心疾患・脳血管疾患と並び、日本人の死因に多いのは「悪性新生物」と呼ばれるがんです。
発症の多い部位としては、胃・肺・大腸です。新しい治療法が日々研究されていますが、現段階ではがんを根治させる治療法は開発されていません。
そのため、発見が遅れれば治療は困難となり、余命を宣告されることもあります。余命宣告をどう受け止めるかは、患者様一人ひとり違います。
どんな思いで過ごしていくのか?余命宣告は必要なのか?
大腸がんを通して考えてみましょう。
目次
大腸がんについて
大腸がんのステージや治療などについて確認しておきましょう。
大腸は、上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸→肛門と続いており、体内でいらなくなった排泄物を貯蔵して、排便させる機能があります。
大腸がんは、大腸全体ががんになるわけではなく、上記の部位のいずれかに発症をします。
症状は下記の通りです。
● 便秘
● 血便
● 下血
● 下痢
● 腹痛
● 貧血
日頃から便秘の人や女性で貧血の人だと、がんの自覚症状として認識が薄くなり、発見が遅れる原因となります。
ステージ(病期)について
最初の大腸がん確定診断の時に、ステージ(病期)が決められます。
それぞれのがんで、ステージの分類が少し異なりますが、がんの大きさ・広がり・転移の有無が分かります。
大腸がんは、ステージ0〜4期に分けられています。
京都大学医学部付属病院消化管外科:http://gisurg.kuhp.kyoto-u.ac.jp/clinic-contents/%E5%A4%A7%E8%85%B8%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%AE%E8%A7%A3%E8%AA%AC/123
ステージの解説
・ステージ0期・1期
早期の大腸がんで浸潤も転移もありません。
・ステージ2期
進行している大腸がんです。
転移はありませんが、がんは漿膜(しょうまく)に達するまでに広がっています。
・ステージ3a期
リンパ節転移が3個以下あります。浸潤もリンパ管やリンパ節に達しています。
・ステージ3b期
リンパ節転移が4個以上あります。浸潤もステージ3a期より深刻です。
・ステージ4期
他臓器への転移があります。大腸がんの場合は、肺や肝臓へ転移します。
リンパ管・リンパ節を通り転移していくので、浸潤も同じように広がっていきます。
治療について
大腸がんは、手術にてがんを取り除きます。
早期がんとして発見された場合は、開腹せずに内視鏡にてがんを取り除くことができます。
がんが進行しており、転移がある場合には手術だけでは対応しきれないので、放射線治療や化学療法(抗がん剤)と併用または単独で治療を行います。
基本的には、ステージ別によって手術を行うのか決めますが、患者様の
全身状態・がんのある位置などによっては、治療内容が変更されることがあります。
再発・生存率について
東京慈恵会医科大学 外科学講座:http://www.jikeisurgery.jp/diseasegroup/lower-dig/colrect/colon-ca/treat_adv.html
残念ながら、がんの根治治療はありませんので手術でがん細胞が取り切れない場合には、再発するリスクはあります。これはどのステージであっても同じです。
生存率については、転移や浸潤が確認されるステージ4期では生存率が低くなります。
再発も早く見つかれば、治療も可能です。
大腸がんを一度発症したら、定期的な検査は続けていきましょう。
余命とは
一度、がんを発症すればどんな治療をしても再発のリスクはありますし、症状によっては治療が困難な場合があります。
医師の説明の中で「余命」という言葉が出てくることもあるでしょう。
私たちは、「余命=死」というイメージで捉えがちですが、必ずしもそうではない場合もあります。
余命について考えてみましょう。
余命は目安だと思うこと
そもそも私たち人間には、寿命という命のリミットがあります。その時はいつ訪れるのか、誰にも分かりません。
余命宣告も同じです。
医師が告げる余命とは、確かな定義があるわけではありません。
これまでの発症例・治療内容・手術件数・生存率などデータに基づいて考えられています。つまり必ずしも伝えられた通りになるとは限らないことを理解しておきましょう。
今後の治療・症状などを理解する
余命については、必ずしも患者様やご家族に告げられるものではありません。
例えば、「余命2年です。」と言われたのに、それよりも早く亡くなってしまうこともあります。残されたご家族としては、治療に問題があったのでは?と疑問を抱くこともあり、不信感へと変わります。
また、患者様本人も告げられた月日になれば、落ち込むことが考えられ体調にも影響が出ます。
こうした背景を考えて、あえて余命を伝えることをやめている医師もいます。
