大腸がんが進行すると、腸壁の深くまでがん細胞が浸潤(しんじゅん)し、やがて腹膜への転移を起します。腹膜の機能を低下するだけでなく、転移したがん細胞から水が分泌され、腹水が溜まる事があります。こちらのページでは、大腸がんと腹水について紹介していきます。
目次
大腸について
大腸は、消化管のひとつで、盲腸から始まり、上行結腸・横行結腸・下行結腸・S字結腸を経て、直腸・肛門までの総称です。
国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/
大腸がんは、日本人ではS状結腸と直腸に発生しやすいといわれています。
大腸がんは主に、粘膜表面から発生し、進行すると大腸の壁に次第に深く侵入していき、リンパ節や肝臓、肺などの他の臓器に転移します。
粘膜下層でとどまったがんを早期がん、筋層まで広がったがんを進行がんと呼びます。
大腸がんの95%以上は「腺がん」に分類されます。
大腸のはたらき
そのはたらきは、小腸で栄養分が吸収された後のドロドロした食べ物のカスから水分を吸収して、固形の便にすることです。
大腸は長さ1.5~2メートルほどの臓器です。
小腸の太さが五百円硬貨と同じぐらいなのに対し、大腸はその2~3倍ほどの太さがあります。
片方の端は小腸とつながり、もう片方の端は肛門へと続いています。
大腸は、小腸に近い順から「結腸」と「直腸」に分けられます。
さらに結腸は「盲腸」「上行結腸」「横行結腸」「下行結腸」「S状結腸」に、直腸は「直腸S状部」「直腸」に分けられます。
大腸がん情報サイト https://www.daichougan.info/outline/mechanism.html
大腸がんについて
大腸がんは、早期では自覚症状が無く、また便秘と下痢のくりかえしや血便といった痔などと似た症状になることから症状を軽視してしまい、見逃してしまうことが少なくありません。
大腸がんは、がんが大腸組織のどの深さまで発育しているのか、リンパ節への転移の有無、他の臓器への転移の有無で病期をステージ分類しており、それぞれの進行度に合わせて治療法を選択します。
早期であれば、生存率は非常に高いのですが、症状が進むと生存率は下がります。
大腸がん情報サイトhttp://www.daichougan.info/discover/stage.html
大腸がんと腹水
腹膜は腹腔の内面と、腹腔内に突出する内臓の表面をおおう漿膜(しょうまく)で、壁側腹膜とこれが反転して内臓表面をおおう臓側腹膜に分れる。胃、腸、肝臓、胆嚢、膵臓などの腹腔に存在する臓器の薄い膜が臓側腹膜です。総面積はほぼ体表面積に等しく、非常に大きな表面積を持つ事が知られています。腹膜は半透膜になっており、細い血管が網の目状に無数に走っています。
腹膜の機能には吸収、濾出(ろしゅつ)ならびに癒着作用があります。吸収作用の能率はきわめて高く、12~30時間で体重と同量の液体を吸収する事ができると言われています。正常な状態では腹膜液はごく少量ですが、肝静脈系のうっ滞があると大量の腹水がたまります。腹膜に炎症が起こると線維素を出し癒着を起して、炎症の拡大を防止する働きがあります。
旭川医科大学人泌尿器外科学講座http://www。asahikawa-med。ac。jp/dept/mc/urol/figure。html
大腸がんが進行し、腸壁を突き破り、がん細胞が腹膜まで達してしまうと、腹膜の広い範囲に種を蒔いたようにがんが転移します。その状態を腹膜播種(はしゅ)といい、がんが転移したした状態です。転移したがんは水を出すので、そのせいで腹膜が溜まってきます。正常な状態であれば腹膜の吸収・濾出機能により、腹水の量はコントロールできるのですが、がんが転移した部分の腹膜はその機能が低下しているため、腹水がどんどん溜まってしまうという状態になってしまいます。
大腸がんで腹水が溜まるという症状がある場合は、かなりがんが進行した状態といえるでしょう。
大腸がんが進行した場合の治療法
他臓器への転移が認められるような進行がん、または末期のがんにおいての治療法は、全身にがんがまわっていると考えられるため、主に全身療法である抗がん剤治療が選択されます。
