肺がんとはどのようにしてなるのでしょう。喫煙がメインの原因ですが、肺がんの種類も様々で治療法も少しずつ変わってきます。
見落としがちな初期症状などにも気を付けていくことが早期発見のポイントです。
目次
肺がんとは
数字で見る肺がん
1975年から1998年の統計では、男性におけるがんの割合は徐々に増加傾向にあります。最多は胃がんですが減少傾向を見せ、肺がんの割合は第2位で、増加しています。
2003年の死亡率の順番は胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、肝臓がんで肺がんは第3位です。
肺がんは主に肺の小さい気管支の細胞から発生する病気です。
60歳以上の喫煙者に多い病気ですが、それ以外の方でも発生することがあります。
喫煙率は減少傾向ですが、高齢化に伴い国内では増加を続けています。
喫煙者の肺がんリスク-喫煙者の肺がんのリスクは4.5倍
肺がんは、肺の気管や気管支、肺胞の一部の細胞ががん化することで起こります。たばこを吸う人に多く発症するがんで、喫煙者は非喫煙者のおよそ4.5倍かかりやすいというデータがあります。
肺がんの最大の原因は喫煙といわれています。喫煙を経験したことのない人ががんにかかるリスクを1.0とすると、現在喫煙している男性のリスクは肺がんで4.5倍、がん全体で1.6倍になります。
女性の場合もほぼ同じ倍数になります。肺がんは無症状で早く進行する場合もありますが、早期に発見できれば手術で治る可能性も高くなっています。その他の原因では遺伝や大気汚染、女性では女性ホルモンなどがあります。
肺がんの種類
肺がんは、がん細胞を顕微鏡で見ることによって、4つの組織型に分類されます。
組織型によって、性質やできる場所が異なります。また治療法も大きく分けて、小細胞がんと非小細胞がん(腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん) で異なります。
腺がん :唾液の出る唾液腺や胃液の出る胃腺などの腺組織とよく似た形をしているがんのことです。腺がんは、多くの場合、肺の奥の細かく枝分かれした先にできます。女性やたばこを吸わない人にできる肺がんの多くがこの腺がんで、肺がん全体の半数程度を占めます。
扁平上皮がん :皮膚や粘膜など体の大部分をおおっている組織である扁平上皮によく似た形をしているがんのことです。扁平上皮がんはたばことの関係がきわめて濃厚で、大部分は肺の入り口に近い肺門部にでき、肺がん全体の25~30%を占めます。
大細胞がん :扁平上皮や腺など、体の正常な組織に似たところがないがんのうち、細胞の大きなものを大細胞がんといいます。大細胞がんは、肺がんのうち数%しかありません。
小細胞がん :扁平上皮や腺など、体の正常な組織に似たところがないがんのうち、細胞の小さなものを小細胞がんといいます。小細胞がんは、他の組織型にくらべて、発育成長がはやく、転移もしやすいのが特徴です。多くは肺の入り口に近い肺門部にでき、肺がん全体の10~15%を占めます。
肺がんと喫煙
先ほど上記で「喫煙者は肺がんのリスクが高い」と紹介しましたが、それだけでなく他にも原因がありますので見てみましょう。
タバコ:喫煙者が肺がんになる可能性は喫煙開始年齢、1日に吸うタバコの本数、喫煙の年数、喫煙者がどれほど深く吸入したかで影響されます。禁煙をすれば、肺がんになる確率は大幅に減少します。
葉巻とパイプ:吸入しない葉巻やパイプの喫煙者でさえ、肺がんだけでなく他のがんの危険が増大します。
受動喫煙:受動喫煙(他の誰かが喫煙する時の空気の煙)によって肺がんになる可能性 は増大します。
石綿:研究により、大量の石綿にさらされた労働者は、さらされていない労働者に比べ3~4倍肺がんの危険を持っていることが分かりました。造船、石綿採掘と製造、絶縁体の仕事、ブレーキ修理のような産業の労働者は石綿にさらされます。
