三大疾病の中の悪性新生物「がん」は、全死亡原因の約3割にも及び、死亡原因第1位となっています。しかし、死亡率は1995年をピークに、年々減少傾向にあります。
これは、新しい治療法の確立に加え、早期発見を可能にする検診が広まってきたことが背景にあると考えられます。
国立がんセンターがん情報サービス https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/annual.html
一方、がんの罹患率は年々上昇傾向にあります。
高齢化による患者数の増加も関係していますが、検査方法の発達により、今まで見逃していた、がんも検査で発見できるようになってきている事も関係しているのではないでしょうか。
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このように、がんは見逃せない病気の一つとして、非常に関心の高いものになってきているのでは無いでしょうか。
がんに罹患すると、治療が始まる前や治療中に医師から「あなたのがんのステージは・・・」という話しが出る事が多いと思います。
このステージとはなんなのでしょうか?なんの為に決められるのか?
その辺りをご紹介していきます。
目次
ステージ分類を決めるのはなぜか?
体内には200以上の細胞の種類があると言われているので、その数だけがんの種類も存在しています。
多種多様な特徴を持つがんですが、似たような症状・発生部位などのデータを集積し、科学的に検討・検証することで、特徴を掴み、治療に役立てているのです。
そのため、ステージ分類を決定することにより、効果的な治療法の選択ができるようになってきました。
過去にがんに罹患した患者様のデータが、現在の治療に生かされ、現在のデータが未来の治療法を進化させていくのです。
ステージ分類だけで、治療法を選択するわけではありませんが、一つの指標として確立されています。
がんのステージ分類
ステージ分類とは、がんの進行状況を表すものです。
ステージ分類には様々な基準がありますが、国際対がん連合の「TNM分類」が広く活用されている分類になります。
TNM分類の病期は以下の3つの要素を組み合わせて決められます。
T(tumor)
腫瘍(原発巣)の大きさと進展度。T1〜4までの4段階に分けます。
N(nodes)
所属リンパ節への転移状況。転移のないものをN0とし、第一次リンパ節、第二次リンパ節への転移、 周囲への浸潤の有無からN3までの段階に分けます。
M(metastasis)
遠隔転移の有無。遠隔転移がなければM0、あればM1とします。
この3つの要素によりステージを0~IV期の5つに分類します。
0期に近いほどがんが小さく早期の状態、IV期に近いほどがんが広がっている状態になります。
このTNM分類は、様々な検査を実施し、その結果と患者様の年齢や性別、その時の病状などを加味し て決めるものです。
免疫療法コンシェルジュhttp://wellbeinglink.com/treatment-map/cancer/standardtherapy/
がんになったら読むマガジン http://ganmaga.jp/archives/642
ステージ分類のメリット
① 今後の見通しを立てる
ステージを知る事で、どの程度の進行度なのかの目安が解ります。
② 治療の実績を知る
同じがんの患者様がどのような治療を行い、その結果や効果の予測が出来ます。そして予後はどうだったのか、などの実績を知ることができます。
③ 治療の効果を予測する
医師からの説明を受け、治療についての提案があった時に、ある程度の治療効果の予測が出来る様になります。
④ 治療法の選択に役立てる
現在がん治療には、様々な方法があり、その中で有効な治療法を選択する事ができます。
また、その治療法の副作用がどのようなものなのか、どの程度なのかを知る事が出来ます。
⑤ 病状の比較をする
同じがんに罹患した患者様の治療法やその後の経過について、自分に当てはまるかどうか、確認する事が出来ます。
このように、ステージを決める事によって、今後の予測を行い治療の選択の目安にしたり、治療効果がある程度予想出来るようになります。
しかし、あくまでもステージは目安です。患者様によって、病状は違いますので、同じステージと言っても、共通点が少ない場合もあります。
何か不安な事がありましたら、必ず主治医に相談するようにしましょう。
ステージ分類と5年生存率
ステージ分類が上がると、生存率は一般的に落ちて行きますが、「早期発見」と「早期の治療開始」によって、がんの大半が治癒できるまでになっています。
発生部位によって生存率は変化しますが、ステージⅠで発見された場合は、大半のがんでは生存率が90%以上になっています。
西台クリニック http://www.pet-ct-dock.com/html/pet/effect.html
