直腸がんはどこに転移しやすい?

ここでは直腸がんの中の「直腸がんの転移」についてご紹介します。

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液に乗って別の臓器に到達し、そこで成長することを言います。がんを手術で全部切除できたようにみえても、その時点ですでにがん細胞が別の臓器に転移している可能性があり、手術した時点では見つけられなくても、時間がたってから再発することもあります。
直腸がんは比較的治療成績の良いがんの種類で、粘膜から先に進んでいない状態であればほとんどが完治可能と言われています。しかし直腸がんを含む大腸がんの症状は分かりにくく危機感を持てず検診が遅れるケースが多いようです。

ステージ3で見つかったとしても治癒率の高いがんですが、ステージ3では治療に負担がかかるのも事実です。早期に発見できればそれに越したことはないでしょう。

直腸がんを含む大腸がんでは、肝臓、肺、脳への転移が多く見られますのでそれぞれの部位に転移した場合についてもご紹介します。

 

直腸がん

直腸とはどのような機能を持つ?

大腸は食物が消化吸収された残りの腸内容物をため、水分を吸収して大便にする器官です。大腸菌や乳酸菌などの100種類以上の腸内細菌が存在しており、食物繊維の分解や感染予防の働きなどをしています。直腸は便の貯留と排出に非常に重要な役割を担っています。

 

大腸は主に盲腸、結腸、直腸の3つに分けられます。

盲腸は特に大きな働きはしていませんが、結腸は水分やナトリウムを吸収したり、便を作ります。また、小腸で消化しきれなかった炭水化物やたんぱく質を分解、吸収し便を直腸に流します。

直腸は便を一時的に滞留させる働きをします。直腸に便がたまると便意を感じます。それに応じた腸、腹部などの一部の筋肉と肛門の筋肉の動きによって便が排出されます。

直腸は大腸の最下部にあり、長さは15センチ~20センチで、下部が肛門になっています。

 

大腸がんと直腸がんとは

大腸がんにかかる割合は40歳代から増加し始め、50歳代で加速され、高齢になるほど高くなります。かかる割合は男性と女性では6対4と男性の方がやや多く、死亡率も男性の方が高いと言われています。

大腸がんができやすいのは直腸とS状結腸で、約7割を占めています。直腸は大腸全体の約1割とシェアは少ないものの、大腸がん全体の罹患率のうち半分が直腸がんと言われています。

直腸がんは便の中に出血(鮮血)が混じっていたりすることでよく発見されます。また便が細くなること、残便感も主な症状で、これは直腸内が狭くなっていることが原因です。痔からの出血と捉えられることも多いため、肛門からの出血が見られた場合は自己判断は危険なので診察を受けることが重要です。

血便の他に、便秘、下痢、腹痛、食欲の変化、貧血などの症状が見られる場合も直腸がんが疑われます。

 

直腸がんの転移

直腸がんが転移した場合、一般的には治療法のメインは手術ですが、身体的に手術が負担になったり命に関わる場合は放射線治療や抗がん剤での治療の組み合わせとなったり、手術で切除できる部分を取った後放射線療法、抗がん剤を使用します。

転移した部位によって選択される治療法が変わってきますので、ご紹介していきます。

 

肝臓に転移した場合

大腸がんが転移する可能性が最も高いのが肝臓です。

 

治療法

下記の3つの治療法を組み合わせることが主流となっています。

・肝切除手術:肝臓のどの部分に転移巣があっていくつあるのか、転移巣がすべて切除できるか、肝臓以外に転移している臓器があるか、術後の生活に支障がないだけの肝臓が残せるか、などを判断基準にしていきます。手術で転移巣が完全に取りきれた場合約4割の患者様が完治する可能性が高いです。

 

・抗がん剤:手術で全て取りきれることができない場合に用いられます。

抗がん剤は基本は内服、点滴ですが、肝転移の場合肝動脈という太い血管に軟らかなカテーテルを入れ、そこから肝臓へ抗がん剤を注入する肝動注療法という方法もあります。

 

・熱凝固療法:手術で取り去ることが厳しく、転移巣が小さい場合に用いられます。病巣の正確な位置を確かめ特殊な針を刺して先端から電磁波を発生させます。この電磁波によって固めて焼いてしまう療法です。

 

肺がんに転移した場合

・手術:大腸がんと診断された人の約2%に肺転移があり、大腸がんの手術を受けた人の約5%の確率で肺に再発がみられます。肝転移と同様に手術で転移巣が完全に取りきれた場合約4割の患者様が完治する可能性が高いです。

 

