致しない。遠隔転移がみられる。

 

肝障害度分類

肝臓がんの治療法を選択する際、肝障害の程度も考慮されます。

肝障害度分類やChild-Pugh(チャイルド・ピュー)分類が用いられ、どちらも腹水や血液中の肝機能状態等を示す項目の値により、肝障害度A~Cに分類されます。

A→B→Cの順で肝障害の程度が強いことを意味します。

 

1) 肝障害度分類

項 目 肝障害度
A B C
腹水 ない 治療効果あり 治療効果少ない
血清ビリルビン値(mg/dL) 2.0未満 2.0~3.0 3.0超
血清アルブミン値(g/dL) 3.5超 3.0~3.5 3.0未満
ICGR15(%) 15未満 15~40 40超
プロトロンビン活性値(%) 80超 50~80 50未満

 

上記の項目で2項目以上が一致すれば肝障害度に該当します。

2項目以上一致した肝障害度が2カ所以上あると、高い肝障害度に分類されます。

例として、肝障害度Bの項目が3つ一致していても、Cが2つ一致すると「肝障害度C」になります。

 

2) Child-Pugh分類

項 目 点 数
1点 2点 3点
脳症 ない 軽度 ときどき昏睡
腹水 ない 少量 中等量
血清ビリルビン値(mg/dL) 2.0未満 2.0~3.0 3.0超
血清アルブミン値(g/dL) 3.5超 2.8~3.5 2.8未満
プロトロンビン活性値(%) 70超 40~70 40未満

 

上記項目のポイントを加算し、その合計点により分類されます

A: 5~6点
B: 7~9点
C: 10~15点

 

 

2. 肝臓がん ステージ別の5年生存率と予後について

5年生存率とは、がんと診断された人が治療を開始し、5年後に生存している人の割合が日本人全体で5年後に生存している人の割合を表します。

 

肝細胞がんの病期別生存率

病期 症例数(件) 5年相対生存率(%)
1,217 57.2
965 38.8
888 15.7
422 3.6
全症例 3,601 34.9

 

肝臓がんの5年生存率は、全がんの平均よりもすべてのステージで下回っており、平均より予後(病状の見通し)が悪いがんです。また前述したとおり、症状がかなり進行してから発見されるケースが多く、再発率が高いがんのため、生存率が低いといえます。

 

肝臓がんの転移と再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液内に入り、その流れに乗りながらまた違う臓器へと移動し、成長することです。

肝臓がんになると肺、リンパ節、骨などまた別の臓器に転移することも珍しくありません。

手術で全部切除し、局所療法で治癒したようにみえても、その時点ですでにがん細胞が別の臓器に移動している可能性があります。

治療した時点では見つからず、時間が経過し転移として発見されることがあります。

 

再発とは、治療により目に見えるがんが消えた後、再びがんが出現することです。

肝臓がんは、肝炎ウイルス等で肝障害を受けている肝臓に発生するため、治療後も再発する危険性が比較的高いといわれています。

手術で腫瘍を切除しても、残った肝臓に新しい腫瘍が発生する危険性もあります。

 

 

肝臓がんのステージ別症状について

肝臓がんは進行するまで症状が現れず、発見された時にすでにステージⅢ、Ⅳのことも多いです。

初期症状はほぼなく、人によって以下のような症状が現れることがありますが、自覚症状として実感するのは末期になってからです。

 

一般的な初期症状

・疲れやすい
・食欲不振
・微熱
・お腹が張る感じがする
・便秘・下痢など便通異常

 

末期症状(主にステージⅢ、Ⅳ)

・強い黄疸症状(白目の部分が濁ってくる等)
・腹部のしこりや圧迫感、痛みを感じる
・尿が濃くなる
・貧血症状
・むくみや皮下出血
・腹水による腹部膨満感
・意識障害

 

 

肝臓がんのステージ別治療方法

肝臓がんの治療方法は、外科治療、局所療法、塞栓療法を中心に抗がん剤を用いた化学療法を併用することが基本です。

肝臓がんの主な治療法とステージ別の治療法について説明します。

 

