胃粘膜下腫瘍とは?治療法や再発の可能性について詳しく解説

 

 

胃粘膜下腫瘍はとても稀な腫瘍で、治療が必要なGIST(消化管間質腫瘍)の発症率は10万人に1人から2人といわれています。いわゆる「がん」とは異なり「肉腫」の一種とされますが、悪性の場合は適切な診断と治療が必要です。

 

目次

胃粘膜下腫瘍について
 

胃粘膜下腫瘍とは

胃の粘膜よりも深い位置にある胃壁には、粘膜下層、筋層、漿膜下層(しょうまくかそう)などがありますが、胃粘膜よりも下に発生する病変を総称して「胃粘膜下腫瘍」と呼びます。

粘膜が胃の内側の空洞部分に隆起し、表面は平らで滑らかな状態であることが多いです。

大きなくぼみや潰瘍になる場合もあります。多くは腫瘍性ですが、それ以外の疾患であることもあります。

 

胃粘膜下腫瘍の種類
 

胃粘膜下腫瘍の中で、GIST(Gastrointestinal Stromal Tumor)とよばれる「消化管間質腫瘍」は、手術治療の対象となる代表的な病変です。

GIST以外にもさまざまな種類があり、良性、悪性どちらの腫瘍も含まれます。

 

非上皮性腫瘍

・平滑筋腫瘍

・神経系腫瘍

・線維腫

・脂肪腫

・顆粒細胞腫

・脈管性腫瘍(血管腫、リンパ管腫)

 

上皮性腫瘍

・がん

・カルチノイド

・迷入膵(めいにゅうすい)、

・好酸球性肉芽腫

・のう腫

・炎症性繊維性ポリープ

 

など

 

 

GIST(消化管間質腫瘍)について

 

GIST(Gastrointestinal Stromal Tumor)は、胃や小腸など消化管壁にできる胃粘膜下腫瘍のひとつで、胃に最も多く発症します。

粘膜で発生する胃がんや大腸がんとは性質が異なりますが、「肉腫」といわれる転移や再発を起こす悪性腫瘍の一種で、基本的に手術治療が必要である病変です。

 

 

GISTの発症率

 

GISTの発症率は、1年間で10万人に1人から2人程度とされています。

いわゆる「がん」ではありませんが、希少がんのひとつとされる非常に稀な腫瘍です。

発症は男女間で差がなく、またほとんどの年齢層にみられます。特に中高年に多く、60歳代が最も発症しやすいです。

 

発症部位の頻度として、胃の割合が70%と最も高く、次に小腸が20%、その他の消化管では大腸と食道が5%となっています。

 

 

胃粘膜下腫瘍の症状は?
 

胃粘膜下腫瘍の特別な症状はなく、腫瘍が小さい時は症状がないことがほとんどです。大きくなってから発見されることもしばしばあります。

たまに初期で腹痛や胃の不快感がありますが、病変が原因とは限りません。

 

腫瘍が悪性で大きくなってくると、腹痛や吐き気、腫瘍からの出血で下血・吐血し、それに伴い貧血の症状があらわれることがあります。

 

 

胃粘膜下腫瘍はどのように発見される?
 

CTやMRIなど画像検査の精度が向上し、症状があらわれる前に発見されることが多くなりました。

貧血や下血などの症状がある場合や、腹部に腫れを感じて検査を受けた結果、発見されることもあります。

 

胃X線検査
 

一般的に行われている胃X検査では、発泡剤を飲んで胃を膨らませ、その後バリウムを飲み、X線で胃の形や壁のしわ・ひだ、粘膜の状態を確認します。

胃X線検査では、胃粘膜の下の腫れ「腫瘤(しゅりゅう)」を発見できますが、GISTかどうかを診断することはできません。

 

内視鏡検査
 

X線検査で何らかの異変がみつかった場合、内視鏡検査を受けることを勧められます。

先端に光源とレンズが付いた管を口や鼻から体内に入れ、胃の内部を観察し、腫瘍の疑いがある部分を調べます。

 

胃粘膜下腫瘍は胃がんとは異なり、胃粘膜の下の「筋肉層」から発生する腫瘍です。そのため、表面の組織を調べても正しい診断ができないこともあります。その場合、超音波内視鏡検査で腫瘍内部の構造を調べる必要があります。

 

