欧米ではがんの疑いがあると「まずPET検査を受けましょう」と言われています。
PET検査とはどういった検査なのか見ていきましょう。
目次
PET検査とは?
PET検査という検査の名前を聞いたことはあるでしょうか。
PET検査はがん検査の方法の一つで、ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(Positron Emission Tomography) (陽電子放射断層撮影)のことです。
がんは疑いのある段階で発見するのは難しく、実際に腫瘍ができて何らかの体調不良や目に見える異常が体に生じてから見つかることが多く、がん細胞の成長がある程度進んでから発見されることが多いです。
しかしPET検査は、早期のかなり小さいがんを発見することができるのです。
PET検査のしくみ
従来のレントゲン(X線)やCT、MRIなどの検査は、写し出された造形からがんを感知しますが、PET検査は細胞からがんを探しだします。
がん細胞は正常細胞に比べて3~8倍のブドウ糖を取り込みます。
PET検査はこの性質を利用した検査です。ブドウ糖に近い成分(FDGと呼ばれる放射性物質)を体内に注射し、しばらくしてから全身をPETという医療装置で撮影します。
検査のしくみとしては、ブドウ糖を多く取り込んでいる細胞を探し、がんを検知します。
PET検査は痛みや苦痛もほとんど無いため、検査を受ける方にも精神的ストレスや身体的な負担の少ない方法と言われています。
世界と日本におけるPET検査
がんに似た腫瘍である悪性リンパ腫の国際的な評価基準では、PET検査の評価を利用することが一般的となっています。
最先端の悪性リンパ腫の治療にはPET検査による評価が必須になってきているようです。
また、欧米では「がんが疑われたらまずはPET検査を受けましょう」と言われているほど、定着しています。
まずはPET検査の結果をみて、治療方針を決定するのが普通になっているようです。
日本においては一部の疾患を省き保健医療として認可されておらず、まだ一般的に広まっていませんが、その検査の質の高さに、近年急速に普及しつつあると言われています。
PET検査では具体的にどのようなことが分かるの?
①PET検査は、がんの性質(悪性度)診断や転移・再発巣の診断、あるいは治療効果判定に有用性が高い検査です。
通常の画像診断であるX線、CT、MRI、超音波検査はがんの形状や大きさを見る検査です。
それに対してPET検査では、がん細胞の活動性や悪性度合いを知ることができると考えられています。ブドウ糖に似た検査薬をたくさん取り込む細胞ほど、画像上明るく光るというメカニズムです。
小さくてもPET検査で悪性度の高いがんが疑われれば、手術の範囲を広げたり、あるいは抗がん剤を併用して小さくしていくなど適切な治療方針を選択することができるようになります。
例えばCT検査で腫瘍が見つかったが、悪性か良性かの診断が分からないときなどに組み合わせることで検査結果がより効果的になります。
②予期せぬところに発生した転移や再発を、早期に発見できる可能性があります。
がんは別の臓器に転移したり、一度治療してもまた再発したりする場合があります。
再発や転移がどの臓器に起こるかは予測できないので、今までは可能性の高い臓器に対してだけ、超音波検査やCT等が行われていましたが、PET検査の優れた点は1回の検査で全身のがんの可能性を見つけることが可能なことです。
③従来よりも早い段階で放射線治療や抗がん剤療法の効果を診断することが可能です。
がん細胞は死滅するよりも先に活動性が低下するのでこれにより、次の治療方針を早く決めることができる場合もあります。
PET検査の不得意分野
上記ではPET検査で分かること、長所について説明しました。
次ではPET検査の不得意分野について2つ触れていきます。
① PET検査では見つけにくい部位や種類がある
がんが1 cmほどになればPET検査で発見できるといわれており、PET検査が得意としているがんは早期に発見される甲状腺がんや大腸がんです。
ただし、がんのできる場所、種類によっては見つけにくいものがあります。
