膀胱がん

膀胱がんの症状で最も多いのは血尿です。血尿のなかでも尿検査をやって初めてわかるような血尿ではなく、多くの方が実際に自分の目で見て真っ赤な尿が出て膀胱がんと診断されます。膀胱がんが原因で血尿が出る時には、痛みが全くないことがよくあります。逆に、多くはありませんが、血尿が出ずにおしっこの時の痛みなどで見つかる方もいらっしゃいます。

他のがんにも言えることではありますが、膀胱がんのリスクとして特に喫煙があると言われています。

ここでは膀胱がんについて理解を深め、リスクに備えていただけるような情報をご紹介します。

 

膀胱がんとは

膀胱の機能

膀胱は骨盤内にある臓器で、腎臓でつくられた尿が腎盂(じんう)、尿管を経由して運ばれたあとに、一時的に貯留する一種の袋の役割をもっています。膀胱には、尿が漏れ出ないよう一時的にためる働き(蓄尿機能)と、ある程度の尿がたまると尿意を感じ尿を排出する働き(排尿機能)があります。
膀胱を含め、腎盂、尿管、一部の尿道の内側は尿路上皮(以前は移行上皮と呼んでいた)という粘膜でおおわれています 。

 

膀胱がん

膀胱がんは、尿路上皮ががん化することによって引き起こされます。そのうち大部分(90%以上)は尿路上皮がんという種類ですが、まれに扁平上皮がんや腺がんの場合もあります。

膀胱の尿路上皮(移行上皮)粘膜より発生する悪性腫瘍であり 、病理組織学的には その約90%以上は尿路上皮がんです。 その他 では扁平上皮がんが数%、 腺がんが2%弱をています。 

 

日本人の男性では、膀胱がんは 男性が多い理由ははっきりとはわかっていませんが喫煙が一つの理由と考えられています。ですが、喫煙しない方の統計を取ってみてもやはり男性の方が3-4倍多いことが分かっており、喫煙に関わらず男性がかかりやすい疾患であることは間違いありません。

 

 

膀胱がんの症状

膀胱がんの症状は、赤色や茶色の尿(肉眼的血尿)が出ることが最も一般的な症状です。また、頻繁に尿意を感じる、排尿するときに痛みがあるなど膀胱炎のような症状を来すこともあります。膀胱がんの場合は、症状が軽い、あるいは 症状が出現したばかりだとしても、がんの進行がゆっくりで、早期の状態であるとは限りません。症状が出現したときにはすでに筋層浸潤性がんや転移性がんであったということもあります。いずれにしても症状があれば医療機関を受診して、がんかどうかを診断しましょう。がんと診断された場合は、早期に治療を開始することが肝要です。下記に自覚できる主な症状を紹介します。

 

肉眼的血尿

肉眼的血尿とは、血の色を目で見て認識できる尿のことです。肉眼的血尿は、最も頻度の高い膀胱がんの症状で、一般的に痛みなどを伴わない無症候性です。血のかたまりが出る場合もあります。しかし、血尿があるからといって、必ずしも膀胱がんをはじめとする尿路系のがんがあるとは限りません。
数日経過すると血尿が止まるなど一過性の場合がありますが、そうした場合も早めの受診が必要です。

 

膀胱刺激症状

頻尿や尿意切迫感、排尿時痛や下腹部の痛みなどの膀胱刺激症状が出現する場合もあります。これらの症状は膀胱炎と非常に類似していますが、抗生剤を服用してもなかなか治らないことが特徴です。

 

背部痛

初発症状になることはまれですが、膀胱がんが広がり尿管口を閉塞するようになると尿の流れが妨げられ、尿管や腎盂が拡張してくることがあります。これを水腎症と呼んでいます。水腎症になると背中の鈍痛(背部痛)を感じることがあります。尿管結石でもこのような症状を呈することがあります。

 

原因

膀胱がんの確立されたリスク要因は喫煙です。男性の50%以上、女性の約30%の膀胱がんは、喫煙のために発生するとの試算があります。

日本泌尿器科学会の膀胱がん登録データベースの解析では 、喫煙者の膀胱がんの発症は 非喫煙者より約5~6年早いことが判明しています。

その他のリスク要因の候補としては、フェナセチン含有鎮痛剤、シクロフォスファミド、骨盤内臓器に対する放射線治療の際の膀胱への被曝などがあげられます。
近年、糖尿病治療と膀胱がん発症との関連があるのではという指摘もなされています。

また、職業でナフチルアミン、ベンジジン、アミノビフェニルといった危険物質にさらされる(曝露:ばくろ)ことも確立したリスク要因とされています。

 

生存率

膀胱がんの生存率は下記の通り です。ステージⅣから劇的に生存率が落ちていることが分かります。(2005-2007年膀胱がんの診断や治療を受けた方が対象。)

 

病期

症例数(件)

5年相対生存率(%)

I

829

91.7

II

312

73.7

III

200

60.7

IV

154

15.9

全症例

1,559

75.5

 

 

■治療法

手術

膀胱 がんの外科的な治療は、大きく分けて2つの方法があります。1つは、専用の内視鏡で腫瘍を切除するTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)です。もう1つは、下腹部を切開して膀胱を摘出する膀胱全摘除術です。

 

TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)

全身麻酔あるいは腰椎麻酔を行って、専用の内視鏡を用いてがんを電気メスで切除する方法です。 筋層非浸潤性がんの場合、病態によってはTURBTでがんを完全に切除できることもあります。しかし、表在性がんは膀胱内に再発しやすいという特徴があり、再発のリスクが高いと判断された場合には、予防的に膀胱内注入療法が実施されることがあります。

