大腸がんは、日本において非常に患者数の多いがんです。
そのため、死亡原因としても男女ともに上位を占めています。
このページでは、大腸がんの症状について詳しくお知らせすると共に、どのようなチェックポイントがあるのかをご紹介します。
また、大腸がん予防に非常に重要な大腸がん検診についてもお知らせします。
目次
がんができた場所による症状の違い
大腸は、小腸で消化吸収された食物の残りから水分を吸い取り、肛門に至るまでにだんだんと便を固形にしていきます。
大腸での水分の吸収が不十分だと、軟便になったり、下痢をおこしたりします。
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大腸がんの特徴に「血便」や「便通異常・腹痛」があります。
しかし、初期の場合出血量が少なく、見つけることができないこともあります。
また、下記の図のようにがんができている場所によって、症状が変化してくるのです。
結腸の右半分にがんができた場合は、出血や便通異常といった症状が出にくいのが特長です。
これは便がまだ柔らかいため、腸管ががんによって狭まっていても、通り抜けることができるため、腹痛が出にくいからです。
また、結腸の左半分にがんができた場合は、出血した血液が腸内に滞在する時間が長いため、黒色に変化したり、粘血便になったりします。
便も硬くなり便通異常や腹痛も出やすくなります。
直腸部分にがんができた場合は、出血してから排便までの時間が短いため、赤色の血便が出ます。
こちらは時折、痔出血と勘違いしてしまう場合もありますので、注意が必要です。
必ず、血便が出現したら、医療機関にご相談ください。
大腸がんがきになる方へ https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/daicho/column/201304/530146.html
大腸がんを早期に発見するための検診項目は?
早期の状態だと、症状が乏しく見つかりにくいという特徴がある大腸がんですが、検診を行うことで、早期発見が可能です。
大腸がん検診で行われているのが、「便潜血検査」と言われるものです。
便潜血検査は、検診受診者本人が、専用の容器に便を採取し、便の中の血液成分の有無を調べるものです。
前項で、がんができる場所により、血便の様子が違ってくることをご紹介しましたが、この便潜血検査は血液成分であるヘモグロビンを検出することで、便中に血液が混ざっているかどうかを調べる検査です。
大腸がんの出血は、がんができた場所によって、血の色が変わり肉眼では見つけられないものである場合もありますが、この検査では、見つけることができるのです。
便潜血検査は、生理中や痔出血でも陽性になる場合がありますので、生理中や痔の症状があるときは避けましょう。
また、大腸ポリープや初期の大腸がんでは、陽性にならない場合もあります。
便潜血反応が陽性になった場合
検診で行った便潜血検査が陽性になった場合は、精密検査を受けましょう。
現在、大腸がんの検診には、内視鏡検査が行われています。
腸管内の便を下剤を用いて排出した後で、肛門から細い管を挿入し、大腸の中を内視鏡で直接検査する方法です。
こちらの検査を行うと、腸管内にできたがん細胞の位置や大きさを調べることができます。
また、細胞を採取し検査を実施することで、ポリープや病変部分の細胞を詳しく検査することができます。
最近では、大腸3D−CT検査と言われる、内視鏡を使わない新しい大腸検査が出てきました。
これは、大腸を炭酸ガスによって拡張させ、新型のマルチスライスCT装置を用いて撮影することで大腸3次元画像を簡単に得ることができる検査です。
また、大腸CT検査はマルチスライスCTコロノグラフィ検査、仮想大腸内視鏡検査(ヴァーチャル大腸内視鏡検査)、大腸3D−CTとも呼ばれており、内視鏡検査と比較して苦痛が少ないと言われ、短時間で検査することが可能です。
また、腹部全体をCTで検査するため、大腸以外の臓器についても同時に検査が可能です。
内視鏡検査は、検査前の準備で大量の下剤を使用し、腸内に便がない状態で検査を実施しますが、こちらの検査はそのような準備は不必要なため、患者様に負担が少ない検査となっております。
大腸がんのチェックポイントは?