それは、肺がん、乳がん、大腸がん、頭頚部がん、転移性脳腫瘍、膵がん(すい臓がん)、
悪性リンパ腫、転移性肝がん、原発不明がん、悪性黒色腫、食道がん、子宮、卵巣がん、前立腺がん
などです。
PET検査ではブドウ糖に近いFDGが体内の細胞で反応し、放出される放射線を体の外からPETカメラで撮影しますが、例えば食道がんは腫瘍体積が小さいため反応しにくく、尿路系のがんはFDGが尿とともに排泄されてしまうからと言われています。
また、糖分を必要としないがん細胞、炎症を起こしている部位(FDGが集まるため)、元々糖分を持つ脳や心臓、有用性の低い肝細胞がん、胆道がん、白血病、糖尿病を持つ場合にはPET検査は有効ではありません。
② 空間分解能が悪い
写真で例えれば、ピントがずれたような画像のことです。
したがって、 PETの画像だけでは異常が発見されてもピントが悪いために、どこに腫瘍が位置しているのかという正確な場所が分からないことがあります。
PET検査の弱点をカバーするほかの検査との組み合わせ
上記に挙げた2つの不得意分野をカバーするために、PET検査とCTやMRI等を組み合わせる検査方法があります。
ほかの検査を併用することにより双方の長所と弱点がカバーされ、更に精度が高くなり画像を重ねることで断定しやすくなります。
その一例として、PET/CTという医療機器があります。
今まで、CTとPET検査は、別に撮影していたことから時間差がありましたが、この装置では同時に検査することが可能になりました。
また、PET/MRIという装置もPET/CT同様2つの検査が1度でできるというメリットがあります。
いずれにせよ、患者さんに対してPET検査が有用かそうでないかに関して専門的な判断が必要ですので、検査を受ける前に専門医(放射線科医)に相談してみましょう。
PET検査における被ばく
PET検査では、だいたい3.5~7mGyの被ばくをします。
またPET/CT検査では、これにCT検査分の被ばくが加わり、約25mGyの被ばくをします。
これらは、人体に影響が出るほどの量ではありませんので、心配は要りません。
ただし、胎児あるいは乳児は、放射線の影響が出やすいので、妊産婦や授乳中の女性は検査を受けることが出来ませんので検査前に妊娠の可能性がないことをご確認下さい。
PET検査およびFDG-PET/CT検査では、放射性薬剤を静脈注射するため、体の内側から被ばくします。投与された薬剤は、糖代謝の盛んな臓器に集まり、時間とともに減衰しますが、水分を多く取り集まらなかった放射性薬剤を早く体内から出すことで被ばくを軽減が可能とも言われています。
PET検査は万能ではない
国立がん研究センターのがん予防・検診研究センターがある年のがん検診でのPET検査陽性率の解析を行っており、1年間でがん総合検診を受けた約3千人中、約150人にがんが見つかり、そのうちPET検査で陽性となったのは15%に過ぎないというデータが発表されています。
逆に言うと85%のがんがPET検査では発見することができないと言えます。
「数ミリでもがんが見つかる」といった誇大宣伝広告などもありますが、あくまで がんの転移などの病変の広がりやがんの再発を見つけるということが検査の大きな目的です。
自分の診断されたがんがPET検査の検査効果を期待できるものなのか、CTと組み合わせると良いのかどうかなどを調べ事前に検討しましょう。
PET検査で早期のがんが見つかったら
PET検査でがんの疑いのある腫瘍が見つかったらすぐに検査を受けましょう。
PET検査で見つかるがんはまだ早期のがんですし、早期で見つかればがんは対応策を選ぶことができます。
正式にがんであると診断されたときに勧められるのががんの3大療法である
手術 ・ 放射線治療 ・ 抗がん剤治療
のうちの1つですが、その他早期の段階で検討しておくとより良い治療法に繋がると言われている
免疫療法を紹介します。
早期のがんには免疫療法を検討しましょう
免疫療法という言葉を聞いたことがありますか?PET検査でがんと診断されたらがんの3大療法と呼ばれる 手術、放射線療法、抗がん剤治療 のどれかを主治医から提案されることが大多数です。