また、同様に全身療法の一つである免疫療法にも注目が集まっています。
抗がん剤療法
大腸がんの抗がん剤療法では、さまざまな抗がん剤が用いられます。また、いくつかの抗がん剤を組み合わせて使用することもあります。また最近、分子標的薬といわれる新しいタイプの抗がん剤が使用可能となりました。
手術が出来ない患者様や、再発し切除不可能な大腸がんの患者様に対しては、がんが進行するスピードを抑え延命する事を目的に抗がん剤治療が行われます。他の臓器に転移している場合も、大腸がんとして治療を行います。
切除不能な大腸がんに対する化学療法では、いくつかの抗がん剤を組み合わせた治療を行います。様々な抗がん剤を組み合わせる事で、効果が高まります。使用中の抗がん剤で副作用が強くなった時や、がん細胞が大きくなったのが確認された場合は、使用を中止し、別の抗がん剤に切り替えます。
従来の抗がん剤は細胞の増殖に作用するため、細胞増殖が活発な正常な細胞まで攻撃してしまうという特徴があります。それに対し、分子標的薬はがんの増殖などにかかわる特定の分子だけを狙い撃ちにして、その働きを抑えるのが特徴で、ほかの抗がん剤と併用することで効果が高まることが期待できます。そのため、副作用も従来の抗がん剤にように髪の毛や赤血球や白血球などの血球を作る骨髄などへの影響が少なく、また食欲不振、吐き気、味覚障害なども起こりにくいとされています。
ただし、分子標的薬の種類によっては、従来の抗がん剤とは異なる副作用が起こることもあるので、注意が必要です。
免疫療法
免疫療法も抗がん剤療法と同じ全身療法のひとつです。
免疫とは、体の中に侵入した異物を排除する機能で、主に免疫細胞群と言われる白血球がその役目を担っています。特に腸菅内には身体全体の約70%にあたる免疫細胞が存在すると言われ、腸管内の健康保持を行っています。
免疫療法は患者様自身の免疫力を利用した治療法なので、体力があり免疫の働きも衰えていない病気の早い段階で使うと、より高い効果をあげることも知られています。
手術・抗がん剤・放射線といった従来の治療と組み合わせて同時に行うと、それぞれの効果をさらに発揮する場合もあります。
特に抗がん剤治療においては、副作用として骨髄毒性があり、免疫細胞にも作用してしまう事があります。結果として免疫力の低下から敗血症や肺炎といった致命的な病気の要因になる場合もあるため、免疫療法を併用することで副作用を軽減し抗がん剤治療を途中で中止することなく進めることができるため、結果として抗がん剤の効果もより良く得られるのです。
大腸がんの統計
大腸がんは、男女合計でみると全がん患者中で、罹患率がトップのがんです。
死亡率で見ても上位に入っていますが、肺がんに比べて死亡率は低いため、順位は第2位となります。
- がん罹患数予測(2018年)
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- がん死亡数予測(2018年)
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国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html
まとめ
大腸がんは患者数が多く死亡数も多いがんですが、早期発見においては治療成績の良いがんでもあります。しかしながら進行して他臓器への転移があるような状態ですと、治療が困難になってきます。早期発見のために、年に一度は大腸がん検診を受診するようにしましょう。
岩崎どど(イワサキ・ドド)
医療ライター・臨床検査技師。
総合病院の臨床検査科勤務時代には、病棟を回り心電図検査や採血などをしておりました。
患者様との会話の中から、病気の苦しみや様々な悩みなどを見聞きした経験を生かし、
がんに関する記事を寄稿しております。また、がん患者を持つ家族としての立場から、
「今」知りたい最新のがん治療について特にお伝えしていきます。
HP 「どどの家」https://dodoiwasaki.com/
国立がん研究センター がん情報サービス
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