大腸がんの初期症状はあまりなく、また他の病気と間違えてしまうような症状が多いのです。
是非とも以下のポイントに気がついたら、大腸がんを疑ってみましょう。
① 下血・血便
便に血が混ざることです。大腸がんの腫瘍からの出血により起こります。
初期の場合は、肉眼では判断できない場合もあります。
② 貧血
持続的にがんからの出血が起こることで、貧血を起こす場合もあります。
特に結腸の右半分(前出のがんができた場所による症状の違いの図を参照)に腫瘍ができた場合は、血便が出ていても気がつきにくいため、知らないうちに貧血症状が悪化してしまうのです。
貧血は自分では気がつかない大きな病気に関係している場合もあるので、軽視せず必ず医療機関にて原因を調べてもらいましょう。
自己判断は禁物です。
③ 通過障害(腸閉塞)
がんの発育により腸管の内側が狭くなることによって起こります。
他の病気でも起こる症状のため、気がつかない場合も多いですが、このような症状を感じたら、是非とも病院を受診してください。
通過障害では、便が細くなったり、お腹が張るような症状が出ることがあります。
④ 下痢・便秘
下痢や便秘も大腸がんにはよくある症状です。
腸管内のがんが大きくなってくると通過障害を起こすのですが、便が出にくくなり、腸管内を通り抜けるために少量つ回数を分けて排便するようになるため、結果として下痢や便秘に似た症状になるのです。
下痢や便秘を繰り返すようなことが多いと思った時は、大腸がんの検診を受診しましょう。
⑤ 40歳以上である
大腸がんは加齢とともに、発病リスクが高まります。
40歳以上の方は毎年大腸がん検診を受診しましょう。
⑥ 血縁者(3等親以内)に大腸がん患者の方が居る
大腸がんには遺伝が関係している場合もあります。
主な家族性大腸がんとしては、遺伝子の異常を修復する働きを持つ遺伝子自体に異常が起こることによって発生する「遺伝性大腸がん(リンチ症候群)」と、大腸にたくさんの腺腫ができる「家族性大腸腺腫症」の2つが知られています。
両親、祖父母など、近い血縁者がこうした病気だった場合、50歳未満のうちに大腸がんになる可能性が高くなります。
がんの予防
今まで大腸がんについてのチェックポイントを中心にご紹介してきました。
大腸がんに限らず、がんの予防はこれからの時代必要不可欠なことです。一般的ながんの予防をおさらいしてみましょう。
国立がん研究センターが作成したポスターをこちらで紹介させていただきます。
国立研究開発法人国立がん研究センター https://epi.ncc.go.jp/can_prev/
がんの予防には、禁酒・禁煙・バランスの良い食事・適度な運動・そして、適正な体型の維持が重要であることがわかります。
これらは、がんの予防につながるだけでなく、健康の維持にもつながりますので、常に意識して取り組みたいものです。
まとめ
大腸がんは、発生した部位によって症状が違い、また初期では顕著な症状が出ることが少ないため、見つかりにくいがんでした。
しかし、近年大腸がん検診が盛んに行われるようになり、大腸がんが初期の段階で発見できるようになってきました。
がんのリスクを減らすための健康習慣を続けることで、予防にも結びつきます。
是非とも積極的にがんの予防に取り組みたいものです。
岩崎どど(イワサキ・ドド)
医療ライター・臨床検査技師。
総合病院の臨床検査科勤務時代には、病棟を回り心電図検査や採血などをしておりました。
患者様との会話の中から、病気の苦しみや様々な悩みなどを見聞きした経験を生かし、
がんに関する記事を寄稿しております。また、がん患者を持つ家族としての立場から、
「今」知りたい最新のがん治療について特にお伝えしていきます。
HP 「どどの家」https://dodoiwasaki.com/
国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/index.html
大鵬薬品
https://www.taiho.co.jp/kenko/sign/colon/
大腸がんがきになる方へ
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/daicho/column/201304/530146.html
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医療ライター・臨床検査技師。
医療の現場での経験を生かして、がん患者を抱える家族として、
がんに関する記事を寄稿しております。