大気汚染:肺がんと、ディーゼルおよび他の化石燃料が燃焼した時の副産物など、一定の大気汚染物質への接触は因果関係があります。しかし、この関係ははっきりと定義されません。
結核:結核などの肺の病気は、肺がんになる可能性を高めます。肺がんは、結核で傷をつけられた肺の部分にできる傾向があります。
肺がんに一度なった人は完治してもたばこを再開して吸い続けると、再度肺がんにかかるリスクが、一度も肺がんにかかったことのない人よりも確率が高くなるというのも明らかになりました。
肺がんの症状
肺がんは症状がでにくい疾患です。症状がなくても楽観視してはいけません。
それでは見落としやすい最初の兆候としてはどんなものがあるでしょうか。
1週間経っても良くならない咳:これは肺がんが気管支や肺を刺激して発生する症状です。血痰なども見られます。
①のひどい咳の刺激によってできる胸の痛みが起こります。気管支を閉塞する、あるいは胸水がたまって肺が小さくなると呼吸困難、しわがれ声などの症状が出ます。
静脈症候群の症状:肺がんが大静脈を圧迫すると、血液の循環ができず、首や顔が腫れます。
※他の病気にも言えることなので紛らわしいですが、肺がんが進行し体力を消耗すると、食欲減退や体重減少や疲労感が出てきます。
肺がんの検査方法
では、肺がんの検査にはどのようなものがあるか見てみましょう。以下主なものを5つ紹介します。
①胸部エックス線検査:胸部を正面、側面の両方から見る検査ですが、心臓や骨と重なった部位に病変がある場合は発見しにくいです。
②胸部CT検査:エックス線を使用し、コンピュータで計算して体内の画像を作成する方法です。胸や肺を輪切りにした状態で見ることができ、詳細に検討できます。
胸部MRI検査:磁場の中に入り、体内の詳細な画像を作ります。肺がんと血管、肋骨、背骨との関係を観察する、あるいは腫瘍の状態を検討するのに用います。
PET検査:ブドウ糖につけた少量の放射性物質を注射します。ブドウ糖ががんに反応して集まるので、がん病変があるかどうか、また位置が分かります。
腫瘍マーカー:腫瘍マーカーは臨床検査の一種です。がんのもつ生体因子のことを指し、血液中にある因子を使用して検出する方法です。
肺がんの治療
肺がんの治療方法は、肺がんの型(非小細胞肺がんまたは小細胞肺がん)、がんの大きさ、位置、範囲、患者の一般健康状態などの多くの要因によって決まります。治療方法の紹介として下記の4つを挙げました。
手術 :がんを取り去る手術です。手術方法は、肺がんのできる場所によって異なります。①肺の小さい部分だけを取り去る区域切除②肺葉を取る葉切除(ようせつじょ)③片方全体の肺を取る肺全摘術があります。
抗がん剤療法 :体中のがん細胞を消滅するために抗がん薬を使用することです。肺がんの場合化プラチナ併用療法というプラチナ製剤と他の抗がん剤を組み合わせたものが主流です。
分子標的薬 :抗がん薬の一種とも考えられています。がん細胞の増殖などの仕組みが分かってきており、それに関わる分子を標的に阻害する目的で開発されたものです。
放射線療法 :がん細胞の成長を遅らせたり縮小させたりするために放射線を使う治療法です。 高齢の方や他に持病があって手術が困難な患者に適応されます。
放射線治療技術の進歩に伴い、最近ではそのような患者を対象に狭い範囲に強い放射線治療を行うことで、体への負担がないばかりでなく治療成績も向上しています。
肺がんは予防できる病気-.禁煙と受動喫煙を避けることが大事
肺がんを予防するために最も重要なことは、たばこを吸わないことです。喫煙は、肺がんだけでなく、ほかの多くのがんのリスクを上げるものといわれています。たばこを吸う人は禁煙することが第一であり、自分がたばこを吸わない人では、受動喫煙を避けることが大切でがんを予防するための生活を心がけましょう
肺がんと診断されたら
肺がんの免疫療法
免疫療法という言葉を聞いたことがありますか?