肝臓がんの治療方法

1) 肺切除

一般的にがんが肝臓内に留まり、3個以下の場合、肝切除が適応となります。

10cmを超えるような巨大な腫瘍でも切除は可能ですが、黄疸症状や腹水がみられる等、肝機能が著しく低下している場合は肝切除後に肝不全を起こす危険性が高いため、手術以外の治療が選択されます。

 

2) 穿刺局所療法

体の外側から針を刺すことで、がんに対し局所的に治療を行なう療法です。
腫瘍にエタノールを注入する「エタノール注入療法」、マイクロ波、ラジオ波を電極(刺した針)から流すことで発熱した熱で腫瘍を凝固、または壊死させる「マイクロ波凝固壊死療法、ラジオ波焼却療法」などがあります。

肝機能をできるだけ温存しながら治療ができ、肝臓の切除に比べ、体への負担が少ないため、十数年前より普及してきた治療法です。

 

3) 肝動脈塞栓療法

肝動脈塞栓療法は、血管造影検査で使用したカテーテルの先端を肝動脈まで進め、血管を詰まらせるため塞栓物質を注入し、がんに栄養を与えないようにする治療法です。

最近では、抗がん剤と造影剤を混ぜて投与し、その後に塞栓物質を注入する「肝動脈化学塞栓療法」が行なわれるようになりました。

どちらの治療法も、がんの個数に関係なく実施できるので、適応範囲が広く、他の治療法と併用して行われることもあります。

 

4) 肝移植

肝臓の障害度が著しく進み、治療をしてもその効果が見込めない場合や、生命を維持することが難しいと判断された場合、他人の肝臓を移植する肝移植が選択されることがあります。

生体ドナーから肝臓の一部を移植する生体肝移植と、脳死ドナーから肝臓の全て又は一部を提供してもらう脳死肝移植があります。

 

5) 化学療法

肝臓がんの化学療法は、肝動注化学療法(TAI)という血管造影に用いたカテーテルから抗がん剤のみを注入する方法と、全身化学療法があります。

外科手術ができない場合や、集中治療による効果が望めない場合などに実施されます。

 

肝障害度と治療法の選択

肝臓がんの患者さんは、がんと慢性肝疾患を抱えていることが多いためステージと肝機能の状態も考慮した上で選択する必要があります。

大まかな肝臓がんの状態・肝障害度と治療法の選択について以下に示します。

 

肝障害度 腫瘍数 がんの大きさ 治療法

A

B      

1個  

肝切除術

焼却療法(3cm以内)

2, 3個 3cm以内

肝切除術 または

焼却療法

3cm超

肝切除術

塞栓療法

4個以上  

塞栓療法

化学療法

C 1~3個

3cm以内

1個の場合は5cm以内

肝移植(65歳以下)
4個以上   緩和ケア

日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」(金原出版)より

 

ステージ Ⅳ(末期)の治療方法

 

 

一般的に肝臓がんで外科手術ができるのはステージ Ⅲまでとされており、ステージⅣ の末期では抗がん剤による化学療法や放射線治療による緩和ケアが中心となります。

 

放射線治療は、がんによる痛みの緩和や血管に広がったがんへの治療目的に行われますが、正常な肝細胞にまで悪影響を与えるといわれていました。

 

しかし、近年では陽子線や重粒子線など、範囲を絞りこんで病巣に照射できる放射線治療が有効であることが知られるようになりました。

 

また、IMRT(強度変調放射線治療)というコンピュータにより放射線を腫瘍のみに集中して照射する照射技術で生まれています。

 

いずれも副作用が少なく、腫瘍を確実に抑制できることが期待できますが、高度先進医療のため医療費は高額になります。

 

免疫療法という選択肢について

がんの三大標準治療である外科手術、放射線治療、化学療法に続く第四の治療法として、免疫療法が注目を集めています。

本来持っている人体の免疫機能を高めることにより、がんの治癒を目指します。

免疫細胞療法、ワクチン療法、免疫を上げるという広い意味で食事療法や漢方療法等があります。

標準治療と併用することにより、QOL(生活の質)を向上させつつ、がん治癒をより効果的に行なう目的で選択することもできます。

 

1) 予防のための免疫療法

免疫反応は異物である抗原を認識することで、それを排除する反応です。がん細胞も特有の抗原を持っていると考えられています。

免疫療法の中の「がんワクチン療法」には、ワクチンを接種し、免疫細胞にがんの抗原情報を伝達する働きを持つ細胞(樹状細胞など)に認識させることで免疫系を活性化する療法があります。

