希少ながん「副腎がん」について。診断や治療法は?

 

非常に珍しいがんである副腎がんは、症状があまりなく初期段階での発見が難しいとされています。手術で腫瘍を完全に切除することが最善の治療法ですが、すでに手術不適応で発見される場合もあり、手術できたとしても予後があまりよくありません。

副腎や副腎がんについての理解を深め、最善の治療法について主治医と十分に検討しましょう。

 

 

目次

副腎について

副腎とは

副腎は腎臓のすぐ上にある3~4cm程の三角形をした臓器で、左右に二つあります。右側を肝臓、腎臓、下大静脈に、左側を脾臓、膵臓、腎臓、腹部大動脈に囲まれています。

小さな臓器ですがその役割は重要です。外側の皮質と内側の髄質に分かれ、体の恒常性を保つために必要なホルモンを分泌します。

 

 

副腎から分泌されるホルモンの働き

副腎皮質からコルチゾール、アルドステロン、テストステロンが分泌され、髄質からはアドレナリン、ノルアドレナリンが分泌されています。これらのホルモンは体内で過剰になったり不足したりしないよう濃度が一定に保たれ、分泌量が調節されています。

・コルチゾール

血圧を上げたり、血液中の糖分や脂肪分を増やしたりする働きをしています。ストレスを受けると血液中にコルチゾールが増えるため、ストレスホルモンとも呼ばれています。

・アルドステロン

体内の塩分や水分の調節をしたり、血管に働きかけることで血圧の調節をします。また血液中のカリウムという電解質を減らす作用もあります。

・テストステロン

男性ホルモンの一種で、骨格や筋肉の成長促進の他に、脳や精神面に影響し生気や活力を高めるともいわれています。

・アドレナリン/ノルアドレナリン

血圧や脈拍を調節する大事なホルモンです。

 

 

副腎腫瘍と副腎がんについて

副腎に腫瘍ができることでホルモンが過剰に作られたり、反対に少なすぎたりといった分泌異常が起こります。良性腫瘍のことがほとんどですが、悪性腫瘍(がん)のこともあります。

 

 副腎腫瘍

一般的に副腎腫瘍は良性の場合がほとんどで、副腎皮質、副腎髄質にできるもので以下のように区分されています。

副腎皮質

副腎皮質にできる良性腫瘍は、産生されるホルモンの種類によって病名がつけられています。ホルモンが産生されない「非機能性副腎皮質腺腫」のこともあります。

原発性アルドステロン症
副腎皮質からアルドステロンが過剰に分泌されるため高血圧になり、また血液中のカリウムが少なくなる低カリウム血症になることがあります。長期間アルドステロンの過剰状態が続くと、脳や心臓、血管、腎臓などの臓器に悪影響を及ぼすことがあります。

クッシング症候群
コルチゾールの分泌が過剰になる疾患で、引き起こされる症状は様々です。

顔が丸くなる「満月様顔貌(まんげつようがんぼう)」や高血圧、身体は太っているのに四肢は痩せている「中心性肥満」約8割の患者でみられます。

また、首の付け根や肩付近に脂肪が付く水牛様脂肪沈着、月経異常、伸展性皮膚線条や浮腫、糖尿病、骨粗鬆症、にきび、多毛などの症状や、情緒不安定、不眠症、抑うつなどの精神症状が現れることもあります。

プレクリニカルクッシング症候群
コルチゾールの過剰分泌による、クッシング症候群の特徴的な症状が伴わない腫瘍です。ただし、高血圧や肥満、耐糖能異常などの症状はよくみられます。

副腎髄質

褐色細胞腫
副腎髄質と交感神経節からアドレナリン、ノルアドレナリンが過剰に分泌され、どちらも降圧作用があるため高血圧になります。また高血圧も併発し、頭痛、発汗、体重減少、動悸などの症状も特徴的です。これらの症状は持続性のものと、発作的に出るものがあります。

褐色細胞腫の約10%は転移を起こす悪性褐色細胞腫のこともあります。

 

 副腎がん

副腎がんは副腎皮質の細胞から発生した悪性腫瘍で、「副腎皮質がん」とも呼ばれています。ただし、良性の副腎腫瘍が悪性化して副腎がんに変化することはないとされています。

