大腸がんであることがわかった時、まずは病気について知ることです。
● 医師の説明を聞くこと
● 正しい情報を集めること
● 理解すること
病名として大腸がんと言われても、一人ひとり個性があるように状態や進行していく過程は、全く違います。
大腸がんの進行について、説明します。
目次
大腸がんの進行度分類について
進行していく過程を見極めて、いまどこにがんはあって、どんな治療ができるのかを知りましょう。
大腸がんの病期(ステージ)
がん細胞は、大きくなることで症状が進んでいるとは言えません。
液体が流れ込むように、少しずつ時間をかけて、周辺の粘膜層に広がっていきます。進行が止まることはないので、全身をめぐるリンパ節や血流にも流れ出します。その結果、がんは別の臓器へと転移をしていきます。
● がんが広がっていくこと・・・浸潤
● リンパ節に侵入すること・・・リンパ節転移
● 臓器に転移すること・・・遠隔転移
大腸がんの進行は比較的に遅いとされています。
進行していくと、大腸がんの場合は血流に流れ出して、肝臓や肺そして脳への転移が多いとされています。
進行度分類について
これらの情報を数字とアルファベットを使って、誰にでもわかるように症状の経過を分類しているのが、病期(ステージ)です。
転移リンパ節なし(N0) | 転移リンパ節1〜3個(N1) | 転移リンパ節4個以上(N2)もしくは主リンパ節・側方リンパ節転移(N3) | 遠隔転移がある(M1) | |
大腸の粘膜にとどまっている(Tis) | 0 | |||
大腸の粘膜下層にとどまっている(T1) | Ⅰ | Ⅲa | Ⅲb | Ⅳ |
大腸の固有筋層にとどまっている(T2) | ||||
大腸の固有筋層を越えて広がっている(T3) | Ⅱ | |||
大腸の漿膜表面に露出している(T4a) | ||||
大腸周囲の臓器に広がっている(T4b) |
国立がん研究センター:https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/diagnosis.html
大腸がんの症状と特徴
がんは、体の中にあり自分自身のわからないところで、進行をしていきます。だからといって、気づかないまま過ぎてしまうことはありません。体のどこかに異変が起こり、がんができていることを知らせようとします。
大腸がんを知らせるサインは、腹部や排泄に現れます。
● 排便時に出血する
● 便通異常
● 腹部の痛み
※排便時の出血や下血が続くことで貧血にもなります。
辛い症状が長く続く時には、大腸がんを知らせるサインである可能性が高くあります。まずは、病院を受診して検査をしてもらいましょう。
がんでなければ、不安は減ります。
しかし、体の出すサインに気づく頃には、すでに大腸がんとして、周りに広がり始めています。
大腸がんの初期には、自分で感じるようなサインはほとんどありません。
● 自覚する症状がない大腸がん・・・早期大腸がん
● 体がサインを出す大腸がん・・・進行大腸がん
がんのできる部位
大腸がんと聞くと、大腸全体ががんになるイメージですが、これは総称です。大腸はとても長い臓器で、伸ばしてみると約1.6メートルの長さがあります。これだけの長さがあるので、同じ大腸の中でもそれぞれに名称があります。
● 上行結腸
● 横行結腸
● 下行結腸
● S状結腸
● 直腸
● 盲腸
● 回腸
どの部位にも大腸がんはできます。どこにがんができるのかも、人によりますが日本人の多くが、直腸とS状結腸にがんができるといわれます。
内視鏡検査の所見
大腸がんを目で見て確認することはできません。内視鏡を使って大腸の中を見ることで、初めてがんの存在を認識することができます。
他の検査と違うところは、数値ではなくカメラを通した画像でがんを確認できるところです。現状を知ることで、がんに対する理解も深まります。
がんは、異物または異形と言われ、決まった形はありませんが、見た目でがんとわかる状態です。
また、がんの形やその広がり方をみて、早期または進行しているのかを判断することができます。
0型 表在型 | 早期がん |
1型 腫瘤型 | 進行がん |
2型 潰瘍限局型 | |
3型 潰瘍浸潤型 | |
4型 びまん浸潤型 | |
5型 分類不能 |
早期がん「0型表在型」の細分類
0型:表在型 | 隆起型 | 有茎性 |
亜有茎性 | ||
無茎性 | ||
表面型 | 表面隆起型 | |
表面平坦型 | ||
表面陥凹型 |
大腸癌研究会:http://jsccr.jp/forcitizen/comment02.html
大腸がんの治療方法
手術
大腸がんが進行して、転移の可能性が高くなると治療方法としては、手術となります。
あらかじめ、目的として決められるのは、「どこまで切除するのか?」です。
がんを少しでも取り除くことで、その後の患者の人生を大きく左右します。
● 開腹術を行うのか
● 腹腔鏡手術を行うのか
● 手術をしない、できない
医療の発展は著しいので、必ずしもお腹を開くことはありません。
大きく腹部を切り開く開腹術の場合と、腹部を1〜2cm切るだけで済む腹腔鏡手術の場合とでは、手術が終わった後の回復、社会復帰の早さが違います。
そして、手術をする、しないも選択です。
医師の説明で、早期の大腸だと言われれば、根治を含めて治ることへの期待が膨らみます。逆に、大腸がんで転移していると言われた場合は、必ずしも手術することが適切だとは言えません。どんな状態で、手術で取り除くことは可能なのか、それ以外の治療法もあるのか、主治医と相談して決めることができます。
手術をサポートする治療法
手術で全てのがんを切除することが、一番の理想ですが必ずしもそうとは限りません。