不治の病と言われているがんですが、近年、新しい検査方法の発達により早期発見が出来る様になってきました。
そして、治療法も進化している為、発生部位に関わらず治療成績は年々良好になっています。
Find.Med https://www.findmed.jp/topics/cancer/1608
ステージ分類と治療法
ステージ分類は、治療法の選択を行う時のひとつの指標とされています。
ステージ分類ごとの治療法をまとめた診療ガイドラインの中の流れをフローチャートにして解りやすく示しているものもあります。
治療の流れを理解しやすいので、医師の説明の時や、入院や手術の際に資料として配布される事もあるかと思います。
例として大腸がんの治療フローチャートを紹介します。
0期やⅠ期の場合は、内視鏡治療にてがん細胞を取り除くことが可能です。
患者様に負担が少ないので、内視鏡治療が多く使われています。
Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期の場合は、手術療法が選択され、手術後に病理検査や病理診断を行い、必要であれば薬物治療や放射線治療を追加します。
Ⅳ期は、がんが大腸だけでなく、遠隔転移や周辺組織への浸潤がみられる状態なので、局所療法である手術療法や放射線治療では対応できない為、全身療法である抗がん剤治療をメインに治療を進めて行きます。
大きくなり、周辺臓器を圧迫していたり、腸閉塞を起こしているような場合には、腫瘍部分に放射線を当てて、小さくする事で症状の緩和を行う事もあります。
このように、ステージ分類によって治療法は大きく変わってくるのです。
国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/treatment.html
ステージ分類と免疫療法
ステージ分類に合わせた治療法の選択について、説明してきました。
ステージ分類に合わせた治療法は、言い換えると、そのステージにおいて最も効果のある治療法なのです。しかし、ステージに関係ないがんの治療法が存在するのです。
がんの標準治療法である手術・放射線・抗がん剤治療に次いで第四の治療法と言われているのが、「免疫療法」です。
免疫療法は、人間の体内に自然に存在する免疫機能を利用して行われる治療法として注目されています。
がんの発生には免疫機能の異常が深く関わっている事が解明されて来ており、治療法の研究が盛んにされている分野です。
特徴としては、抗がん剤療法と同様に全身療法である事で、進行したがんや、再発防止としての効果が期待されているところと、正常な細胞まで攻撃してしまう抗がん剤療法とは違い、副作用が比較的少ない事です。
また、他の治療と併用する事で治療効果を上げています。
特に抗がん剤の副作用である骨髄抑制により、体内の免疫細胞にも抗がん剤が作用してしまう事があります。
結果として免疫力の低下から敗血症や肺炎といった致命的な病気の要因になる場合もあるため、免疫療法を併用することで副作用を軽減し抗がん剤治療を途中で中止することなく進めることができるのです。
免疫機構に着眼した治療法として、がん細胞が免疫機構を働かせない為の物質を出して免疫を抑制する事を抑える「免疫チェックポイント阻害剤」、免疫細胞を活性化する「免疫賦活剤」などがあります。
まとめ
がんのステージは、治療法や今後の見通しを決める目安として広く活用されています。
忘れてはならないのは、あくまでもステージ分類は「おおまかな目安」であるという事です。
たとえ、ステージ分類が高くても、治る見込みがない訳ではありません。様々な治療法が開発されている現在では、なんの治療法も無いという様な事は少なくなりました。
また、逆にステージ分類が小さいからといって、病期を軽視しないようにしましょう。がんについて「知る」事を、戦う力に変えて行きましょう。
また、がん予防の為に大切になるのが、「食事・運動・睡眠」です。栄養バランスの良い食事を取り、適度に運動し、質の良い睡眠を取ることを心がけましょう。
国立がん研究センター がん情報サービス
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岩崎どど(イワサキ・ドド)
医療ライター・臨床検査技師。
総合病院の臨床検査科勤務時代には、病棟を回り心電図検査や採血などをしておりました。
患者様との会話の中から、病気の苦しみや様々な悩みなどを見聞きした経験を生かし、
がんに関する記事を寄稿しております。また、がん患者を持つ家族としての立場から、
「今」知りたい最新のがん治療について特にお伝えしていきます。
HP 「どどの家」https://dodoiwasaki.com/

医療ライター・臨床検査技師。
医療の現場での経験を生かして、がん患者を抱える家族として、
がんに関する記事を寄稿しております。