ここでは、がん患者ががんを宣告されてから治療を選択するまでに、後悔のない判断とより充実したサポートを受けるために必要な情報をご紹介したいと思います。
目次
がんと診断されたらまず心に起こること
がんと言われた患者さんが不安で落ち込むのは、むしろ自然なことです。
治療が始まる前、治療中、治療が終わった後など、時期を問わず不安を感じたり、気持ちが不安定になったり、落ち込んでしまうでしょう。
そのような不安、焦り、ショック、混乱、などを経て「頑張って前向きに捉えよう」という前向きな気持ちとの間を行ったり来たりすると言われています。
がん患者に起こる心の不安をどのように対応するか
起こってきた不安や絶望に対しては正しい情報を得ることが不安を和らげる解決の第一歩です。
どのようにして情報を得ていけばよいかについて下記3つをご紹介します。
①主治医に質問して不安を少しでも解消する
②がん相談センター
③緩和ケア
主治医に確認する
主治医から今後の治療や対応について説明があると思いますが、まず自分がどの状態にあり、どのような治療が必要かについて聞き漏らさないようにしましょう。
主治医の話を聞いた後に自身で情報収集をする際は「主治医からはこういうことを説明された」という事実を踏まえることが重要ですので、主治医の返答をメモしておくのも良いでしょう。
・自分のガンの診断名は何という名前か/疑われているか確定しているか
・がんのできている位置
・ステージ
・転移の可能性/広がりの範囲
・主治医の勧める最も効果的な治療法とその理由
・治療法の選択肢におけるそれぞれのメリット・デメリット(副作用や費用など)
・その治療を選んだときの期待できる効果(生存期間や生活の質、苦痛の軽減など)
・今後どんな症状が起こる可能性があるか
治療方針について別の医師の意見を聞きたければ、セカンドオピニオンも選択肢の一つです。
もうすでにこの言葉は浸透していますが、セカンドオピニオンとは、患者が納得のいく治療法選択のために治療の進行状況、次の治療選択などについて、現在診療を受けている主治医とは別に、第2の意見を聞くことです。
セカンドオピニオンを受ける際の注意点には現在の主治医に緊急度合いとその詳細についてしっかり確認しましょう。進行度合いによってすぐに治療しなければいけない場合もあるためです。
がん相談センター
がん相談支援センターの窓口を利用することで、インターネットに出回っている信憑性のない情報に振り回されずに情報収集ができるでしょう。
がん相談支援センターは、全国各地のがん診療連携拠点病院などにあり、がんに関する情報を提供したり、相談に乗ってくれるところです。
がん専門相談員としての研修を受けたスタッフが信頼できる情報に基づき、がんの治療や療養生活全般の質問や相談を受けています。
病院によっては、相談の内容に応じて、専門医やがんに詳しい看護師(認定看護師、専門看護師)、薬剤師、栄養士などの専門家が対応できる連携体制を整えているところもあります。
緩和ケア
「緩和ケア」と聞いて「ホスピス」や「終末療法」をイメージする人がほとんどでしょう。
最近ではがんと診断されてからすぐ緩和ケアを提案する医師もいます。
それほど早期での緩和ケアが注目されてきています。
診断時に勧められても「もう末期で見捨てられるレベル」だとは決して捉えないで下さい。
アメリカの調査では、早期の段階で緩和ケアを受けた患者は、受けなかった患者と比べQOLがよく、サポートを受けた患者のほうが5.5ヶ月長生きしていたということが分かっています。
まず、緩和ケア、ホスピス、ターミナルケアはこのように違います。
何となく違いがお分かりいただけたでしょうか。
緩和ケアとその他2つの違いは診断時から始めるか治癒の見込みが無くなった時に始めるかで呼び方が変わってきます。
緩和ケアについて詳しく見ていきましょう。WHOでは下記のように定義しています。
・終末期だけではなく、早期からがんに対する治療と並行して行われる。
・患者のQOL(生活の質) の維持向上を目的とし、その人らしく最期まで生活することを支える。
・身体的苦痛だけでなく、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルな苦痛
(生きる意味、死生観など) の緩和を目的とする
・患者の抱える困難にチームアプローチで対処する.