血流やリンパ節に流れ、がんが広範囲にある場合は取り切れず、止むを得ず残してしまうことは、実際にあることです。
手術だけでがんを切除できない場合には、サポートする形で行う治療法があります。
● 化学療法(抗がん剤治療)
● 放射線療法
● 免疫療法
化学療法での抗がん剤の使用、放射線被ばくと問題視される部分もありますが、効果への期待はあります。
また、手術が行える程度にがんを小さくするために、先に化学療法(抗がん剤治療)をすることがあります。
手術後の人工肛門について
大腸がんの進行や症状によって手術内容が変更になりますが、肛門に近い直腸がんの場合は、直腸と肛門を同時に切除することがあります。その場合は、人工肛門(ストーマ)を造設して患者自身で排便コントロールができるように指導します。
5年生存率
がんと聞けば、「あとどのくらい生きられるのか?」そんな風に考えます。
それほどに、がんの根治は極めて難しいものです。
国立がん研究センター中央病院:https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/colorectal_surgery/030/20170830113612.html
10年、20年と長く生きるために、まずは5年後の生存を目標としています。この5年の間に、再発すること、転移することが最も考えられるのです。国や行政、多くの医療機関でデータを元に、集計されています。
再発・転移について
がんの治療や手術をしてもすぐに根治とはなりません。5年を目安に再発の可能性が高いので治療終了後は、数ヶ月に1度のペースで検査を行います。その後、経過が良好であれば年数とともに検査を行う間隔が空いてきます。
大腸がんの転移については、リンパ節や血流に流れ肝臓・肺そして脳へと転移が考えられます。最初の段階で転移が確認されなくても、のちに転移が確認されるケースもあるので検査の継続が必要です。
免疫療法について
現在、がんの治療法として手術・化学療法・放射線療法が主流とされています。根治が難しい症例もあり、緩和ケアを希望される方もいます。
しかし、これらに該当しない治療法の中に「免疫療法」があります。主流とされる3つの治療法に続いて4つ目の治療法として、注目を集めています。
本来、人間の体内には細菌やウイルスが侵入しないように防ぎ、侵入後も異物として除去するだけの抵抗力があります。これを免疫といいます。つまり免疫療法とは、この免疫の力でがん細胞の治療を行うことをいいます。
免疫療法の良い点をご紹介します。
がん治療と併用して期待されること
がん治療において、免疫療法のみで治療を行うことは、ほとんどありません。化学療法などと併用して治療効果を期待します。
化学療法では、がん細胞を壊すために抗がん剤を投与します。しかし、がん細胞にだけ効果が出るとは限らず、状態の良い細胞にまでダメージを与えてしまいます。これでは治療を続ける患者自身の体力を奪ってしまいます。継続して治療が続けられるように、免疫療法にて自己免疫を活性化させ、体力低下を防いでいます。
また、化学療法では副作用として嘔吐・脱毛・口内炎があります。食べられない状態も続きます。こうした副作用も免疫療法を併用して治療している場合であれば、本来の免疫を回復させているので、副作用を軽減することが期待できます。
5年生存率の向上
免疫療法の一つにワクチン療法があります。再発予防としてワクチンの使用を続けても副作用の症状はありません。
他の治療法と併用して体力を維持しながら治療をするだけでなく、再発や転移の予防として使用することで、患者のQOLを向上させ、5年生存率の向上などにも期待が持てます。がんの進行などにもよりますが、予防ワクチンを使用した患者は従来の5年生存率より、15〜20%上昇させているというデータも有ります。
術後のフォローとして、また治療困難な患者には、進行を抑制する効果があると言われています。
大腸がんの予防と検診
大腸がんが増加している原因として、日本人の食生活に問題があるとされています。動物性の高脂肪、偏食などが挙げられ欧米化になった食事が原因です。
肉、野菜、穀物などバランス良く食べることと、油を取りすぎないように調理法を工夫することで、体への負担軽減も期待できます。
また、大腸がんでは、遺伝子異常による発症が確認されています。比較的、若い世代に発症するので、家族で大腸がんを患った人がいる場合は注意が必要です。
がんの発見にはやはり定期的な検診を続けることです。早期発見で生存率も90%以上になります。
まとめ
他のがんと比べて比較的進行は遅いとされますが、発見が遅れたら生存の確率は低くなります。
初期の段階ではほとんど自覚症状はありませんが、便秘や下痢、腹痛など起こるタイミングや回数などに意識することで、早期発見を可能にします。
自分の体に向き合い、観察するように心がけましょう。
出展
国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/index.html
https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/diagnosis.html
独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター
http://www.onh.go.jp/seisaku/cancer/kakusyu/daityog.html#daityog_05

総合病院・クリニック・調剤薬局にて医療事務員として10年以上勤務したのち、ライターへと転身。
現場で学んだ知識と経験を元に、医療に関する取材・執筆活動を行う。
興味のあるテーマは、がん医療・先進医療。