非常に稀ながんであり罹患率は100万人あたり2人程度ですが、女性は男性の1.5~3倍といわれています。年齢別では10歳までの小児と40~50歳前後に多いです。

 

 

副腎がんの原因や症状は

副腎がんの原因

副腎がんは非常に珍しいがんであり、副腎にできる腫瘍の原因についてもほとんど解明されていません。ただ、褐色細胞腫の一部には、RET遺伝子と呼ばれるがん遺伝子の異常が原因で発生することがあるとわかっています。

そのため特定の遺伝性疾患のある人は、副腎皮質がんのリスクが高くなるといわれています。

 

 副腎がんの症状

 

副腎がんに特徴的な症状はありません。

上述したように分泌されるホルモンに応じた症状や、がんが進行するにつれて主に以下のような症状が現れます。

●腹部の痛み
●腹部のしこり
●便秘
●発熱
●吐き気
●食欲不振

 

 

副腎がんの診断について

一般的に、副腎がんは腫瘍が大きくなるスピードが速く、周囲の臓器などへも浸潤するため、発見された時にはすでに進行していることが多いです。また副腎は周囲を臓器や肋骨に守られた体の奥深くに位置しているため、よほど大きな腫瘍でなければ表面から触れ判別できません。

高血圧や高血糖、腹部の張りや痛み、便秘などで医療機関を受診し判明するケースがあります。

 

 診断方法

1)血液・尿検査(ホルモン検査)

副腎がんが疑われる場合、副腎皮質で作られるホルモンの状態を調べるため血液検査や尿検査により体の中に分泌されているホルモン濃度を確認します。

血液検査ではアルドステロン、コルチゾール、DHEA-S(デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩)、テストステロン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどが高値になることがあります。

尿検査では、代謝されたホルモンが尿に多く出ていないかをチェックします。

 

2)CT検査

病気の性質や広がりを確認するためには、造影剤を使用したCT検査が有用です。

副腎がんは5cm以上の大きさで発見されることが多く、3cm未満の場合は良性の副腎腫瘍であることがほとんどです。

腫瘍の周りが不規則であったり、内部が不均一に造影されたり、また石灰化がみられる場合、ある程度時間が過ぎても造影剤で染まっている場合はがんである可能性が高いです。

CT検査ではリンパ節転移や肺・肝転移等の有無を診断することができます。

 

3)MRI検査

MRI検査は、CT検査では撮影が難しく診断困難な腫瘍と副腎がんを鑑別する際や、がんの周りの組織への進行具合(浸潤)を診断する上で必要とされています。

 

4)核医学(RI)検査

副腎の腫瘍を検査する際、「放射性医薬品」を使う核医学(Radioisotope)を用いることがあります。がんを高い感度で描出し、さまざまな病態や機能の診断が可能です。

 

 副腎がんのステージについて

副腎がんのステージ(病期)は以下のとおりです。

 

Ⅰ期:腫瘍径5cm以下

Ⅱ期:腫瘍径5cmを超えるが周囲への浸潤がないもの

Ⅲ期:腫瘍サイズは問わず、周囲への浸潤があるもの

Ⅳ期:隣接臓器への浸潤または遠隔転移の存在するもの

 

 

副腎がんの治療方法

副腎がんは手術が最も有効な治療法で、「手術が可能であれば手術をすべき」とされています。

基本的に遠隔転移がなく、副腎がんの広がりが完全に切除可能な範囲である場合には外科的手術を行い、手術が不可能の場合は薬物療法が選択されます。

 

 手術療法

ステージⅢ期までは手術の適応で、小さな腫瘍であればお腹に数カ所穴を開け内視鏡にて行う腹腔鏡手術を選択します。

腹腔鏡手術が困難であれば開腹手術で腫瘍を摘出します。

副腎がんの治療では、手術による切除で腫瘍を完全に摘出することが非常に重要で、完全に切除できた場合は予後の改善が期待できます。状況によってはリンパ節や腎臓など周囲の臓器も一緒に切除することがあります。