病理検査
 

病理検査では内視鏡検査や超音波内視鏡検査を行った際、または手術で腫瘍を切除した際、その腫瘍の細胞や組織を顕微鏡で詳しく観察します。

GISTの場合、細胞や組織の形態、特徴的なタンパク質の有無などを調べ、専門の病理医が病理診断を行います。

さらに、顕微鏡で一定面積の核分裂中の「核分裂像数」(腫瘍細胞数)を数えます。

分裂中の細胞が多くみられるほど増殖のスピードが速いと考えられているため、悪性度や再発リスクも高いと診断されます。

 

CT検査・MRI検査
 

CTはX線を体の周囲から当て体の断面図を撮影し、MRIは磁気を使い電波を体に当てて体内の様子を画像化する検査です。

CT検査やMRI検査では、腫瘍の位置や広がり、形態などを調べることができるので、GISTの全体像を確認するのに有用です。

また経過観察時、肝転移などがあるかの診断にCT検査は必須とされています。

 

 

GISTのステージ(病期)と転移リスク
 

胃粘膜下腫瘍で治療が必要とされるGISTは、がんと同様にステージ(病期)がⅠからⅣに分類されます。腫瘍の大きさや悪性度を評価する指標である核分裂像数の数値、リンパ節や他の臓器への転移の有無によって判断されます。

またGISTの場合、転移するリスクを考慮した分類も重要となります。

 

 胃GISTのステージ

 

Ⅰ期
ⅠA

腫瘍の大きさ:5cm以下

核分裂像数:5個以下

 

ⅠB

腫瘍の大きさ:5cmを超え10cm以下

核分裂像数:5個以下

 

 

Ⅱ期
腫瘍の大きさ:10cmを超える

核分裂像数:5個以下

 

または

 

腫瘍の大きさ:5cm以下

核分裂像数:5個を超える

 

 

Ⅲ期
ⅢA

腫瘍の大きさ:5cmを超え10cm以下

核分裂像数:5個を超える

 

ⅢB

腫瘍の大きさ:10cmを超える

核分裂像数:5個を超える

 

 

Ⅳ期
 

腫瘍の大きさにかかわらずリンパ節転移または遠隔転移がある

 

胃GISTのリスク分類

 

転移リスクは、腫瘍の大きさや病理検査で診断された腫瘍細胞の性質などを元に評価され、これにより治療方針が決定されます。

 

Miettinen分類では、腫瘍の大きさと核分裂像数とともに発生部位別の再発リスクを考慮に入れた基準となっています。

またGISTは腫瘍の発生部位により5年生存率などの予後が異なります。腫瘍の大きさが同じでも胃と小腸、大腸では発生リスクは違います。

 

Miettinen分類(胃GISTの場合)

 

リスク無
腫瘍の大きさが2cm以下

 

リスク超低
腫瘍の大きさ:2cmを超え5cm以下

核分裂像数:5個以下

 

リスク低
腫瘍の大きさ:5cmを超え10cm以下

核分裂像数:5個以下

 

リスク中
腫瘍の大きさ:10cmを超える

核分裂像数:5個以下

 

または

 

腫瘍の大きさ:2cmを超え5cm以下

核分裂像数:5個を超える

 

リスク高
腫瘍の大きさ:5cmを超える

核分裂像数:5個を超える

 

出展:

国立がん研究センター がん情報サービス

https://ganjoho.jp/public/cancer/gist/diagnosis.html

 

胃粘膜下腫瘍の治療法は?

 
胃粘膜下腫瘍の治療法は、大きく分けて外科手術と薬物療法があります。腫瘍の大きさと悪性か良性か、GISTと診断されるかにより治療法が異なります。

 

 胃粘膜下腫瘍の治療法(GIST以外)

 

症状がない、腫瘍が5cm未満、悪性でない場合は基本的に経過観察となります。
年1~2回、内視鏡検査または超音波内視鏡検査の実施が推奨されます。

 

腫瘍が2cm以上5cm以下でEUS-FNAB(超音波内視鏡下穿刺吸引生検 )で胃粘膜下腫瘍と診断された場合、内視鏡による切除を行うことがあります。
 

腫瘍が5cmを超える場合、悪性の所見がある場合、症状がある場合には外科手術の適応です。
 

 GISTの治療方法

 

外科手術

 

  GISTと診断された場合、全てのステージにおいてまず外科手術による切除が検討されます。

切除の原則は腫瘍の一括切除で、腫瘍周囲の組織を含めて全て取り切るよう切除します。

 

GISTは胃がんと異なりリンパ節転移の可能性が低く、腫瘍細胞が周囲の組織に浸潤することはあまりないとされています。よってGISTの手術ではできるだけ臓器を残し機能を損ねないよう、腫瘍箇所のみを切除することが多いです。局所手術でも十分に根治が期待できるとされています。

 