 

この療法では、微小ながん細胞も免疫細胞が発見することができるので、術後の再発予防に適した治療法です。

免疫機能を高めることで、術後の経過を良くすることにもつながり、抗がん剤治療による吐き気や食欲不振、倦怠感などを軽減させる効果も期待できます。

 

2) 治療のための免疫療法

がん細胞は全て同じ細胞で構成されているわけではありません。

免疫療法を治療に用いるには、患者さん特有のがん細胞情報を樹状細胞に認識させ、より強力な免疫細胞の力を発揮させる必要があります。

患者さん自身の細胞を採取し体外で培養させ、ワクチンとしてがん細胞に直接注入することにより、効果的にがん細胞を攻撃することができる療法も確立されています。

 

 

肝臓がんの治療後に注意すべきこと

肝臓がんの再発率は非常に高いことで知られ、術後再発率は70%といわれています。

そのほとんどが肝臓内の再発であり、手術可能であれば再度、肝切除が行われますが、肝臓の予備力が充分でなければ手術や治療も難しくなります。

再発を予防するには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

 

定期的な検診

肝臓がんの発生原因のほとんどが肝炎ウイルスであり、ウイルスを全て根絶させることができない場合があります。

肝臓の構造上、がん細胞が肝臓内の血液内を巡り転移しやすいことも再発しやすい理由の一つです。

よって再発を防ぐには、定期的に医療機関を受診し血液検査や超音波検査を受けることが必要です。

 

肝炎ウイルス除去の治療

肝臓がんの治療後、引き続き肝炎ウイルスの除去をするための治療に努めることも重要です。

B型肝炎とC型肝炎では治療薬が異なります。

 

ウイルスの治療薬は近年著しく進歩し、現在は副作用の少ないインターフェロンフリー療法も厚生労働省の医療費助成対象となっていますので、積極的に受診しましょう。

 

ストレスのない健康的な生活

 

 

ストレスが免疫力の低下につながることは明らかです。

退院後すぐに仕事に復帰し、ストレスを溜めるような生活や暴飲暴食を繰り返せば、再発の可能性が高くなります。

できるだけ無理をしない生活とバランスの良い食生活を心がけてください。

 

免疫療法による再発の予防

病巣の周囲には、目に見えないがん細胞が散らばっている危険性があり、特にステージが高い場合、腫瘍を手術で切除しても取り切れずに再発することがあります。

そのような場合でも、前述した免疫療法により体内の免疫力を積極的に高めておくことで、再発を防ぐことが大いに期待できます。

 

 

まとめ

肝臓がんについて、生存率やステージ別の治療法、再発防止などについて詳しく説明しました 。

肝臓がんは、その前段階として慢性肝炎や肝硬変を経ることがほとんどです。

自覚症状は食欲不振や腹痛など、体調不良と片付けてしまうことや他の病気でも起こり得る症状が多いです。

よって、肝臓がんを早期発見するためには肝炎ウイルスの検査を受け、もし感染していたら治療を行ないながら、慎重に経過を観察する必要があります。

治療後の5年生存率を高めるためには、早期発見・早期治療しかないのです。

 

 

出展:
国立がん研究センター がん情報サービス
http://ganjoho.jp/public/cancer/liver/
http://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html
http://ganjoho.jp/public/cancer/liver/diagnosis.html
http://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment_option.html

国立がん研究センター 東病院
http://www.ncc.go.jp/jp/ncce/consultation/pbt.html

 

国立病院機構 大阪医療センター
http://www.onh.go.jp/seisaku/cancer/kakusyu/kanzos.html

 

全がん協加盟施設の生存率共同調査 全がん協生存率(2016年2月集計)
https://kapweb.chiba-cancer-registry.org/

 

慶應義塾大学医学部 放射線科学教室
http://rad.med.keio.ac.jp/rx/medical/cont04/

 

全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g4/cat450/sb4502/p024

 

がん研有明病院
http://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/liver_i/002.html#01

 

日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」(金原出版)
日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 2009年6月(第5版補訂版)」(金原出版)

医療ライター。

がんの免疫療法完全ガイド

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