予後が厳しいと言われる骨腫瘍の治療法は?

骨腫瘍が進むと骨が弱くなり、骨折で見つかることもあります。

骨折すると治療が困難になることもあるので、骨腫瘍の疑いがあると診断されたら専門医を受診するまでなるべく安静にし、診断がつくまで松葉杖などを使用して体重をかけないようにしなければなりません。

 

骨に発生する肉腫には非常に多くの種類(組織型)があります。

その中でも最も多いのは骨肉腫で全体の約3割を占めます。

非常に稀な病気であるにも関わらず、発症する年齢や病気の種類が多様で、治療方法も病期によって異なることから、骨腫瘍が疑われた場合には直ちに治療経験の豊富な施設で診断し、治療することが望まれます。

 

 

目次

骨腫瘍とその種類

骨腫瘍とは

骨腫瘍とは原発性骨悪性腫瘍のことを指し、骨自体からがんが発生するがんで、主に肉腫と呼ばれるがんです。

骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨巨細胞腫 などの種類があります。

 

肉腫は体中のどこにでもできるがんの一種ですが、そのうち骨の肉腫は全体の約25%です。

骨軟部腫瘍登録によると、日本全体で年間500人から800人程度の骨に発生する肉腫の患者さんが発生していると推定されています。

 

種類

悪性骨腫瘍(骨腫瘍と転移性骨腫瘍)

悪性骨腫瘍には、10代に発症しやすい骨肉腫に代表される原発性骨腫瘍と、肺がんや乳がんの骨への転移に代表される転移性骨腫瘍があります。

 

 骨腫瘍:

原発性骨腫瘍で、初めから骨にできる腫瘍です。

他の臓器や組織には転移をしない良性骨腫瘍(骨の良性腫瘍)と、発生した場所で大きく発育するだけでなく他の臓器や組織に転移する可能性のある悪性骨腫瘍(骨のがん)が含まれます。

 

テレビドラマなどでも取り上げられることも多いために、名前はとてもよく知られている病気ですが、年間発生は200人~300人に過ぎません。

主な症状は痛みですが、画像検査で骨に変化があるまで症状がないこともあります。

 

治療法は化学療法と手術(外科治療)からなり、放射線治療はあまり効果がないと見なされています。今までの数多くの臨床研究によって、ほぼ世界的に標準的な治療法は、術前化学療法→手術→術後化学療法、です。

 

転移性骨腫瘍:

肺がん、乳がん、前立腺がんなど、臓器にできたがん、および筋肉などに発生した肉腫が骨に転移した場合です。

悪性骨腫瘍全体では転移性骨腫瘍が大半を占めます。

怪我をしていないのに痛みや腫れがあり、長く続くこともあります。骨がもろくなり、骨折で発見されることもあるようです。

 

膝、股関節、肩だけでなく脊椎にも高い頻度で見られます。

 

良性骨腫瘍 :

骨に発生した腫瘍のうち、転移も含め生命に悪影響を及ぼすことがない腫瘍の総称です。

これらの種類は20種類以上あります。

 

そのうちの主要なものを紹介します。

 

■軟骨肉腫

主に40歳代以上の比較的中年、高齢の方に発症します。

発生しやすい部位は大腿骨、骨盤、上腕骨です。治療は基本的に手術が中心となり、抗がん剤や放射線治療は効果が乏しいことが知られています。

 

軟骨肉腫にも様々な悪性度やタイプがあり、それに応じて治療方法も変わってきます。

 

■ユーイング肉腫

骨以外の体中の軟部組織のどこにでも発生することが現在では分かっています。

主に20歳以下の若年者に多いですが、高齢者も発生するようで、大腿骨、脊椎、骨盤骨、に起こりやすいです。

治療法は化学療法と手術を合わせたものが主流で、ユーイング肉腫でも骨肉腫同様に標準的な治療が定まっています。

放射線の感受性が比較的高いため、切除ができない症例では手術の代わりに放射線照射を行うこともあります。

 

■骨巨細胞腫

厳密には悪性骨腫瘍ではありませんが、WHOでも再発率が高いことや肺転移を生じることから中間悪性腫瘍としてとらえられています。

主に20代前後の方に膝周囲に起こりやすいようです。

 

治療は手術療法が中心でしたが、2014年より切除が非常に難しい症例に対してデノスマブという新しい薬が適応できるようになりました。

 

 

腫瘍が見つかるパターン

【悪性腫瘍】

肺がんは進行すると、がん細胞が周りの組織を破壊しながら増殖してゆき、血液やリンパ液の流れに乗って広がっていきます。

肺がんが転移しやすい場所は、脳、肝臓、リンパ節、副腎、骨です。

骨転移が起こると、手足の麻痺、高カルシウム血症、腰や手足の強い痛みなどいろいろな症状が現れます。

また、転移により骨の破壊が進むため、骨がもろくなって骨折しやすくなります。

 

