治療成績の良い大腸がんですが初期症状は重大なこととして捉えられずに見過ごされることが多いようです。
大腸がんは重篤なレベルになると人工肛門を体に造設しなければならないことがあり、そうなってしまうと日常生活に支障をきたします。
そのため早期発見が肝心です。
では、どのようにして早期発見をすることができるのでしょうか。
ここでは初期症状がどのような症状なのかを具体的に挙げていきますので、判断のポイントにしてみてください。
目次
大腸がんとは
大腸とは
大腸は主に盲腸、結腸、直腸の3つがあります。
大腸がんは結腸がん、横行結腸がん、S状結腸がん、直腸がんのことを指します。
大腸は食べ物が消化吸収された残りの容物を貯め、水分を吸収して大便にする器官です。
乳酸菌、大腸菌などの約100種類の腸内細菌が存在しており、食物繊維の分解や感染予防の働きなどをしています。直腸は便の貯留と排出に重要な役割をしています。
結腸は水分やナトリウムを吸収し、便を作ります。
また、小腸で消化できなかった炭水化物やたんぱく質を分解・吸収し便を直腸に流します。
大腸がんの危険リスクとして欧米化した食生活や、飲酒によるアセトアルデヒトの摂取が、DNAを作る葉酸を破壊し、がん化するリスクを高めるということが分かってきました。
男性の大腸がん患者の4分の1が1日23g以上のアルコール摂取をしていたというデータもあります。
初期症状
大腸がんの症状には下記のような症状があります。
・血便(血液が混じった便)が出る
・下血(げけつ:肛門からの出血)が起きる
・便が残っている感じがする
・下痢と便秘を繰り返す
・便が細くなる
・貧血が起きる
・嘔吐する
具体的な初期症状とは?
上記に簡単に初期症状を挙げましたが、大腸がんは症状が分かりにくいためなかなか自身で発症に気づきにくいことが多いです。
では、具体的にどのような症状が出てくるのでしょうか。
病院に行くべきポイントを見てみましょう。
【お腹がぐるぐる音を立てる】
お腹が音を立てる腹鳴(ふくめい)は、ガスや消化物が腸管内を通過する時に起こるもので、それ自体は健康な人にもよくみられます。
しかし、お腹が強く張るような腹部膨満感が同時にみられる場合には腸の通過障害が疑われ、がんが関わっている場合も考えられます。
こうした症状が長引くようならば受診が望ましいでしょう。
【便秘が続く】
便秘は大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)の低下なども原因となりますから、必ずしも病気によるものばかりではありません。
ただ、大腸がん患者様では便秘と下痢が交互に繰り返し起こるという便通異常が特徴の一つになっています。
この症状は、S状結腸や直腸など肛門に近い大腸に生じたがんでよくみられます。
【便が細くなる】
排便が細くなるというのも肛門近くに発生するがんで見られやすい症状です。
特徴的な症状には排便の直後にもかかわらず便がまだ残っているように感じるというものがあります。このような状態が続く場合には速やかに受診してください。
【血便が一度出た】
痔による出血との区別がつきにくいですが、発生部位が肛門に近いため、がんがそれほど進んでいない段階でもよく見られます。
早期発見のためにも進んで医師の診察を受けましょう。
【便が固い時に下血が起こる】
便の排出後に下血が起こるような場合には、痔核や裂肛などが考えられます。
注意したいのは便に血液が付着するように出てくる状態で、このような例では大腸からの出血が疑われます。
いずれにせよ、日頃から便の性状や出血の有無、状態に注意することは大切といえます。
【血便や下血はないので下痢が続いても大丈夫?】
大腸がんの症状は、発がんした場所によって異なります。
出血症状は、大腸の左半分や肛門近くのがんでは便の色などから気づきやすい反面、がんが右半分にある場合には判断は難しくなります。
出血量がごく微量なこともありますから、見た目に血便や下血がないからといってがんが否定できるわけではありません。
【大腸がんに痛みはありますか?】
大腸の内壁には痛みを感じる神経がないため、早期がんの段階では痛みを自覚しないことが多いでしょう。
疼痛が見られた時はすでに大腸の最も外側までがんが到達していることもあります。
痛みを感じる前に発見することが極めて重要です。
【痔と診断されて出血が続いたら別の病院に行くべきか】
問診、視診、触診、肛門鏡や最終的に全大腸内視鏡まで、検査が順序だてて適切に行われ、痔と診断されているならば安心してよいと思います。
痔の出血は再発することが比較的多いとされていますから慌てることなく治療を続け、便通異常など他に気になる症状がみられた場合には、まず主治医への相談をおすすめします。
大腸がんの初期症状が具体的にお分かりいただけましたでしょうか。もし上記の状況があれば見極めのポイントになさってください。