5 cm 以下の腫瘍では、開腹せずにカメラや手術の器具を入れる穴をお腹に数カ所開けて行う「腹腔鏡下手術」が選択されることがあります。体への負担が少なく、術後の回復が早いという利点があります。

 

最近では、「腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除(LECS)」といって腹腔鏡で手術をすると同時に内視鏡で胃の中からも同時に腫瘍を観察しながら切除する方法があります。

胃粘膜下腫瘍は胃の内側と外側の療法に出っ張っているので、胃の中と外の両側から腫瘍の範囲を見定めることができるため、切除範囲が最低限で済みます。

 

さらに、おへその[h2] [MI3] 箇所のみを数cm切開し器具を入れる「単孔式腹腔鏡下胃局所切除(TANKO)」という新しい手術治療も確立されています。

 

薬物療法
 

初回の診断時、腫瘍が既に大きく、周囲に広がりがみられ他臓器への転移がある場合、または術後に再発し切除不能と判断された場合は薬物療法(化学療法・抗がん剤治療)が検討されます。

 

現在GISTの薬物療法の第一選択薬は、分子標的薬であるイマチニブです。

再発リスクが高く、もしくは腫瘍破裂と診断された場合も、手術後3年間の薬物療法が行うことが推奨されます。

 

薬物療法の効果はCTにより判定され、治療効果が不十分の場合、またイマチニブの長期投与により耐性ができ効果が弱まってきた場合、スニチニブを使用します。

 

さらにスニチニブでも耐性ができた場合、病状が進行した場合、レゴラフェニブの導入が検討されます。

 

胃粘膜下腫瘍の再発や5年生存率について。再発を予防するには?
 

 GISTの5年生存率

 

胃に発生するGISTは、小腸や大腸に発生するGISTに比べて悪性度は低いとされていますが、5年生存率は腫瘍の大きさにより大きく異なります。

腫瘍が5cm以下の5年生存率は90%以上、2cm以下では10年間での再発率もほぼありません。

ただし10cmを超える腫瘍では20%に低下します。

 

 

GISTの再発について

 

GISTの再発率は手術で完全に腫瘍を切除できた場合、胃がんと比べて治療効果が高く再発率も低いことがわかっています。ただし、再発率は腫瘍の大きさにより高くなっていきます。

 

再発の場合3年以内が多く、もともと腫瘍のあった場所に再発する局所再発のほか、腹膜播種や肝臓、腹膜への転移がしばしばみられます。

 

また、完全に切除できたと思われる場合でも転移することはあります。腫瘍がすでに大きく取り切れなかった場合や、周囲に浸潤している場合などでも再発の可能性は高くなります。

他臓器への転移がみられると、がんと同様に様々な症状が徐々にあらわれ、全身が衰弱します。

 

 

再発を予防するには体の免疫力を上げておくことが大切

 

手術後の再発を予防するには、治療が完了し退院した後の生活が大切です。

日常生活における再発のリスク要因は多々あり、ストレスや紫外線、活性酸素、発がん性物質を含む食品などさまざまです。

それらに耐性のある体内環境を作るには、ストレスをためず、直射日光を避け、ビタミンCなど抗酸化作用のある栄養素を摂り免疫力を上げる生活を実践することです。

 

さらに免疫療法を手術後の治療に取り入れることにより、自身が持っている免疫の力を効率的に高めることができますので、再発を予防することに効果的です。

免疫療法を手術前に開始することで術後の経過を良くし、薬物療法を併用する場合も副作用が少なくて済むという報告もあります。

 

 

 

まとめ
 

胃粘膜下腫瘍は日本では胃がん検診が普及していることにより、欧米に比べて発見される頻度が高いことがわかっています。

 

腫瘍が小さいうちに早期発見され、手術で切除することができれば治癒率も高くなりますので、毎年の健康診断をしっかり受けることが重要です。

また、日常的に「暴飲暴食を避ける」「適度な運動」「質の良い睡眠」といった基本的なことが、免疫力を維持し病気を発症させない体内環境を作るために大切です。

 

出展:

国立がん研究センター がん情報サービス

https://ganjoho.jp/public/cancer/gist/print.html

がん研有明病院

http://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/stomach/004.html

GIST研究会

胃粘膜下腫瘍(SMT)の治療方針

消化管間質腫瘍(GIST)治療におけるスニチニブ

日本癌治療学会

http://www.jsco-cpg.jp/item/03/algo.html

希少がんセンター

https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/GIST/index.html

京都大学医学部付属病院 消化管外科

gisurg.kuhp.kyoto-u.ac.jp/clinic-contents/gistの解説/150

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