【良性腫瘍】

膝、股関節周囲、手の骨に発生しやすく、運動や歩行時の痛み、骨の隆起や、骨折によって発見されることもあります。

痛みはほとんどが軽度で進行も遅いですが、夜間に痛みがあるなど強い痛みを伴うものもあります。

 

 

診断

最初に、年齢、発生した時期、場所を問診します。

診断には血液検査の他に、レントゲン、CT、MRI、骨シンチグラフィー、PETなどの画像検査をする必要があります。

最終的に生検を行い、腫瘍組織を採取して、病理医が細胞を良性か悪性か、どんな病気なのかを確認することで診断します。

 

治療法

なかでも問題なのは、太ももの付け根の骨折です。

ここが折れると、歩けなくなり、寝たきりになることも少なくありません。

そして、それが寿命にも影響します

 

骨に転移した場合、骨そのものに手術はできないため根治が難しく、QOLをいかに低下させないかが重要になります。

 

手術

骨に転移したがんを取り除く直接的な手術をすることはまれですが、骨転移による合併症である骨折と脊髄圧迫に対する手術があります。

 

ある一定期間の化学療法(術前化学療法)後に行うことが多いです。

 

手術の主な目的は、安全かつ完全に腫瘍を取り除くことです。

この30年で、化学療法と正確な画像評価技術の進歩したことで患肢温存手術が標準的になりました。

以前であれば切断の絶対的適応であった病的骨折後の症例もこの患肢温存手術を受けることが可能となりました。

 

化学療法

骨肉腫は全身に広がる疾患と捉えられています。

通常の画像検査では、初診時に全患者の1~2割しか転移巣が検出されないのですが、約8割の患者は初診時に画像検査で認められない微小転移があると考えられています。

そのため、抗がん剤の全身投与を行うことで目視できない転移に働きかけることができます。

これまでに、骨肉腫に対して、手術と組み合わせた化学療法の有用性が示されています。

一度転移してしまうと、治療はより困難となり、治療成績も悪くなってしまいます。

 

 

 

放射線治療

骨の痛みの緩和以外に病的骨折の予防、骨折の治癒の促進、脊髄圧迫の治療と予防など、目的とする部分に対する直接的に治療する方法です。

しかし、骨転移およびその痛みが全身に広がった場合に、照射することによる副作用が懸念されます。

 

上記3大療法以外のケア

緩和ケア

骨の痛みに対しては鎮痛剤などももちろんありますが、上記に挙げた治療法以外に緩和ケアという療法もあります。

骨転移で初めてがんが発覚した患者にとっても、がんが進行しないように治療に向き合ってきた患者にとっても、「骨転移があります」と診断されたら「末期なのではないか」、「助からないのではないか」と人生に見放されたような気持ちになることも避けられません。

そのように絶望的になったときに、緩和ケア専門家によって身体的、精神的サポートを受けられます。

 

緩和ケアは保険が適応されていますので、治療における経済的な負担もそれほどかかりません。

 

 

免疫療法

がんと免疫のメカニズムは、健康な方を例に取ってみると、がん細胞は体の免疫が排除します。

しかし免疫が弱っているとがん細胞を排除できなくなり、どんどん進行させていきます。

骨転移の場合手術ができないため根治な治療ができないケースもあります。

このため副作用のある化学療法や放射線治療と組み合わせた免疫療法も注目されています。

 

免疫療法では自身の体に備わっている免疫を使って、免疫本来の力を回復させることでがんを治療する方法です。

化学療法単体だと免疫力を下げてしまいますが、副作用を伴わない免疫療法を併用すれば免疫力を落とさずに、そして化学療法による副作用を軽減させながら治療ができます。

 

免疫療法はがんになる前から予防としても使用することもできますが、末期のがん患者にとっては治療におけるストレスの軽減といったQOL(生活の質)の向上の観点から取り入れることも少なくありません。

 

さいごに

この30年で、骨肉腫に対する治療法は飛躍的に進歩しました。

 

その大きな要因としては、集学的治療(手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、ホルモン療法などのがんの治療法を組み合わせることで治療成績を向上させること)の重要性が認知され、生存率が大きく改善しました。

 

がんが骨転移するとステージとしてはほとんどの場合がⅣ期と判断され、一般的には予後が厳しくなるのは事実です。

しかし、直接死に関連するのは肺や肝臓、脳に発生するがんと違って、骨転移がそのまま死につながることはありません。

実際、骨転移をしていてもがんと上手に付き合いながら、長く生存している患者さんもたくさんいます。

 

そのためにも、なるべく早期にがんを発見し、適切な治療を受けることの重要性を知っておきましょう。

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