大腸がんの治療法
状況に応じて治療法はステージ別で下記のような方法が一般的となっています。
【ステージ0~1期】内視鏡手術、その後経過観察
【ステージ1~3期】手術(開腹、腹腔鏡手術)、その後放射線療法と化学療法
【ステージ4期】放射線療法、化学療法
手術が可能であれば手術が優先される場合、放射線療法、化学療法は補助的な療法として活用されます。
手術が体力的、年齢的に厳しい場合は放射線療法、化学療法を中心としていきます。
※腹腔鏡下手術
腹部を炭酸ガスで膨らますことにより、小さな穴を数箇所開けます。腹腔鏡下手術専用のカメラや器具を使用します。
開腹手術に比べて創が小さく抑えられるので体の負担が軽減されます。
また術後の回復も早いことから年々採用が増えています。
大腸がんには結腸がんと直腸がんがありますが、それぞれの場合の手術の方法を紹介します。
結腸がんの場合:
腫瘍部分から両側に10cmほど離れたところの腸管を切除します。
結腸の場合は切除する結腸の量に関わらず、術後の機能障害はほぼないでしょう。
直腸がんの場合:
直腸の周辺には前立腺、膀胱、子宮、卵巣などがありこれらは排便、排尿、性機能などの重要な役割があります。
これらの機能を失ってしまってはQOLに関わりますので、直腸がんの手術では排尿機能と性機能を調節する自律神経を残します。
もし万が一がんが自律神経の近くに及んでいるときは、神経を切除する手術が必要なこともあり、この場合は機能障害が起こる可能性があります。
男性の場合は性機能障害の喪失により勃起や射精ができなくなることもありますので手術前にリスクについて十分に担当医の話を聞きましょう。
また、人工肛門の造設が必要とされるケースもあります。
(人工肛門については後ほど詳しく説明します。)
術後の合併症
排便障害と排尿障害
大腸がんの手術に伴って発生する機能障害には排便機能、排尿機能などがあります。
これらの障害は、摘出される腸の範囲により異なり、がんの発生した部位やがんの深さによって変わってきます。
これらの後遺症は大腸がんの中でも直腸にがんがある場合に起こりやすいと言われています。
【排便機能障害】
直腸を手術する場合、直腸を温存する場合とそうでない場合があります。
また、肛門を温存する場合とそうでない場合もあります。
これによって障害の度合いは変わってきますが、腸と腸、腸と腹壁などが癒着する可能性があるため、食物の通過が悪く、腹部膨満感や嘔気がしたりすることがあります。
ひどい場合は腸閉塞になることがあります。
※盲腸からS状結腸までにがんが発生した場合は直腸の温存が可能なため、一般的に排便機能障害はないとされています。
【排尿機能障害】
盲腸、結腸がんの手術後に排尿機能障害が発生することはまれですが、直腸がんの手術後は排尿機能障害が発生します。
これは直腸がんの手術では病巣の摘出とともに、転移しやすいリンパ節を郭清するためです。
これに伴い、排尿機能をつかさどる骨盤内の神経が損傷され、その程度によって尿意を感じなくなったり、排尿がうまくできなかったりなどの排尿機能障害が起こります。
排尿機能障害が重度の場合や、自分で排尿できない場合は、カテーテルを尿道口から挿入し、膀胱まで入れて尿を出す方法があります。
免疫療法
免疫療法とは自身の免疫を活用し治療をする方法です。
がんの3大療法の次の治療法として注目されているのは副作用がほとんどない点が挙げられます。
患者様本人の免疫力が強いと、がん細胞を免疫細胞が壊し、再発や転移を食い止めることもありますが、一度大腸がんにかかったら油断しないようにしましょう。
免疫療法は再発予防の1つとして注目されています。
がんを発症して化学療法などを受けると免疫力を低下させDNAを破壊しますが、免疫療法は自己の免疫を活用して免疫力を高めていく療法で、副作用がほとんど見られないのが大きな特徴です。
また大腸がんの再発の治療法のメインとなっている化学療法と併用することで副作用を軽減することができたというケースもあります。
さいごに
治療成績の良い大腸がんですが、術後の合併症が起こるとQOLを低下させてしまうケースもあります。
もちろん早期発見することが何よりも重要ですので、大腸がんの初期症状を見逃さないようにしたいものです。
トイレで排便した際は必ず自分の便の状態をチェックするよう心がけて早期発見につなげましょう。
近年では医療技術の発達によりステージが重篤な状態であってもがんと共存するような方法も出てきています。
再発、転移と告げられても絶望的にならずに自分の希望するQOLと照らし合わせ、負担のない治療を選択し、食事の見直しや明るく前向きに過ごせる方法を見つけていきましょう。

医療ライター。
医薬系会社にて医療事務に従事する傍らで、美容系サイトにて痩身美容(脂肪吸引など)ついて執筆するフリーライター。
主に得意分野は、がんや免疫療法、経営者インタビュー記事作成など。