要するに、がんと診断されてから「精神的に辛い」や治療過程で「身体的に辛い」と感じたら早期のがんであろうが緩和ケアの対象になるということです。
緩和ケアは患者だけでなく家族も受けることができます。
がんと知らされたときの精神的な絶望感、サポートをしているときの精神的・身体的な辛さについても緩和ケア専門の心療士が存在します。
治療について理解を深める
がんの治療には3大療法と言われる手術、化学療法、放射線治療があります。
がんの種類や進行度合い、年齢や他に病気があるかどうかなどで大きく変わってきます。
がんの治療で最も辛いと知られているのは化学療法(抗がん剤の使用)ですが、副作用は個人によって様々ではあるものの「何のためにこんなに辛い思いをしているのだろう」と生きていることに対して疑問を感じる程の苦痛も起こると言われています。
治療法については医師と相談の上メリット、デメリットをしっかり確認し生活の質を保った療法生活が送れることが大事になってくるでしょう。
免疫療法
上記で緩和ケアについて紹介しましたが、がん3大療法である手術・放射線治療・化学療法には身体的苦痛とそれによる精神的苦痛が引き起こされます。
緩和ケアが「精神的な負担の軽減」や「病院との連携によるサポート」という意味合いが強いですが、免疫療法は治療にフォーカスしています。
免疫療法は人間の体に本来備わっている病気を防ぐ力を最大限に引き出していく治療法のため副作用がほとんど起こりません。
使用例としてはこのようなものがあります。
抗がん剤を使用しなければならない場合、免疫療法を取り入れると抗がん剤の副作用が抑えられることもありますし、手術の場合は術後の体力の回復を助けるまたは効果があると言われています。
免疫療法は早期の段階から使用した方が再発防止や転移の防止にも貢献するという結果が出ていますので、がんと診断されたら免疫療法についての情報も収集してみましょう。
障害年金についても理解を深める
障害年金とはケガや病気が原因で精神や身体に障害がある方で、仕事や日常生活上で支障のある方に年金や一時金を支給される公的年金制度のひとつです。
一定の障害の状態にあることと、公的年金制度に加入していることが申請の条件です。
がんの場合に知っておきたいのは、目に見えて身体の機能が変わった場合(直腸がんの人工肛門造設など)以外にも申請対象が可能なことです。
抗がん剤の副作用による倦怠感(しびれ、痛み、嘔吐、体重減少、貧血、下痢)など目に見えてわかりにくい内部障害の場合でも日常生活に支障をきたせば認められる可能性があります。
障害年金の受給には注意点があります。
障害の原因となった傷病の初診日が、国民年金、もしくは厚生年金保険の被保険者期間中であることが条件になっています。
初診日とはその病気やケガで初めて受診した医療機関のことです。
例えば前立腺がんの患者が血尿が出て泌尿器科を受診したけれども前立腺がんという確定診断を受けず、大学病院に検査に行くよう勧められそこで初めて前立腺がんと分かったという例を挙げましょう。
この場合初診日は泌尿器科で確定診断を受けた日が大学病院になります。
この初診日が特定できないと障害年金の受給がしにくくなるため、しっかりどこの病院でどのような診断を初めに受けたかを明確にすることが重要です。
障害年金については仕事を辞めてからでないと受給できないのではないか、と思うかもしれませんが、生涯年金は患者ご自身が支払った年金をもとに支給されるものです。
ご自身が申請をすることで、初めて受け取れる制度です。
申請対象となる場合には積極的に動いてみましょう。
家族にサポートをしてもらいましょう
がんになった時、特に患者が伝えるべきか悩んでしまうケースがあります。
がんのことを家族に正確に伝えるのはとても勇気がいることかもしれません。家族に絶望感というショックを与えるのは患者にとっても避けたいことです。
ですが、がん患者は家族の理解という大きなサポートがあって初めて治療に前向きになれると言っても過言ではありません。
がんになった自分を必要以上に責めるのは止めて、まず患者自身が家族の力を借りて少しでも不安や悲しさを軽減することが大切です。
がん相談支援センターはがん患者の家族とのコミュニケーションの方法までアドバイスをしてくれますので、是非活用してみましょう。
さいごに
がんと診断された時、不安になるのは当たり前のことです。
まずはどのように情報収集をするかが後悔のない治療選択や療養生活を含めた生活の質に関わってきます。
また、がんになったけれど自分はどのような人生を歩みたいか?に向き合うことも必要になるでしょう。
一人で悩まずに、上記に挙げたサポートを是非活用してみて下さい。
最近ではがん患者によるコミュニティなどもできており、がんから復活した方々ががん患者を励ますという集まりもあるそうです。
がんと闘うには家族のサポートも必要です。
そのために家族とも精神的辛さを共有し合いサポートされているという実感を得ることも、それを得られるのとそうでない場合では大きな差があるでしょう。
早期発見に勝るものはありませんので、何か体に不調や違和感を覚えたら検診を進んで受けましょう。
また、がんになったら障害年金のことも念頭にいれ、治療中に日常生活に支障が出るようであれば検討して経済的な負担もできるだけ減らしていってほしいと思います。

医療ライター。
医薬系会社にて医療事務に従事する傍らで、美容系サイトにて痩身美容(脂肪吸引など)ついて執筆するフリーライター。
主に得意分野は、がんや免疫療法、経営者インタビュー記事作成など。