Ⅳ期で手術不適応と判断された場合でも、以下の薬物療法や化学療法により腫瘍が小さくなり切除可能になった場合、手術可能と判断されることもあります。

また、副腎から産生されるホルモンによる症状により、薬物療法では十分にコントロールできない場合、手術が検討されることがあります。

 

 薬物療法・化学療法

すでに副腎がんが手術で取り去ることができない程度に進行している場合や、他の臓器に転移している場合は、病気の進行を抑えるためにミトタンという薬を投与する薬物療法を行います。

また、外科手術後に再発の可能性が高いと判断された場合も薬物療法が用いられます。

ミトタンと抗がん剤による化学療法を併用して行うこともあります。

現在有効性が報告されている抗がん剤は、EDP(エトポシド+ドキソルビシン+シスプラチン)療法があります。

 

 

 

ミトタンの副作用について

ミトタンを使用することで約80%の患者さんで何らかの副作用が起きます。

代表的な症状として、食欲不振、吐き気をはじめとする消化器症状や肝機能障害、めまいや眠気などが多く報告されています。

ミトタンの作用で副腎からのホルモンが減少し、体の電解質バランスが崩れることで体調が悪くなり、元気がなくなります。そのためホルモン剤を補充することで体のホルモンを調整します。

人によってミトタンの適切な量が異なるため、副作用の状態などをみながら内分泌専門医と協力しながら慎重に投与される必要があります。

 

 

副腎がんの予後について

副腎がんの治療はとても難しく、予後も非常に悪いがんといわれています。また100万人に数人と非常に稀な疾患のため、国内での症例数が少ないです。

 

 副腎がんの5年生存率

副腎がんの5年生存率は一般的に37~47 %という報告があります。

ステージ別ではⅠ期~Ⅱ期で45~60%、Ⅲ期からⅣ期では10~25%と報告されています。

Ⅳ期で手術が不可能であれば予後はさらに悪くなります。

 

 副腎がんの予後に影響する要因

副腎がんは手術で完全に腫瘍が切除できるかどうか、また診断時のステージが予後に大きく関係するといわれており、治療法の選択にも影響を及ぼします。

・診断時のがんのステージ

(腫瘍の大きさ、がんが発生しているのは副腎だけか・他の臓器へ転移しているか)

・手術で腫瘍を完全に切除できるか

・再発したがんかどうか

・腫瘍の悪性度

・患者さんの健康状態

 

 免疫力を上げて予後の生活を豊かに

 

一般的に再発がんは治癒が難しいとされており、予後が悪いとされる副腎がんは尚のこと再発予防に努めなければなりません。上述したとおり、手術で腫瘍を切除できるかに加え患者さんの健康状態も大きく予後に影響します。

免疫療法を再発予防の目的として予後の治療の一つに取り入れる選択肢もあります。また免疫力を高めることで、副作用が出やすい術後の薬物療法に耐えられる体力がつくこともあります。

病と闘う人だけでなく、健康な人にとっても免疫力を上げることは大切です。

がんに罹患しても免疫力を維持することにより、通常と同じ生活を送っている人もいます。

 

 

まとめ

 

副腎がんはとても希少ながんでありながら、発見された時にはすでに進行していることが多く治癒が困難だといわれています。

しかし現代の、特に日本の医療技術は進んでいます。主治医と相談しながら様々な治療法を考え、自分が治っていく過程をイメージし治療に取り組むことが大切です。

出展:

独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター

http://www.shikoku-cc.go.jp/hospital/medical/class/urology/cancer/adrenal_gland/

がん研有明病院

http://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/adrenal.html

国立がん研究センター 希少がんセンター

https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/adrenal_cancer/index.html

国立がんセンター がん情報サービス

http://ganjoho.jp/public/dia_tre/medicine/anticancer_agents/data/mitotane03.html

東京女子医科大学病院 泌尿器科 腎臓病総合医療センター

http://twmu.ac.jp/KC/Urology/disease/cancer/adrena/

名古屋大学医学部付属病院 乳腺・内分泌外科

https://www.med.nagoya-u.ac.jp/nyusen/sick/adrenal/a_sick.html

http://www.med.shimane-u.ac.jp/urology/shinryo_guide/cancer/cancer_02.html

大阪大学医学部付属病院 放射線部

www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/home/hp-radio/inspection/ri.html

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