しかし、それでも余命を正確に知りたいという患者様やご家族はいます。
そんな時は、これから起こりうる症状や治療、そして再発について医師の話を聞いてください。情報が交錯する中、何が正しい情報なのか分からなくなり不安を煽ります。
まずは、情報を整理しましょう。
● どんな治療ができるのか
● 治療を進めていく上で、ポイントとなる所はどこか
● どれくらい治療を続けるのか(できるのか)
● 再発について
分からない時は何度でも聞きましょう。医師との信頼関係がなければ治療は進められません。
話すこと、知ることで安心したら、余命について執着することも軽減されます。
大事なのは自分の意思を伝えること
大腸がんでも、ステージ4期となれば余命についての説明を受けることがあります。
特に、肝転移をしている場合は、治療困難なケースが多いとされています。
● 患者様の全身状態は良好なのか
● 肝臓へ転移したがん細胞は取り除けるのか
手術することが必ずしも良い結果を招くとは限りません。その他の治療法も同様です。
余命のこと、治療のことを理解した上で大事なのは、患者様本人がどうしたいのかということです。
本人の意志が決まれば、ご家族・医師や医療スタッフが力になってくれます。大事なことから目をそらさないようにしましょう。
免疫治療について
大腸がんのステージ4期は転移・浸潤があり深刻ですが、決して末期がんとは言い切れません。末期がんとは、がんが進行していき治療ができない状態であることをいいます。
末期がんの状態になり、余命を伝える医師もいます。
しかし、その余命はデータによるもので、決まったことではありません。
余命といわれた月日を過ぎても、生きていらっしゃる患者様はいます。
これは奇跡ではなく、末期がんの患者でも治療できるチャンスがあるからです。それが免疫療法です。
免疫療法は、人間が持つ免疫細胞を活発にさせて体内で増殖した、がん細胞を攻撃してくれる治療法です。
治療のできる体へ
手術はできなくても、放射線治療や化学療法(抗がん剤)の治療には体力が必要ですが、末期がんの患者様は、がんの悪化により全身状態が悪く治療を続けるだけの体力がありません。食欲も落ちています。
しかし、免疫療法を併用して続けていくと、患者様の体力が戻ってきます。これは免疫細胞を活性化させることで、免疫力も徐々に回復してくるからです。
治療に耐えられるだけの体力があれば、継続が必要な治療も可能となります。
目に見えないがん細胞への治療
がんの根治治療が不可能とされている原因の一つに、がん細胞を取り除ききれないことが挙げられます。
手術で全てのがんを取り除けたように見えても、まだ目に見えないがん細胞が体内には残っています。
この目に見えないがん細胞が絶対にないとはいえないので、がんの治療が終わった後も検査を続けるのです。
免疫療法では、免疫細胞にがんだと認識させ、がん細胞のみを攻撃するように指示を与えます。そのため、人間の目には見えないがん細胞にも攻撃が可能となります。
併用する放射線治療や化学療法(抗がん剤)の成果に期待できます。
第4の治療法として確立
末期がんといわれても、やはり治療を継続して元気になりたいと願います。
免疫療法は、そんなお手伝いのできる治療法です。
これまでは、がんの標準治療として手術・放射線治療・化学療法(抗がん剤)の3つが挙げられていますが、免疫療法は第4の治療法として確立されています。
治療に取り入れることで、末期がんから回復された患者もいます。
さらに治療後続けることで、再発のリスクを下げることができます。
一度、医師に話を聞いて免疫療法の治療として選択できるのか確認してください。
まとめ
いかがでしたか?
大腸がんは、私たちの食生活の変化や運動不足であることも発症する原因だといわれています。
定期的な検診を心がけ早期発見に努めましょう。
また、余命についても伝えられる月日が全てではないことが分かりました。
大事なことは、自分の意思とこれからのことです。
余命にこだわり過ぎずに、できることにチャレンジしてください。
出典
京都大学医学部付属病院消化管外科:http://gisurg.kuhp.kyoto-u.ac.jp/clinic-contents/%E5%A4%A7%E8%85%B8%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%AE%E8%A7%A3%E8%AA%AC/123
東京慈恵会医科大学 外科学講座:http://www.jikeisurgery.jp/diseasegroup/lower-dig/colrect/colon-ca/treat_adv.html

総合病院・クリニック・調剤薬局にて医療事務員として10年以上勤務したのち、ライターへと転身。
現場で学んだ知識と経験を元に、医療に関する取材・執筆活動を行う。
興味のあるテーマは、がん医療・先進医療。