また、PET検査で転移が見つかった場合もますます強い治療をしなければならないことになるかもしれません。
免疫療法は早期のがんに特に効果を発揮するのですが、どのステージのがんにも有効性があります。
3大療法のうち副作用が一番大きいのは抗がん剤と言われていますが、副作用の辛さだけでなくDNAの細胞をも破壊してしまうほどの力があります。
がんは免疫力が低下した結果起こる病気であることが多いです。
抗がん剤など免疫を強く傷つけてしまう療法は、がんに対応できる体作りを弱らせてしまいます。
また放射線療法にも抗がん剤ほどではありませんが、副作用や後遺症が発生します。
手術を受けた場合もご高齢の方には体の負担が大きく、転移や再発の懸念もあるでしょう。
免疫療法は人間の体に本来備わっている病気を防ぐ力を最大限に引き出していく治療法です。
がん細胞は元々正常細胞が変化したもののため、免疫力が十分に働いてくれれば、人体に悪影響を及ぼすほどまでに大きくなることはあまりありません。
生まれてくるがん細胞の数や増殖速度よりもそれらを殺傷する免疫力の数と力が強ければ、がんを押さえ込むことができるという理論です。
免疫療法は自分の細胞を使っていく療法のためほとんど副作用がないのも利点です。
食事療法と運動
PET検査でがんと診断されたとき、上記の免疫療法を取り入れながら食事を見直し、運動も生活の一部に取り入れていきましょう。
食事は免疫力を上げるために重要ですので、バランスよくきちんと食事を取って体力をつけていきましょう。
がんのときは治療に体力を奪われるので体重を増やすくらいの意識で構いません。
がんになる患者には動物性脂肪を多く摂取している人が多かったというデータもありますが、動物性脂肪を避け野菜ばかりになるのも偏り過ぎです。
野菜中心は確かに医学的に効果がありますが、何よりもバランスが大事なので偏らないようにしていくことが重要です。
また、直射日光を避け、ストレスをためず、ビタミンなどの抗酸化作用のある栄養素を摂る事、そして体内に発がん物質をためないような食生活を実践することが大切です。
がん患者の運動については
“がんサバイバーの栄養と運動に関する米国対がん協会2012年ガイドライン”
において下記のように推奨されています。
① 健康的な体重へ減量し、その体重を維持しましょう。
② 過体重や肥満の場合は、高カロリーの食物や飲料を制限し、減量するために運動量を増やしましょう。
③ 運動不足を避けましょう。そして、診断後もなるべく早く通常の日常生活を取り戻しましょう。
④ 1週間に150分以上運動することを目標としましょう。
⑤ 1週間のうち2日以上は筋力トレーニングを運動の中に含めましょう。
是非こちらを参考に生活に取り入れてみて下さい。
がんにならないための免疫療法
がんが見つかったら、早い段階であればあるほど免疫療法は効果的です。
がんが見つかる前の予防として40歳後半からの“がん年齢”に達したら、NK細胞や樹状細胞の活性化を維持する方もおり、事実そのような予防をしている方で、糖尿病や高血圧の合併症などの無い多くの方々が80歳を超えても元気に過ごしているという例も多くあります。
さいごに
がんが見つかったからといって必ず死んでしまう病気ではありません。
どうしても悲観的なイメージをしてしまうかもしれませんがそんなことはありません。
もしがんと診断されたなら「免疫」という観点からがん治療を考えるのも予後のQOLにとっては重要です。
もし自分の家族にがんの既往歴がある方などは予防対策として免疫療法を生活の一部に取り入れるのはいかがでしょうか。
NK細胞を活性化するアジュバント療法は免疫力を上げ若返りも可能にする要素もあります。
医療の発達により今後人間の寿命が延びることが予測されています。
平均寿命が延びていく中で、自身のトータルの人生を豊かに過ごすために、是非参考にしてみて下さい。

医療ライター。
医薬系会社にて医療事務に従事する傍らで、美容系サイトにて痩身美容(脂肪吸引など)ついて執筆するフリーライター。
主に得意分野は、がんや免疫療法、経営者インタビュー記事作成など。