免疫療法は早期のがんに特に効果を発揮するのですが、どのステージにも有効性があります。がん免疫療法は、患者自身がもつ免疫の働きを高め、がん細胞による免疫の抑制を解除して、免疫によるがん細胞の排除を促す治療法です。非小細胞肺がんでは、免疫チェックポイント阻害剤を用いて免疫の抑制を解除するがん免疫療法(対象となるのは切除不能な進行または再発の非小細胞がん患者)が保険適応となりました。
抗がん剤服用と免疫力低下
がんの3大療法のうち副作用が一番大きいのは抗がん剤と言われていますが、副作用の辛さだけでなくDNAの細胞をも破壊してしまうほどの力があります。がんは免疫力が低下した結果起こる病気です。抗がん剤など免疫を強く傷つけてしまう療法は、がんに対応できる体作りを妨げます。
また放射線療法にも抗がん剤ほどではありませんが、副作用や後遺症が発生します。
抗がん剤の点滴をすると1週目くらいから嘔吐、食欲が出ないなどの症状が現れます。食欲がなくなるとますます免疫が低下しますが、現在では吐き気止めも進歩しており、嘔吐が止まらないといった状況は少なく、ムカムカする、食欲がないといった症状の方が多いそうです。
2週間目くらいで骨髄抑制といわれる副作用が出てきます。骨髄抑制とは、抗がん剤によって血液をつくる場である骨髄が影響をうけて、一時的に血液をつくりにくくなり、結果として血球が少なくなることを言います。
この減少には白血球の減少、赤血球の減少、血小板の減少の3つが起こるのですが、白血球が少なくなることにより免疫力が低下します。状況に応じて白血球を増やす注射や赤血球減少に対応する輸血などを行います。
しかし抗がん剤の種類によっては、痛みが続き眠れなかったりすることがあります。抗がん剤の副作用のための痛み止めなどもありますが、その薬によっても免疫力はどんどん下がってしまいます。
肺がんの手術
肺がんと診断したときに手術で切除する部位は、一つの肺葉とリンパ節です。肺がんによっては、片肺を全部切除しなくてはなりません。また、肺がんが小さいときや、体力や肺の機能に問題がある場合は、部分切除などの範囲を狭めて切除を選択します。がんの手術の中でも特に体に負担のかかる部位のため、治療回復のために免疫療法などのサポートが適しています。
免疫療法
免疫療法は人間の体に本来備わっている病気を防ぐ力を最大限に引き出していく治療法です。
がん細胞は元々正常細胞が変化したもののため、免疫力が十分に働いてくれれば、人体に異常となって悪影響を与えるほどにはなりません。
生まれてくるがん細胞の数や増殖速度よりもそれらを殺傷する免疫力の数と力が強ければ、がんを押さえ込むことができるという理論です。
免疫療法は自分の細胞を使っていく療法のためほとんど副作用がないのも利点です。
肺がんと診断されたときの食事と運動
がんと診断されたとき、上記の免疫療法を取り入れながら食事も見直していきましょう。
肺がん患者の中には喉がつかえる症状があり、診察を受ける前から気づかぬうちに食べる量が減ってきたという人も少なくありません。そのため、治療の前に既に体重が減り、栄養状態も悪くなっていることが多いようです。
食事も免疫療法の一つであると意識して栄養をバランスよく取り入れて、しっかり食べて体力をつけていきましょう。放射線療法や抗がん剤療法を受けると白血球が下がりますが免疫療法ではこれを再び上げることが可能です。
その他でがんになりにくくさせる方法、進行させない方法としては直射日光を避け、ストレスをためず、ビタミンなどの抗酸化作用のある栄養素を摂ることです。
さいごに
肺がんの治療には体力勝負の側面があります。しっかり治療を受けるためには、少しでも栄養状態をよくし、基礎体力を 高めておくことが大切です。そこで、告知を受けたらまずは「しっかり栄養を摂ること」を考えていただきたいのです。食べることから「治療の第一歩」が始まっていると言っても過言ではないでしょう。
何度か繰り返してお伝えしていますが、肺がんの原因で最も影響を与えるのはタバコです。肺がんを予防する最も効果のある方法が禁煙、または喫煙(受動喫煙も含む)しないことです。早く禁煙するほど良い効果があります。たとえ長年喫煙していたとしても、禁煙に遅すぎることはありませんので、是非肺がんの予防の意識を高めていきましょう。

医療ライター。
医薬系会社にて医療事務に従事する傍らで、美容系サイトにて痩身美容(脂肪吸引など)ついて執筆するフリーライター。
主に得意分野は、がんや免疫療法、経営者インタビュー記事作成など。