食道がんのステージ別治療法や5年生存率について解説

 

 

食道がんは初期症状があまりなく、かつては治りにくいといわれていました。

最近では少しずつ早期発見が可能になり、近年の胸腔鏡手術など外科治療の発達により多くの患者さんが食道がんを克服できるようになっています。

 

 

目次

食道がんのステージ

食道がんのステージ(病期)は、以下の3つの要素の組み合わせにより決まります。これをTNM分類と呼びます。

 

食道がんのTNM分類

T因子:がんの広がり(primary tumor/原発腫瘍)

T1a        がんが粘膜内にとどまる

T1b        がんが粘膜下層にとどまる

T2          がんが固有筋層にとどまる

T3          がんが食道外膜に広がっている

T4          がんが食道周囲の組織まで広がっている

 

N因子:リンパ節転移があるか(regional lymph nodes/所属リンパ節)

N0         リンパ節転移がない

N1         第1群リンパ節のみに転移がある

N2         第2群リンパ節まで転移がある

N3         第3群リンパ節まで転移がある

N4         第4群リンパ節まで転移がある

 

食道がんのリンパ節転移は、頸部・胸部・腹部の3領域に起こることが知られています。

食道がんができる場所によって転移の危険度が異なり、がんが起こる部位に応じて、転移しやすい順番に1群から4群までリンパ節が群分けされています。

 

M因子:別の臓器への転移があるかどうか(distant metastasis/遠隔転移)

M0         遠隔転移がない

M1         遠隔転移がある

 

食道がんのステージ

0期(早期がん・初期がん)

・がんが粘膜にとどまり、リンパ節や別の臓器、胸膜、腹膜(体腔の内面を覆う膜)に転移が認められないもの

 

I期

・がんが粘膜にとどまっているが近くのリンパ節に転移があるもの

・または粘膜下層まで浸潤しているもの

・リンパ節や別の臓器および胸膜・腹膜に転移は認められない

 

II期

・がんが筋層を越え食道の壁の外にわずかに出ているもの

・またはがんが粘膜下層までにとどまっているが、病巣近くのリンパ節のみに転移が認められたもの

・別の臓器および胸膜・腹膜に転移は認められない

 

III期

・がんが食道の外に明らかに出ていると判断されたもの

・食道壁に沿うリンパ節か病巣から少し離れたリンパ節に転移があると判断されたもの

・別の臓器や胸膜・腹膜にがんが認められない

 

IVa期

・がんが食道周囲の臓器まで広がっている

・またはがんから遠く離れたリンパ節にがんがあると判断されたもの

 

IVb期

・がんが別の臓器や胸膜・腹膜に転移が認められたもの

 

 

食道がんのステージ別治療法は

 

0期の治療

● 内視鏡的粘膜切除術

がんが粘膜にとどまる0期の治療、食道を温存できる内視鏡的粘膜切除術が標準治療になります。

 

1)   内視鏡的粘膜切除術(EMR)

粘膜にとどまったがんを内視鏡で見ながら食道の内側から切り取る治療法です。

1時間くらいで完了し、翌日から食事をすることもできるため入院も短期間で済みます。

 

2) 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

病変の切除する範囲をマーキングし、病変下の粘膜下層部へヒアルロン酸ナトリウムなどの薬剤を注入しながら、病変を電気メスで徐々に剥ぎ取る方法です。

I期でも適用になる場合があります。

 

大きな病変を一括して切除できますが、出血や穿孔(せんこう:穴が開くこと)のほか、切除した箇所が引きつったり、狭窄(きょうさく:狭くなること)が起きるなどの合併症が起こる場合があります。

 

手術後、切除した組織を顕微鏡で調べた結果、取りきれない部分があったり、リンパ節転移の可能性が高いと判断された場合は、追加の手術や放射線療法、化学放射線療法が必要になります。

 

I期の治療

● 外科手術

食道がんの最も一般的な治療法は外科手術です。

病巣と一緒にリンパ節を含む周囲の組織を切除します。(リンパ節郭清(かくせい))

食道を切除後、食べ物が通る新しい道を胃や腸を使って再建します。がんの発生する食道の部位(頸部、胸部、腹部)により選択される術式が異なります。 術後、縫合部が狭くなることがあり、食道拡張術を繰り返し行う場合もあります。

 

手術の合併症としては、肺炎、縫合不全(つなぎ目のほころび)、肝・腎・心障害などが起こることがあります。また食べ物を消化する部分の状態が今までと変わりますので、これまでよりも食事に時間をかける、消化のよい食べ物を選び、1回の食事量を減らすなど食事を工夫する必要があります。

 

● 化学放射線療法(放射線療法と化学療法の併用療法)

がんが粘膜下層までにとどまり、リンパ節転移がない場合、手術ではなく臓器を温存できる化学放射線療法を選択することができます。このステージでは手術と同等の治癒率が得られるという報告もあります。

病変に全て放射線を照射することができる場合で、手術を望まない人や高齢者または合併症などの危険性がある患者さんも対象になります。

 

ただし、化学放射線療法は、放射線療法の効果を高め再発と転移を予防するため化学療法(抗がん剤治療)を同時に行います。そのため放射線療法のみに比べると副作用が強くなるので、体力が十分でない患者さんの場合、放射線療法のみを選択することもあります。

 

また現在、抗がん剤のみで食道がんが完治できる段階にはありません。

食道がんの治療では数種類の抗がん剤を併用しますが、副作用の程度は人によって差があります。

 

Ⅱ期、Ⅲ期の治療

● 外科手術

● 外科手術と化学療法または化学放射線療法の併用療法

● 化学放射線療法

 

手術によりがんの病巣を完全に取り除くことができると判断され、また心臓や肺の機能、重い合併症の有無などを検討し、患者の体力が手術に耐えられると判断された場合は外科手術が選択されます。