手術時間は1時間程度です。手術後、尿を体外へ誘導するために、膀胱内に管(カテーテル)を留置します。翌日に抜去しますが、状況によっては数日間留置することもあります。病態によっては、手術当日あるいは翌日に再発を予防する目的で、膀胱内に生理食塩水で溶解した抗がん剤を注入する膀胱内注入療法が併用されることがあります。組織検査の結果、ハイリスク筋層非浸潤性膀胱がんと判断された場合には、再度TURBT(2nd TUR)が行われることがあります。

 

膀胱全摘除術

筋層浸潤性がんと一部の筋層非浸潤性がんの最も有効な治療法とされています。
全身麻酔を使用し、下腹部に切開を入れ、尿管の切断をしたあと、膀胱の摘出を行い、男性では前立腺と精嚢(せいのう)を摘出します。がんの状態によっては尿道も摘出することがあります。女性では子宮と腟壁の一部、尿道をひとかたまりとして摘出するのが一般的です。

 

 

放射線療法、化学療法

手術に耐えられる 体力がない場合、すでに全身に転移している場合は下記の2つが選択されます。

 

・放射線治療

ご年齢や合併症などの理由で膀胱全摘除術が困難な場合、放射線と抗がん剤を併用して治療します。

また、転移がある膀胱がん患者さんに痛みを取ることを目的として転移部位に放射線療法を行うこともあります

 

・抗がん剤

CTやMRIで既に転移(リンパ節や肺など他の部分にがんがある状態)が疑われる場合やがんが膀胱の周囲に広がっている場合は抗がん剤による治療が有効です。

 

合併症と後遺症

膀胱がんは合併症を併発しやすく、また後遺症も残りやすいがんです。下記に詳しく説明します。

 

合併症

(1)感染

抗生物質に耐性をもった大腸菌や緑膿菌、表皮ブドウ球菌が感染の原因の場合には治療に難渋したり、多臓器不全になり 致死的になることがあります。

(2)吻合不全(ふんごうふぜん)

腸管を利用して尿路変向術を行った場合には、腸管の吻合不全を起こすことがあります。腹膜炎を併発した場合には、緊急手術が必要となることがあります。

(3)肺梗塞(エコノミークラス症候群)

手術時間が長いこともあり、血が静脈内で固まって肺動脈を詰まらせる肺梗塞(エコノミークラス症候群)が発生することがあります。大きな血管が閉塞すると致死的となる場合があります。

(4)水腎症

尿路変向術に際して、尿管や尿道と腸粘膜の接合部分やストーマなどに狭窄を生じることがあります。このような状態になると、尿の流れが悪くなり、尿がうっ滞する水腎症という状態となります。そのまま放置すると腎臓の機能が障害されます。このような場合には再度、狭窄部分に管を通し、尿の流れを確保する必要があります。その後の経過により管が不要となる場合もありますが、常に管を入れておかなくてはならないことも、 あります。

 

後遺症

(1)消化管運動障害

術後はなかなか腸の調整が利かず、便秘あるいは下痢になることが多く、時に便秘と下痢を交互に繰り返すこともあります。時間の経過とともに落ち着いてくることが多いのですが、整腸剤や下剤の服用が必要となることもあります。

(2)膀胱機能障害

膀胱を摘出することにより膀胱が本来もつ、尿を何らかの方法でためる蓄尿機能とたまった尿を排出する排尿機能を代用する必要があります。

(3)性機能障害

男性の場合、射精はできません。また、前立腺側面を走行する勃起神経を切除することが多く、その場合には勃起機能も失われます。がんの状態によっては勃起神経を温存できることもありますが、それでも十分な勃起が得られないことも多くあります。

 
女性の場合、子宮と腟の一部を膀胱と一緒に切除することが一般的です。この場合、腟が少し短くなりますが、性交渉は可能です。

 

(4)長期間経過後の腎機能障害

尿路変向術後は、特に大きな合併症がなくても、長期的(数年~十数年)には腎臓の働きが悪化することがあるとされています。

 

 

治療サポート、予防としての免疫療法

表在性膀胱がんで、経尿道的膀胱腫瘍切除術を行った場合の5年生存率は95%以上です。しかし、再発を繰り返しているうちに浸潤性膀胱がんへと進み、膀胱全摘術が必要となることもあります。

再発予防として免疫療法も検討することができます。がん細胞というのは、手術をしたとしても体のどこかに残っていて再発や転移をする可能性があります。そのがん細胞が、症状も示さずに水面下にいる ということを、一度がんを発症したことのある患者 は注意して生活しなければなりません。一度がんを発症し、転移や再発を避けたいという強い希望を持っている患者 には免疫療法で予防をする方も実際にいらっしゃいます。

免疫療法は自己の免疫を活用して免疫力を高めていく療法で、副作用がほとんど見られないのが大きな特徴です。

 

 

さいごに

タバコを吸う人は吸わない人に比べて2~4倍膀胱がんにかかりやすいとされています。膀胱がんにかかったあともタバコを吸い続けると再発の危険性が高まり、また悪性度の高いがんへ進行する場合が少なくないとされています。手術を行う際にも、心臓や肺に関連した合併症の危険性が高くなります。喫煙を続けたい方はこのようなリスクがあることを知って定期的な健診を欠かさないようにしましょう。

 

 

医療ライター 吉田あや

得意分野:医療系ライティング、経営者インタビュー記事など。

がんの免疫療法完全ガイド

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