肺に転移がみられた場合も、どの部分に転移巣があっていくつあるのか、転移巣がすべて切除できるか、肺以外に転移している臓器があるか、術後の生活に支障がないだけの肺が残せるか、などを判断基準にしていきます。手術が可能と判断された場合、肺を切除する手術が行われます。

 

・胸腔鏡手術:肺の手術は開く開胸手術でしたが、最近では胸に小さな穴を数カ所開けて、そこから内視鏡と手術器具を入れ、モニターの映像を見ながら手術を行う方法が取られるようになりました。傷を大きくせずにすむため、患者様の負担が少なく術後の回復も早いというメリットがあります。

 

脳転移の場合

頻度は低いですが脳へ転移することもまれにあります。転移した脳の場所にもよりますが、うまくしゃべれない、ふらつき、ものが二重に見える、けいれん、麻痺などの症状が起こります。脳が腫れると頭痛、嘔吐、意識障害を起こすこともあります。大腸がんの患者様さんに、これらの症状が表れたときは、脳転移を起こしている可能性があります。

 

・ガンマ線:ガンマ線とは放射線治療のことです。脳には抗がん剤が届かないので、脳転移の多くはこの治療法が用いられます。治療効果は高く、治療後3カ月以内に約8割の症状改善が望めます。ですが、手や足の麻痺があるなど常生活に支障がある場合は病状に応じて手術が選択されます。

 

骨転移の場合

転移の中では1~2%の頻度で起こりケースとしては少ないのですが、治療が難しいと言われています。

骨に転移すると、次第に骨が溶けて破壊され、崩れて周りの組織を圧迫します。その結果、麻痺、しびれ、痛みなどの症状が表れ、転移した骨は骨折しやすく骨折をきっかけに転移が見つかることもあります。

大腸がんの場合、骨に転移しているということは肺などの他の臓器にも転移してしまっている場合がほとんどと言われます。

 

転移性の骨がんには主に抗がん剤が選択されますが、骨転移に対しては、痛みを緩和するための治療が行われます。

・放射線治療:骨に放射線を当てる、体の中から放射線治療ができる薬を注射するなどが可能です。

・痛みの緩和:オキシコドン、モルヒネ、フェンタニルなどの薬剤を使用し痛みのコントロールを行います。

 

 

早期発見のために-  直腸がんの症状

直腸がんの症状には下記のようなものがあります。初期では気づきにくいものばかりですが、転移すると治療が大変になってきます。早期発見できるように何か下記のような異変を感じたら検診を受けてみましょう。

 

①  便に粘液や血が混じる:痔でも出血はありますが、痔の出血は便の周りに付着します。便を出した直後も血液がぽたぽたと落ち、血の色も鮮血です。排便時に痛みもあるのが痔の特徴です。

一方大腸がんの場合、便に血が混ざっていても排便時に痛みがなかったり、便と血液が混ざって黒っぽく見えたりという特徴があります。黒っぽい血であれば痔と自己判断せず検査を受けるべきでしょう。

下痢や便秘が続く:今まで1日1回便が出ていたのに、下痢をしやすくなった、便秘になりやすくなった、などの変化がある状態です。

②  お腹にしこりがある:がんがある程度大きくなると、お腹に触って分かるくらいのしこりを感じます。

③  残便感がある、便意があるが出ない:これらの症状は直腸がんの一つの特徴で、すっきり出ないために便が残っているような感じがします。

 

 

免疫療法

直腸がんでは3大療法のうちほぼ手術が適用されると説明しましたが、術後の回復を早めたり、再発防止、転移の防止のために免疫療法も効果的であると言われています。放射線療法や抗がん剤も再発防止に使われますが、免疫療法を補助的に使用するという方法もあります。なぜなら免疫療法は人間の体に本来備わっている病気を防ぐ力を最大限に引き出していく治療法で、放射線療法や抗がん剤と比べ副作用がほとんどないためです。

特に抗がん剤は副作用が一番大きく、副作用の辛さだけでなくDNAも破壊してしまうこともあり、時にはがんの治療において悪循環を引き起こしてしまうことになってしまいます。

3大療法と肩を並べるほど浸透はしていませんが、一部の免疫療法は保険適用も進んでおり、注目されている治療法です。

 

さいごに

もし直腸がんにかかってしまったら再発や転移の予防のために毎日の食事や運動の習慣を変えたり、免疫療法なども検討してみましょう。上記に挙げた転移しやすい部位に起こる初期症状を見逃さないように経過観察もきちんとしましょう。

 

 

医療ライター 吉田あや

得意分野:医療系ライティング、経営者インタビュー記事など。

writer.happy02@gmail.com

医療ライター。

がんの免疫療法完全ガイド

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