多くの場合はがんの再発・転移を防ぐために手術前後に化学療法または化学放射線療法が行われます。

手術前に化学療法を行う方が手術を単独で行うより、術後が優れているとの報告があります。

そのため、可能な場合は術前化学療法を行うことが推奨されています。

 

一方、医師が患者の体力が手術に耐えられないと判断した場合、また手術に適さない場合や患者さんが手術を希望しない場合、化学放射線療法により根治を目指した治療が行われます。

 

Ⅳ期の治療

● 化学療法(抗がん剤治療)

● 化学放射線療法

● 放射線療法

 

食道がんのステージⅣは外科手術の適用外であり、化学療法が治療の中心となります。がんが縮小することもありますが、完全に消失させることは困難です。

この段階になると、がんの症状が明らかに現れてきます。肺に転移した場合は息苦しさや胸に強い痛みを感じたり、肝臓に転移した場合は背中やお腹が張ったり痛みもあり、黄疸症状がでることもあります。骨に転移した場合も肩や背中、腰に強い痛みが生じます。

 

全身状態が悪い場合、化学療法を行うとさらに副作用が強くなるので、痛みや症状を緩和するために放射線療法を併用して行います。

 

● 食道内挿管法

 

がんが進行すると食道が狭くなるため、食事が通りにくくなり十分に食べられなくなることがあります。シリコンゴムや金属の網でできた筒状のステントを食道の中に入れて食べ物が通るようにする食道内挿管法があります。

 

手術せずに内視鏡を用いてできるので負担が少なく、一時的でも食事ができるようになるため、生活の質(QOL)を向上させることができます。

 

また、食道の狭窄程度が強く、ステントなどを入れることができない場合、お腹から直接胃に栄養物を入れるための管(胃ろう)を入れたり、点滴で栄養管理をすることもあります。

 

主治医からそれぞれの治療法について十分に説明を受け、納得した上で治療を受けましょう。

 

 

 

食道がんの5年生存率について

5年生存率とは

5年生存率とは、最初にがんの診断を受けた時点、もしくは初回の治療を開始した時点から5年後に生存している人の割合を示したものです。

一般的にがんは診断から5年間再発しなければその後再発する可能性が低くなり、治療後5年たっても再発がみられなければ治癒したと判断されます。

がんの予後や治療成績を知る上での目安になります。

 

食道がんの5年生存率

 

ステージ 症例数 5年生存率(%)
1,163 86.0
968 51.9
1,429 26.4
1,172 12.2
全症例 4,827 42.7

 

全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査 KapWeb(2016年2月集計)による食道がんの5年生存率は、ステージⅠの初期段階であれば他のがんと同様に80%を超えます。

ただしステージⅡ以上になるとその割合は大きく下がります。

 

上記のデータは、食道がんの診断を受け治療を受けた患者さんが対象です。治療は、外科治療だけではなく、放射線療法、化学療法、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。

 

術前化学療法+手術療法で予後が向上するケースも

化学療法(抗がん剤治療)は、これまでは手術後に行うことが標準的でした。

ただし、ステージⅣの段階で化学療法の効果があり腫瘍が小さくなった結果、手術が可能になるケースはあります。

 

しかし手術後の化学療法は患者さんにとって負担であり、体力が低下した状態では有効的な治療が十分に行えないことから、術前の化学療法が検討されています。

 

病院によっては、ステージ Ⅱ、Ⅲの標準治療を「術前化学療法と外科手術」としています。

5年生存率は、ステージⅡが69.4%、ステージⅢが50.6%と予後が平均よりも向上しているという報告もあります。

 

 

免疫療法を治療に加えるという選択肢

 免疫療法とは

免疫療法は、現在の三大治療である外科手術、放射線療法、化学療法以外の「代替治療」に位置づけられています。健康食品やサプリメント、漢方、食事療法、温熱療法などのいわゆる「民間療法」も代替治療と呼びます。

もともと人の体内にはがん細胞を排除する免疫細胞があり、がん細胞の勢いが増すにつれて免疫細胞の力が弱まります。

免疫療法とは、免疫細胞がもつ力を強化させ免疫力を上げることで、がんと戦うための体を作ることを目的としています。

 

免疫療法と治療の併用

海外では代替治療の有効性と安全性を積極的に評価し、一般治療と代替医療を併用している病院も増えています。しかし日本では、Ⅲ期やⅣ期の厳しい状態になった患者さんが、標準治療以外の選択肢として考えることが多いです。

 

外科手術を受ける際、その後の再発予防まで考えることはほぼないでしょう。

免疫療法を取り入れ免疫細胞の力を高めることで、再発の可能性を低くすることが期待できます。また術前に免疫力を上げておくことは、術後の合併症対策にもなります。

 

また、抗がん剤治療を併用する場合でも吐き気や食欲不振、だるさなどの症状が軽減される効果があると報告されています。

 

 

まとめ

早期の食道がんはほとんど症状がないため、これまでは発見が困難ながんとされていました。しかし食道がんの発症リスクを調べる問診票が開発され、内視鏡検査を受ける人も増えています。

食道がんでは早期発見・早期治療に加え、最適な治療方法を選択することが予後の向上につながり、早い社会復帰につながります。

 

出展:

国立がん研究センター がん情報サービス

https://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/treatment_option.html

https://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/diagnosis.html

https://ganjoho.jp/data/public/qa_links/brochure/odjrh3000000uj16-att/102.pdf

がん研有明病院

http://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/esophagus.html

日本癌治療学会

http://jsco-cpg.jp/guideline/09_fu.html

神戸大学大学院医学研究科

http://www.med.kobe-u.ac.jp/surg1/shinryou/syokudou.html

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